第26話 ひと休み②

 

「でもパメラに会うっていっても、グラディスが納得してくれるかな。レオン先生に会うのだってあんなに渋ってたのに」

「やっぱり反対ですか?」

「反対。グラディスをこれ以上傷つけるのは可哀想だよ」

「じゃあ僕たちだけで会いましょう」

「えっ」


 俺は絶句した。いや俺、パメラとまったく面識ないんだけど……。


「グラディスさんを傷つけたくないんですよね?」

「い、言ったけど……」

「僕は子供ですし」

「エミルはそうやって都合のいい時ばっかり子供のフリして」


 エミルはやれやれといった感じで肩をすくめた。


「酷いなあエドガーさん。フリなんかじゃないですよ。僕は本当に子供ですよ?」

「本当かあ? 実は三十歳くらいだったりするんじゃないの? 魔法で子供の姿に変身してるとか」


 するとエミルは俺を真顔でじっと見つめてきた。

 この反応、嘘だろ。まさか本当に……。


「鈍い人だと思っていましたが……。エドガーさん、大当たりです」

「ほ、本当に!?」

「やだなあ、嘘に決まってるじゃないですか」

「…………」


 かわいくねえ子どもだな本当に……。


「グラディスさんは磨き布にまつわる問題を解決したがっています。磨き布の泣き声を止めたい僕やノエルの利害関係と一致していますからね。これはグラディスさんの為でもあるんですよ」


 まあ、確かにな。

 磨き布にまつわる問題がグラディスにとってどうでもいい事だったら、俺たちを馬で追いかけてきたりはしなかっただろうし。


「ただ」


 そう言って、エミルは言葉を切った。


「どうかした?」

「グラディスさんはまだ何かを隠しているように思うんです」

「うん、まあ、帰りの馬車での様子は少しおかしかったもんな」


 エミルは小さく頷いた。


「傷を乗り越えるためには、ある程度の痛みは伴うものですよ。グラディスさんがもういい、もう嫌だと言う限り僕はこの問題を追及するつもりです。もうこれは僕とノエルだけの問題じゃない。グラディスさんの人生に関わる問題なんですから」


 前言撤回だ。精神年齢三十歳くらいと思ったけど、もしかしたら百歳くらいのお爺さんかもしれない。


「けど、パメラかあ。なんかグラディスの話を聞く限り怖そうな子なんだよなあ」

「エドガーさんなら大丈夫ですよ」

「おだててヤル気を出させようって作戦だろ?」

「いいえ。僕は本当にエドガーさんならなんとかなる、と信じてますから」


 エミルの言葉は冗談なのか本気なのかわからなかった。

 ま、エミルのこんな歯に衣着せぬ物言いじゃあ、相手を怒らせるだけなのは目に見えてるからな。


「じゃあ決まりですね。パメラさんに会うことは、一応グラディスさんに断っておきましょう」

「まったく人使い荒いんだから」

「いつもありがとうございます、エドガーさん」


 エミルが子どもらしい顔でニコッと笑った。頭が良くて腹の立つこともあるけど、なんか憎めないんだよなあ。

 

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