ジャックフルーツの花言葉は「豪傑」2

「あなたたち学生の本業は何か覚えていますか!」


入ってくるなり間髪を入れず叱りだす春菊さん。


「「べ、勉強です」」


二人は即座に正座になり怒られる体制になる。

桃色だった二人の空気も青く澱みだした。


「それが解っていて何故青春にカマかけるのですか。蒼汰さんの将来を無茶苦茶にするつもりですか!!それに華道さんとこと話しましたがまだまだ蒼汰さんはまだまだ将来について悩んでいますから男女のほつれも加わってしまっては迷惑が掛かりすぎるでしょうが!!!」


春菊さんの言っていることはもっともで蒼汰自身まだ将来どのようなことをしたいか、このまま動画配信だけで収入を得るのか、それともただ家業を継ぐべきか迷っていた。

もちろんそのことを親に相談はしていたし母親の口の軽さは町内でも有名だったから流れるのは時間の問題だと思っていたのでうちの常連さんらしい春菊さんに伝わっていてもおかしくは無かった。


「「ご、ごめんなさい!」」


二人はあまりの威圧感に春菊さんに向かって謝ってしまう。


「謝る相手が違うでしょう!」


キリッとした目つきでさらに睨まれて震え上がる。


「「蒼汰さん(君)ごめんなさい」」


すぐさま謝る方向を変えたことで春菊さんが息をついたため話しかけることにする。

春菊さんもこちらが視線を向けてきたことに気づいたのか申し訳なさそうな顔をしていた。


「とりあえず時間押してるからご飯を食べようか。すみません春菊さんわざわざ来てもらって」


今回は昨日のことも踏まえて春菊さんに連絡しておいたのだ。

春菊さんは普段は蒼汰の地元でもある別荘の方に住んでいるらしいのだがここ最近は玲菜さんのことが気になりバルタザールさんが用意してくれたマンションの方に居ることの方が多いらしい。

花道教室の方も奥様方が多いので子どもの教育優先で構わないと言ってくれているため、学校の恩師に任せてまで来てもらっている。


「いいんですよ若者を正すことのできる大人でありたいのでね。私のわがままでしとますし全然かまいまへん。華道さんも娘がようご迷惑おかけしましたさかい返礼させていただきやす」

「そんな大丈夫ですよ」

「いえいえそもそも私の娘がこんなに迷惑かけているのに今まで返礼の一つもしなかったこと自体おかしかったんです。やらせてください」

「わかりました。そこまでおっしゃられるのならまた後日」

「ありがとうございますぅ」

「今日はもうこれでよかったら朝食食べていきませんか?」

「大変お言葉は嬉しゅうございますがこの愚娘と来夢さんを家に連れて帰らなければいけませんので……」


そんな殺生なとでも言いたげな甘夏さんと来夢さん


そんなに手料理が食べたいのかね?


「いえいえ、今回は甘夏……玲菜さんの分と来夢さんの分も一緒に作ってしまったのでこれでは余ってしまうのでできれば食べてもらいたいのですが」

「ではご相伴に預かります」


その瞬間甘夏さんと来夢さんは餌をもらった猫のような顔をする。


「あなたたちも学校があるからお説教の続きは帰ってきてからにしますからね」


甘夏さんと来夢さんの表情は再び絶望に染まった。

コロコロ変わる表情は観ていて面白い。


「今すぐに盛り付けますからそこに座っていてください」

「はい、二人とも姿勢を崩してもいいわ。でもちゃんと反省はしてね」


「「はい」」


こういうところを見ると母親だと思う。


ちなみに今日の朝食はご飯と烏賊と里芋の煮物、そしてお吸い物だ。


「はいお待ちどうさま」

「ありがとう蒼汰さん」

「ありがとう蒼汰君」

「朝からこれだけ作れれば夫として人気がありますさかい結婚したくなっても安心ね」


春菊さん、あなたの一言で猛獣たちが覚醒しちゃいました。


「2人とも、いえ玲菜、そんなにもギラギラした目付きでは好かれたくとも好かれませんよ」

「お母さん、女は押しに押し倒すして組敷くに限るんです!」


その言葉にもはや叱る気力すら起きないのか突っ込むことは無かった。

だが来夢さんの方を見ればギラギラとした目つきでは無く自分とは会う前のような温和な目つきになっていた。


春菊さんはすぐに来夢さんが殺意のような衝動的好意を収めたことに気がついたようで甘夏さんだけに注意する相手を変更していた。


「来夢さんはずっとそのままで居てくれると安心するよ」

「うん、ごめんね迷惑かけちゃって」

「大丈夫大丈夫、来夢さんは誰よりもお姉ちゃんだったんだから今度は僕がお兄ちゃんになる番だろ」

「(*´σー`)エヘヘ」


だから甘夏さんそんな上の子だけが褒められたのを羨むような視線は辞めてくれ。


「玲菜、これが幼馴染という強大かつ強固な独身貴族が好意を寄せられて最も結婚しやすい人物なのよ」

「……」

「玲菜?」


目の前の現実を受け入れられないのか蒼汰たちを見ずに空間を見ていた。


「まったく、勉強はできても精神がまだまだ未熟ね」


古き良きを重んじる日本人の精神は甘夏さんは引き継げなかったらしい。

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