第32話 罪① ~4人組~
エストの発言で一瞬変な間が開いたが・・・
「!?」
背後でアロンゾがこん棒を振りかぶっていた。
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!」
横転がりしてアロンゾの一撃を躱したエストだったが、正面でトトが剣を振り上げている事に気づき自らも剣に手をかけるも
「死ねぇええええええええええええええ!!!!!」
と眉間に皺を寄せながら吠えたトトの前にサッと出ると腹部に前蹴りを入れた。
「ぐふぅう!?」
トトがくの字になって後退る隙に剣を抜いたエストは、背後で起き上がったラミロがまたしても毒矢を構えている事に気づいた。
「チッ!!」
しかし、エストを狙っているラミロを邪魔する者がいた。
「ぬぅああああああああ!!」
こん棒を両手持ちしたアロンゾが、地面と水平に振りぬいて来たのだった。
しかしエストはそれをジャンプして躱すとアロンゾの顔面を蹴った。
「がはっ!!・・ああ!?」
顔を蹴られグラッと態勢を崩してアロンゾが地面に横転するが、アロンゾの背後に回り込んでいたラミロが着地したエスト目掛けて矢を放った。
ビュン!!!!!!
しかし、それを予測していたエストは素早く体を捻り矢を躱した。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
エストの背後で甲高い叫び声が周囲に響いた。
倒れのたうち回るアーブリーの肩にラミロの矢が深く刺さっていた。
「え??あ???アイツに誘われた???・・・・ハッ!?」
アーブリーを射抜いた事に動揺したラミロはエストが姿を消している事に気づいた・・・・が遅い。
目の前を何かが通ったと思った瞬間、ボト!ボト!!とそれぞれ弓と矢を持っていた両腕が地面に落下した。
「いぎゃああああああああああああああ!!!!!!!!ぐふぅうぅ!?!?」
悲壮な表情で叫び声を上げたラミロだったが、次の瞬間地面に叩きつけられた。
スキル『
腕を斬り落とした事でラミロは終わったようなものだが、それでも絶対に逃がさないためラミロに重力負荷をかけた。
****
―昨夜エストがスキル『
「ヒィヒャヒャヒャ!!!!!」
「ぐ・・・がは!!!な・・なんで・・・・。」
麦酒に毒を入れられた旅人のように見える男が、喉を苦しそうに掻きむしりながら椅子から床に転がり落ちた。
目をむき出しにして舌をベロォっと出し、甲高い気に障る笑い声を上げているラミロがサッと泡を吹きながら倒れている旅人に近寄ると胸ポケットから金の懐中時計を抜き取った。
「これは貰った。」
「あ!またかよ!!汚ねぇぞ!ラミロ!!!」
「ヒャハハハハ!」
懐中時計を掲げたラミロが再び笑い声を上げた。
****
『自分の欲のために他人の痛みや苦しみを何とも思わないような奴は、角あり(角族)、角無し(人族)問わず許してはいけないよ。
特に「ヒャッハー!」なんて笑い声を上げる奴は絶対にね。」
目を上に向け、下をペロッと出して奇声を上げたリュナを見たエストはお腹を抱えて笑っていた。
『あははは!!何やってるの!?はははは!!!痛っ!?』
『いや!!ホントにいるんだからね!!!癇に障る奇声を上げながら簡単にむごい事をやってのける奴らが!!』
腰に両手を当てたリュナが、笑っているエストの顔を覗き込むとエストの額をパチン!と中指で弾いた。
・・・・
「ぬぐぅぅぅぅぅうううう。」
リュナとの会話を再び思い出したエストは、額を指でそっと擦ると
「ホントにいたよ。実際・・・許せそうにないや・・・。」
苦しそうに地面に押し付けられているラミロを見下ろしそう呟いた。
その後、エストの動きに唖然としているトトに目を向けたエストは、キッ!!と睨みつけながらゆっくり近づいていった。
「あ・・・待ってくれ、エ、エスト君!!!キミとても強いね!!」
「いえ。まだまだです。」
剣を捨てたトトが、後退りしながら両手を前に出して足を止めるよう合図を送る。。が、エストは冷静にそう答えながら構わず近づいていく。
