第23話 馬車~再び城下町へ①

 

 学校を後にした俺たち三人は、再び乗り合い馬車に揺られていた。


 教員室を出た俺が、どうやらこっそりと話を聞いていたらしいグラディスとばったり鉢合わせた後、色々と大変だったのだ。


 校庭で待つことにしたグラディスは、やっぱりレオン先生のことが気になって、居ても立ってもいられなくなったらしい。校舎に入って教員室に入ろうかどうか迷っているところへ、レオン先生のあの衝撃的な話が聞こえてきたのだそうだ。


「今の話、嘘だよね……?」


 廊下へ出た俺たちと顔を合わせたグラディスは真っ青な顔でつぶやくと、俺が止めるのも聞かずに教員室に入って行って、ハンナ先生に詰め寄った。


「ハンナ先生!」

「あらまあ、グラディスまで。もしかしたらエドガーと一緒に来ていたの?」

「ハンナ先生、今の話本当ですか。レオン先生が……」

「聞いていたの? あなたは剣術を直々に教わっていたからショックよねえ」

「なにかの……なにかの間違いじゃないんですか?」

「グラディス。信じたくない気持ちもわかるわ。でもね、レオン先生も認めたことなのよ」

「そんな……」


 そのとき、エミルが俺の袖を引っ張った。耳を貸せ、ということらしい。俺は少しかがんでエミルに顔を寄せると、エミルは「ハンナ先生に聞いて欲しいことがある」とささやいた。

 俺はハンナ先生に向き合うと、エミルに言われたとおりの言葉を口にした。


「でも不思議ですね。レオン先生の不祥事、今までどうして発覚しなかったんですか」


 ちょっと棒読みになってしまったのは、エミルの言葉をそのまんま復唱したからだ。


「私たちも、それが不思議だったの」


 ハンナ先生の話によると、レオン先生は「教師が生徒と付き合うのは禁止されているから、他の人には内緒だよ」と付き合う女の子たち(もしくは男子にも)に囁いていたというのだ。街の素朴な女の子たちはレオン先生の言葉を信じて、約束を守っていた。だから発覚が遅れたんじゃないか、という。


「あなたたちが卒業してからだったわ。問題が表沙汰になったのは」


 ハンナ先生は立ち上がって、顔を青くしているグラディスを見上げると、優しい声で言った。


「グラディス。あなた、もしかして被害に遭ったんじゃないの……?」

「いいえ、私は大丈夫です……」


 グラディスはその後も「私は大丈夫なんです」とオウムのように繰り返すだけだった。

 

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