第38話 銷魂●
題名のあとに●が付いているのは奴隷絡みのお話です。
ちょっとテンションが下がりがちになるので、ご了承下さい。
●を読み飛ばしていただいても、『窮迫●』だけ読んでいただければ、話は通じるかと思います。
これに伴い、多少話の順番が前後しています。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
【絆】という意味の【ノードゥス】村を出発した一団は、荒野を一路西へとひた走っていた。
豪奢な馬車とそれを取り巻く冒険者たち。
こう聞くと、どこぞの狐獣人たちの隊商と同じようなものだと考えがちだが、こちらの隊商は、それよりも5倍以上も多い人員が護衛に当たっていた。
そのため、小さな貴族家の領軍ほどの一団が荒野を進んでいるようにも見えた。
豪奢な馬車には、身なりは良いものの醜悪に肥え太った商人と、2頭引きの馬車を御する馬丁が乗っていた。
そして、荷台にはとある
―――その商品の名を奴隷という。
その奴隷は、まだ年端もいかない少年少女たち。
4人の奴隷の内訳は、少年がひとり、残りが少女であった。
本来、こんな年頃の少年少女が奴隷になることは決してあり得ないことだ。
この世界における奴隷とは、支払いが出来なくなった者がその身を売る【借金奴隷】と、犯罪を犯した者がその贖罪として身を落とす【犯罪奴隷】しか認められていない。
しかも、その対象は成人年齢である【16歳】以上の者と定められている。
これらの奴隷制度は、予め認められた官吏によって厳格に運用されることになっている。
ゆえに、この少年少女たちは【違法奴隷】であることが明らかであった。
王国の北方の要【フェロー辺境伯】領の最北端に位置する小さな村―――【ノードゥス村】
貧しい村ではあったが、人々は互いに助け合い穏やかに過ごしていた。
そんな優しい日々を打ち砕いたのは、突如蔓延した原因不明の病であった。
村に住むほとんどの大人たちが、何故か急に立ち上がれなくなり床に伏することになった。
幸いにも子どもたちには影響がなかったものの、働き手である大人たちを失った村はあらゆる機能が不全となった。
外敵から村を守ることも、ただでさえ実りの悪い小麦畑の世話をすることも、それらの全てを無事だった極少数の大人たちと、まだ低年齢の子どもたちで賄わなければならなくなったのだ。
こうして村は、ますます貧しくなって行く。
そんな窮地に現れたのが、かつて村に住んでいたというひとりの男だった。
その男は、とある商人や多くの護衛とともに村にやって来るなり、我が物顔で村を牛耳る。
村の一等地に居を構えると、まるで村長にでもなったかのようにありとあらゆることに口を出す。
その上、気に入らないことがあれば、身体が弱っている村人に対してすら、容赦のない暴行を振るう始末であった。
だが、床に伏している大人たちや、力のない子どもたちには、彼やその取り巻きたちに対抗する術はなかった。
こんな状況の中、男はとある提案をする。
村の子どもたちが何人か王都に奉公に出るならば、病の特効薬をやろう――と。
当初は、半信半疑だった村人たちであったが、薬を飲んだ孤児院長の容態が劇的に改善したことでこの言葉に信憑性が生まれる。
こうして、村を救うために4人の少年少女が王都で働くことを了承したのであった。
―――それが、奴隷落ちへの一歩だったとは知らずに。
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