第59話 謝罪
少女は遠くなる意識の中で、自分はこのまま死ぬのだと理解する。
とっさにアリスを助けるために、魔物との間に割り込んだことは後悔していない。
後悔しているとするならば……
(お義父さんごめんね、言うことを聞かなくて……。ルイス、もう一度だけ逢いたかった……)
ここにいない人に、別れの挨拶が出来なかったことくらいであろうか。
キャロルの脳裏に、これまでの人生で楽しかった思い出が走馬灯のように蘇る。
(でも、これで良かったのかな……。もう苦しい思いをしなくて済むなら……)
そんな諦めの境地に至ったキャロル。
違法な奴隷に人権などない。
主人に玩具のように弄ばれて、死ぬまで苦役が続く。
そんな悲惨な未来に、彼女はもはやなんの未練もなかった。
彼女が死を迎え入れるために、ゆっくりとその瑠璃色の双眸を閉じようとした瞬間、身体が誰かに抱きかかえられたような感触を覚える。
「もう大丈夫だよ」
「えっ……?」
突然のことに驚いたキャロルが目を見開くと、自分を見下ろして微笑む少年の黒い瞳と目が合う。
「誰……?」
そう呟いてしまうのも無理はない。
死者が一面に転がる、地獄のような戦場に突然現れた見知らぬ少年。
訝しがって、そんな感想を抱いしまうのは当然のことであろう。
しかも、少年は魔物が目の前にいるというのに気負うこともせず、かえってキャロルを安心させるかのように柔和な笑みを浮かべている。
(そういえば……、さっきまでいた魔物はどうしたんだろう……)
いくら考えても分からないので、キャロルは現実逃避気味にそんなことまで考える。
すると、さっきの魔物とは別な魔物がキャロルを抱える少年の背後に立つ。
「あっ、あぶ……」
とっさに少女が叫ぼうとしたその刹那、野太い声と何が砕けたような大きな音が響き渡る。
「どっせえええええい!」
魔物と少年の間に割り込んだ巨漢が、手に持った大きな盾で魔物頭部を粉砕する。
「お見事。任せていいですか?」
すると少年が、この巨漢を称賛する。
「おおっ、任せろ。さすがに盾が軽くて仕方ねえ。これならどんどんイケるぜ!」
そう答えた巨漢は、集まってきた魔物の攻撃を盾で弾くとともに、時には盾の角で魔物の頭部を粉砕していく。
「ガハハハハ!しかし【ハイオーク】の群れとは因縁だな。あのときは力が及ばなかったが、今のオレ……いや、オレたちは違うぜ!」
そのあまりの迫力に、少女たちに殺到してきたハイオークたちが気後れして立ちすくむ。
巨漢は、一般的に【タワーシールド】と呼ばれる、その全身が隠れるほど大きな長方形の盾の下部を荒々しく地面に叩きつけると、ハイオークたちに向かって大喝する。
「【
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「待たせたな鬱展開は終了だ!」
ヘ ︵フ
( ・ω・)/
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