「じ・・実は、姉さんとラミロには勝手な事ばかりされて困ってたんだよ!!だから助かったよ、エスト君!!でだ!良かったら俺と組まないか??君とならたくさん稼げると思うんだよ。」
逃げるように木々の間を横にすり抜けながら、エストに話しかけるトトを追い詰めるように平行移動していたエストはその内容に苛立ちを隠さなかった。
「稼ぐ???」
「そ・・そうだよ!!そんな怖い顔しないでさ。ほら、君ほどの強さがあったら沢山金を稼げる。色々教えるし!!!!それに取り分は俺とアロンゾが3、3、エスト君が4でいい!!!!どうだい??良い話だろ??」
目を細めて出来る限りの笑顔を作っていたトトだったが、自分の言い分が苦しい事はよく分かっていた。
「俺と組もう!!!な???」
しかしそう問いかけたトトは、手をエストに指し伸ばして足を止めた。
(そのまま・・・そのまま・・・真っすぐ来い・・・。)
「何を言っているか分かってるんですか??そんな話に乗るわけが、!?!?」
トトの勝手な誘い言葉に怒ったエストがトトに向かって足を踏み出したが、その足元に罠が仕組まれていた。
ビッ!!!とロープの網に全身を絡め取られると、斜め前方にある木の枝に向かって引っ張り上げられた。
「くっ!!!」
「あははははは!!!!!!バァアアアアアアアアアカ!!!」
罠に嵌まり網の中で宙吊りになっているエストを見てゲラゲラを笑い声を上げたトトは、エストが手放した剣を拾い上げるとニタァ・・・とイヤらしい笑顔を浮かべた。
「へぇ・・・いい剣だな。これは貰ったよ。お前を殺してね!!!」
トトはそう叫ぶと、剣を構えて逆さまになっているエストの顔を突きに走り出した。
「今度こそ死ねぇええええええええええええ!!!!」
「スアニャ。頼むね。」
「任せて!!」
『
「うぁ!!!」
エストの体を中心に小さなつむじ風が巻き起こると、スパッ!スパッ!とロープがバラバラに切断された。さらに剣先が旋風の風刀に触れた瞬間、トトは握っていた剣をあっさり上に弾き飛ばされてしまった。
罠から脱出して地面に着地したエストは、クルクルと回転しながら落ちて来た剣をパシッ!!と掴むとトトに向かって走り出した。
「あ!?待っ!?!?!?」
「あなたの言葉はもう聞きたくありません。」
またしても止まるよう両手を前に出したトトだったが、一瞬でトトの脇をエストが通り抜けるとバクッと左肩から右腰に掛けて斬り落とされた。
「・・・・て・・・・ゴフッ・・・・。」
血を吐き出し、ドサッ!!とズレて落ちたトト(半身)は右手を空に向けたまま絶命していた。その後立ったままだった半身は崩れるように地面に倒れる。
・・・・
『うまい酒があるんだよ。1杯奢るからさ♬』
『ここだけの話・・・姉さんアンタに気があるみたいだ♥』
『でかい儲け話があるんだ。君だけに教えるから後で宿屋の裏口に来てくれる??』
目を細めてニコッと笑ったトトは、いつも言葉巧みに人を騙していた。
(この人の口からは『嘘』しか発せられないのか??)とエストが思うほど人を騙し、誘い、罠にかけて来たトトの最後は叫び声ひとつ上げる事が出来なかった。
その後、剣を鞘に収めたエストはラミロに向かってほふく前進しているアーブリーの姿に驚いた。しかし、ラミロまでの距離はまだ10mはあり、そしてその10m後方にはアーブリーを貫いた矢が落ちていた。
「ぐ・・・あ・・・エ・・・エスト君・・・。」
「驚きました。解毒剤でも持っていたんですか?」
「ラ・・・ラミロに・・・貰ってた・・んだけど・・・アイツ・・・・きっと半分の量しか・・・・ゴホッ・・。」
エストに気づいたアーブリーが仰向けになると、真っ青な顔をして口の端に泡を溜めながらエストに懇願した。
「お・・ねがい・・ラミロ・・から解毒剤を・・・。」
しかしエストはアーブリーに掛けた言葉は
「苦痛と絶望で歪んだ顔を見せてちょうだい・・・・でしたっけっか?」
だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます