ホウレンソウの花言葉は「活力」2

「この香りは……」


キッチンに来ると炊き立てのご飯にホウレンソウの胡麻和え、アジの開き、納豆、ニンジンの佃煮。

まごうことなき和の朝食。栄養価もビタミンミネラルタンパク質食物繊維がバランス良く整えられていた。


「ささ、蒼汰君、玲菜さん食べましょう」

「これ全部来夢さんが作ったんだ」

「ええ、玲菜さんの作る西洋料理に遠く及ばないと思うけどそれでも蒼汰君のお母さんの料理を真似て作ったから……」

「うん嬉しいよ」


一般的に西洋料理の方が和食より調理に時間がかかると言われている。

これは日本の出汁文化や醤油、味噌といった多大な工程と時間を要する加工が施されているためだ。

もちろん現代では便利なものが多々存在するため家庭で作る場合はさほど時間は変わらないだろう。


だが華道家や甘夏家では違った。

基本的に一から作ることが多いのだ。

手間のかかるお正月料理やクリスマス料理ですら自分の家で作る。


山羽家はその華道家や甘夏家のような一から作るようなことはしなかった。

だから来夢はちょくちょく蒼汰の居ない間に蒼汰の母に習いに行っておりお惣菜レパートリーを増やしていた。

このことは蒼汰も知らない事実であり蒼汰の母も口止めされていたし人の恋路は観て楽しむ派の人間なため話す気も無かった。


「こ、これは…」


故に蒼汰の実家の味に限りなく近くなる。

最初に味噌汁を飲んだ蒼汰は思わず驚嘆の声を上げた。


「これは、だいぶ風味が独特なお味噌汁ですね。お母さんの作るお味噌汁はこのお味噌汁のような赤い味噌汁と違って白に近い色でしたし慣れるまで時間がかかりそうです」

「もしかして春菊さんの家のお味噌汁は白味噌なのかな?」

「春菊さんに食べさせてくれたことがあるから知ってるけどアレは西京味噌だよ」

「それじゃあ甘夏さんの反応は無理もないかもね。来夢さんのこれって赤味噌と八丁味噌の合わせ味噌だよね?」

「うん、蒼汰君の家で食べたのを私好みに近くなるようにしてみた」


華道家では八丁味噌オンリーであり赤味噌で合わせるようなことはしない。

八丁味噌は赤味噌をさらに発酵、熟成したもので風味が強い。

そして京味噌の甘夏家だがこれは白味噌をより淡麗にした味の味噌だ。

相反する味噌汁を食べれば美味しいと思わないのも当然だ。


「むむむ、これが華道家の味なら盗んでみます!」

「玲奈さんこれは蒼汰君のママの味じゃないよ」

「そうなんですか?嘘はついていませんよね?」


確認を取るために蒼汰の方を向く玲菜。

振り向くと同時に凄まじい目力、プレッシャーが部屋全体を襲う。

某ギャグ志向漫画だったのにいつの間にか格闘描写の方が凝っている漫画になっていた某大手ギネス記録保有漫画収録雑誌の看板漫画のように威嚇するだけで船を破壊するような主人公に対しての目標なるための頂でありライバルでもある某目のところにカッコいい傷を持っている人みたいには行かないがそれでもモノが壊れる幻覚が見えるくらい位には迫力があった。


「大丈夫、合ってるよ。家では全部八丁味噌だから……」

「そうですか……く、お母さんに習ってきます!」

「「?」」


何故そこで春菊さんが出てくるのか二人ともイマイチわからなかった。

春菊さんは西京味噌と聞いていたため普通に考えていたら春菊さんの家系は京都などの近畿地方の出身とみるのが普通だ。


「お母さんの方の祖父母は奈良県の出身でさらにその母方が愛知出身の曾祖父と宮城出身の曾祖母で父方が十勝出身の曾祖父と京都出身の曾祖母ですしみんな一通りの料理はできていたらしくお母さんはその全ての料理を作ることができるんです」


分かりづらいので家系図カモン!!!


祖父母(奈良)


祖母方

曾祖父(愛知)

曾祖母(宮城)


祖父方

曾祖父(北海道十勝)

曾祖母(京都)


「ほへえ春菊さんってだからいろんな方言が混じってるのか……」

「私も知らなかった。日本語がおかしいような気もしたけどそれなら納得」


普段は奈良の方言が出るのだろう。

しかし稀に聞いたことのない語尾に成ったりするから交流が深かったものと推測できた。


「そういえば蒼汰さんは近くに別の地方の人とかはいないんですか?」

「母親が愛知から越してきたくらいであとは普通の家庭だよ」

「そうですか」

「私は基本的には両親ともに東京かな。まあ元を辿ったことがないからわからないけど」


東京の住民の役80%だかが地方から来た人とどこかの漫画で呼んだ気がすると蒼汰は思い出しながら朝食を味わっていく。

お米はササニシキなのかサラッと食べることができ朝の空の胃の食欲に対してすんなりと入るいいお米である。

アジの開きもそこまで脂がのっておらずこれもまた朝に重いものは食べたくはないと思う蒼汰にとってはとても良かった。

ニンジンの佃煮も醤油の香りとニンジンの香りの塩梅がややニンジンが勝るくらいの薄味で身体に優しい感じだった。


「このホウレンソウの胡麻和えは美味しいですね。これは中に……オリーブ?」

「西洋料理でよく使うもんね。それは私の作ったオリジナルで朝に良いかな思って作った」


良質な油をほんの小さじ一杯入れて風味付けをしてある。

オリーブの風味は野菜全般に良く合う。

そんな感じで楽しく朝食は終わった。

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