第11話 歴史の嘘
すいませんm(__)m
流れで今回は短いお話になりましたm(_ _"m)
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―イヴァリア歴16年4月17日―
エストは少し強く撃ちつける風に髪を靡かせながら、小高い山の登頂で目を瞑り立ち尽くしていた。
「うん。やっぱりじいちゃんの言う通り旅に慣れて自惚れてたかも・・・切り替えるしかないな。」
天を仰いで呟くとパチンと両頬を叩いたエストは、瞼を開けて目下に見える集落跡地に向かい歩き始めた。
****
昨晩、プロトが寝静まったあと居間に戻って来たジュナは、自分の知り得る事をエストに話してくれた。
まず、フレドの子孫たちは昨晩エストが過去視のスキルを使った南の砦の奥にあるフレドや先祖たちの墓を守るため、あの砦を保ち続けてきたそうだ。つまりもともとの角族たちの拠点を守りつつ、それと同時にフレドや角族の歴史を伝え繋いできたらしい。
しかしフレドが死んでから10代目になるジュナは、長年伝え続けられてきたもの故に自分の話には間違いがあるだろうと前置きしてくれた。
ジュナの住処に辿り着くまで、バスチェナより渡された地図や集落跡地の過去を見て来たエストは、ジュナの話に間違いがあろうがなかろうが、この場所がある事やこれまでの過去視で見て来た出来事を考えると、人族に伝わる物語や歴史は間違いではなく、意図的に書き記された嘘なのだとあらためて感じ、ガクッと項垂れるのだった。
・・・・
エストがこれまで目を通してきた物語や史書には、アルストが登場する以前の事はあまり詳しく書かれていなかった。
あるとすれば、
『今から約320年程前。
この地を支配していたのは人族ではなく魔族であった。
魔族は一様に角(角の種類は様々であったが)を生やしていた。
・・省略・・
無論、そんな魔族達に人族が敵うわけが無かった。
その頃の人族は各地で集落を形成して暮らしていたが、これといった武器は無く、あっても狩りのための石弓や石槍などしか持ち得ていなかった。また魔法も「火」は薪を燃やす程度のもので、「水」はのどを潤す程度のものでしかなかった。それほどまでに文化・武器・魔法が進化しなかった理由にはやはり魔族があった。見つかれば集落そのものが根絶やしにされてしまうため、一定の場所に長く暮らすことが出来なかった。
常に魔族を恐れ、怯え、目を逃れながら細々と暮らしていた彼らに「生き延びる」以外の目的は無く、暮らしや道具をより良いものにしようとする余裕は一切無かった。
しかし、人族が何とか生き延びる事が出来ていた理由の一つに、魔族間同志でのいさかいも絶えなかったというものがあった。時には集落を襲っていた魔族が鉢合わせた別の魔族と揉め始め、その隙に逃げる事が出来た人族もいたくらいであった。
だが、魔族に「王」が誕生すると、それまで意思の統一は無く各々自由に行動していた魔族達が統制を取り始めた。
省略
そして魔族の王となったバスチェナは、この地に生きる全ての人族を滅ぼさんと、各地に散らばっていた全ての魔族を自分の下に集めると、大陸の東側に位置する山岳地帯に拠点を築き、その領土を徐々に広げていった。』
と、いう頭書きのようなものだけだった。
つまりは物語や史書は出だしから嘘だらけだった。
まず、『魔族』とイヴァによって呼ばれるようになった角族は、この地を支配などしてはいなかった。
さらに、『全ての始まり』の集落での過去を見る限りそこに住んでいた人族たちは一定の場所に長く暮らしていた。
頭書きで正しい部分があるとすれば、文化や道具、武器などが角族に対して劣っていた部分くらいだ。しかし、それに対してフレドは人族と交流を深めながら、自分たちの技術を少しずつではあるが提供していたそうだ。確かにイヴァが現れる前までは、フレドと始まりの地の住人たちとの関係は良好だったように見えた。
また、魔族の王の誕生前から角族達の意思統一は出来ていた。過去視で見たフレドとドイルの会話や南の砦が何よりの証拠だった。そしてジュナの話によれば、昔はその南の砦周辺に多くの住居があり、たくさんの角族たちが暮らしていたそうだ。
『ワタシと共に悪しき魔族達の支配からこの世界を取り戻しましょう!!』
ジュナの話を聞きながら過去視で見たイヴァの言葉を思い出していたエストは、角族は支配も人族を滅ぼそうともしておらず、イヴァの出現により変わってしまった人族の方が角族を滅ぼそうとしたのかもしれないと思うのだった。
話を終え「ふぅーーー。」と大きくタバコの煙を吐いたジュナに
「最後にもう一ついいですか?」
と、エストは人差し指を立て小さく頭を下げた。
「いいよ。何だい?」
「どうしてこの大陸の南側には人族の集落跡地ばかりがあるんですか?この辺りにはもうどこにも人族は暮らしていないんでしょうか?」
「ふむ。『それは人族に聞いてくれ!』と言いたいところだが、きっと今の人族たちも分かっていないんだろうね。」
「分かっていない?」
「ああ。フレドの話では、ある日、この大陸の南部に暮らしている人族達が何の未練もなく住まいを捨て、北部に移動し始めたそうだよ。」
「え?」
「実際に目にした訳じゃないから何とも言えないがね・・・・。フレドはその光景に背筋が凍る思いだったらしいよ。」
「そうですか・・・ありがとうございます・・・。」
エストは、ジュナの話を聞いて俯くと
「だいぶ話し込んでしまったね。もう休みな。」
と言うジュナの言葉に「はい。」と頷き寝床を用意してもらった部屋に足を向けた。
その後、静まり返った部屋の中でジュナが用意してくれた寝床に入ったエストは、今後は初めて物語を読んだ時と同じような気持ちで、過去と向き合う方が良いと思いながら目を閉じるのだった。
****
小高い山を下りきったエストは、周囲に住居の基礎だったと思われる束石の跡や風化した石積みの防壁のみが残っている集落跡地に辿り着いたエストは過去を見る覚悟を決めていた。
トコトコと歩いて集落の中心部に立ったエストは迷うことなく『スキル
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