第29話 パメラ③
「ちょ、ちょっと待ってよエミル。俺、話についていけないんだけど」
俺はエミルとパメラの間に割って入った。ポンポンと進む話に、悔しいけど俺は全然ついて行けていなかった。
パメラはレオン先生の女癖を知っていて近づいた?
それでグラディスとレオン先生のふたりを両方傷つけようとした?
いや、えっと、筋が通るようで通らないような……。どういうこと?
パメラに視線を移すと、パメラは白いエプロンをぎゅっと握りしめて今にも泣きそうな顔をしていた。
「レオン先生に近づいてグラディスさんに見せつけ、彼女を傷つけた。そして用済みになったレオン先生とはすぐに別れたんです」
たたみかけるように言ってから、エミルは小さなため息をひとつついて言った。
「あなたは酷いひとだ」
パメラは唇をぎゅっと噛みしめて、小刻みに肩を震わせていた。
な、なんだか一方的にエミルに責め立てられるパメラが可哀想になってきたな……。
いやでも、エミルの言うことが本当なら、事実パメラは酷い女の子だし……。
どうしたらいいのか分からなくなって俺がオロオロしていると、木の陰から人影が飛び出してくるのが見えた。スカートをはいた大柄の人影は――。
「グ、グラディス? なんで?」
グラディスは今日は剣術の授業が抜けられないから来ないって言っていたのに?
っていうか、今はそれどころじゃない。
今、グラディスとパメラを会わせたら、流血沙汰になりかないぞ。
俺は慌ててグラディスの前に出た。
「グラディス、落ち着いて! 話せばわか、どわっ!」
駆けてきたグラディスに思い切り突き飛ばされた俺は、石畳の地面に倒れてしまった。痛ってぇ……。
「痛てて……」
ようやく起き上がった俺が目にしたのは、信じられない光景だった。
「パメラ……今までごめん……!」
「グラディス……?」
グラディスが今にも泣き出しそうな顔のパメラをぎゅっと抱きしめていたのだ。
「ずっと辛い思いさせちゃった……私のせいで……本当にごめん!」
グラディスに抱きしめられたパメラは、しばらくするとポロポロと大粒の涙を流して子どもみたいに泣き出した。俺はそんな二人を呆然と眺めることしか出来なかった。
「ど、どうなってんの……?」
エミルと目が合うと、エミルはこうなることは分かってました、と言わんばかりの笑顔を返してきた。
いや、どういうことなんだよこれは。ちゃんと説明してくれるんだろうな?
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