第四十五章 クリスマス前哨戦

第392話 女装男子のスカートの中が、気になって眠れない。


「よし、ついに完成したぞ……ここまで来るのに、苦労したな」

 

 自室で一人、学習デスクの上に置いたあるモノを、下から覗き込む。

 前回のデートにて、手に入れたアンナのホカホカなパンスト。

 伝線こそ、しているものの。

 完全に破れた訳ではない……。


 ならば、このアーティファクトをこのまま封印するのは勿体ない。

 そう思った俺は、様々な商品をショッピングサイトで、注文しまくった。

 

 まず、レディース向けのマネキン。

 ランジェリーショップなどで使われる下半身のマネキンだ。太ももまでのやつ。

 しかも、リアルな肌色。

 

 そこに以前、別府温泉でアンナがくれたピンクのおパンティーを履かせる。

 まあ、アンナはヒップが小桃サイズだから、マネキンでもギチギチだが……。

 しかし……そこがまた興奮する。


 お次は、今回の純白ストッキングを装着。

 仕上げだが……これには、天才の俺でも頭を悩ませたぜ。

 だって、アンナが普段、着ているミニ丈のスカートなんて、ブランドも知らないからな。


 なるだけ、彼女のファッションに近い女性ものの、スカートを検索しまくって、どうにか入手することに成功。

 チェックのプリーツが入ったミニスカートだ。


 そのマネキンを学習デスクの上に飾って、俺は床に腰を下ろす。

 あら不思議、アンナちゃんたら、パンツが丸見えだよ☆


 ローアングルで、スカートの中をガン見できるこの喜びよ……。

 生きていて良かった。


 

 おまけに、12月だというのに、うちわなんか持ち出しちゃって。

 下からパタパタと扇いでみる。

 すると、ふわりとめくれるスカート。

 白いパンストに覆われたピンクのパンティーが、露わになる。


「キャー! タクトさんのエッチ~☆」


 と、どこからか、アンナの声が聞こえてきそうだ。

 ふっ……我ながら、何という最終兵器を開発してしまったのやら。

 これを世に放てば、俺はノーベル化学賞を獲得してしまうな。



 そんなことを毎日やっていると、次のスクリーングが近づいてきた。

 もう、今年のスクリーングは、明日で最後らしい。


 ふと、カレンダーを眺めていると、机の棚から何がポトッと床に落ちた。

 拾ってみると、小さなフェルト生地のキーホルダーだ。

 少し埃かぶっている。


「これは……」


 ちょうど今から一年前、クリスマスイブの日に、白金から呼び出しを食らい。

 俺が天神の渡辺通りを歩いていたら、中学生たちが募金をしていた。

 その際、俺が担任教師と揉め、嫌味のつもりで1万円を中学生に渡したら、お返しにとくれたサンタクロースの人形。


 あの時これを渡してくれた女子中学生は、確かこう言っていた。


『きっと、あなたにもいつか……クリスマスを一緒に過ごせるひとが現れると思います』


 思い出して、急に頬が熱くなる。

 アンナの笑顔が、頭に浮かんだから。

 そして、同時に頬を赤くしたミハイルも……。


「もうあれから、一年か……」


 ずっと、机の上で埃かぶるまで、放置していて、なんだか悪い気がする。

 今からでも、リュックサックにつけてみるか。

 そしていつか……俺が誰かと、イブを一緒に過ごせる時が来れば……。


 これをあの子に返したいな。


 リュックサックにキーホルダーをつけていると、自室のドアが開く音が聞こえた。

 妹のかなでだ。


「あ、おにーさま……」

「おう。かなで、受験勉強ははかどってるか?」

「いや……その前に、なんですの? 可愛らしいスカートなんか飾って。女装でも始めるんですの?」

「え?」


 忘れていた。

 人工パンチラ発生器を、机の上に置いたままだったことを。


 このあと、かなでの誤解を解くのに、1時間を要した。

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