第3話 不思議な兄妹 ①
カウンターの奥の扉を開けて姿を現したのは、十歳くらいの男の子だった。その男の子の後ろには、もう少し幼い感じの女の子が隠れている。
兄妹かな。
男の子は黒髪で理知的な顔立ち。女の子の方はほとんど白に近いふわふわの金髪で、兄の背中にしがみつくようにしていて、大人しそうな感じだ。
「ごめんなさい、ノエルがまた……。邪魔はしないからここにいてもいい……?」
男の子のほうが店員のお姉さん――イルミナさんに遠慮がちに尋ねる。その様子を見て、俺は特に何も考えず、率直に思った事を口にしていた。
「二人とも可愛いですね。弟さんと妹さんですか?」
「あら、あなた……」
イルミナさんが振り返って、なぜか真顔で俺をじーっと見つめてきた。
予想していなかった反応が返ってきて、俺はたじろいだ。
(あ、あれ? 俺、なんか変なことを言ったかな……。あ、もしかして弟じゃなくてお子さんだった? いやでも、姉弟に間違えたって、別に失礼には当たらないよな……?)
イルミナさんにじっと見つめられてどぎまぎしていると、やがてイルミナさんはにっこりと笑顔を見せた。
「あなた子供、好きなの?」
「……はい?」
うん、「かわいい」の半分くらいは、いわゆる社交辞令だったんだけど、もしかして通じなかったんだろうか。
いやでも、イルミナさん、普通に常識ありそうな感じの人だしな……。
どうして「かわいいですね」って言っただけで子供好きに認定されてしまったんだろう?
その時、あることに思い至って俺はハッとした。そういえば最近、子供が誘拐される事件が多いんだっけ。ということは、俺は変質者と思われたのかもしれない。
俺は両手を前に出して、慌てて否定した。
「ち、違いますよ! 俺、小さい女の子に興味とかないですから!」
慌てて否定していると、イルミナさんの後ろで兄妹がこそこそと小声で話しているのが見えた。
(え、なに内緒バナシなんかしてるんだろ……)
やっぱり怪しい変質者に見えてしまったのかもしれない。
何だかショックな気分に陥っていると、男の子の方と目が合った。
「すみません。ちょっとこの荷物を見せてもらってもいいですか?」
「え、ああ、いいけど……」
男の子は居住スペースから出てくると、カウンターに並べられた俺のなけなしの財産を物色しはじめた。
カウンターに並べられた古着や古本の中から男の子が取り出したのは、綺麗に折りたたまれた厚みのあるハンカチだった。端に刺繍がほどこしてある、お洒落なハンカチだ。
「これ、あなたの持ち物ですか?」
「え、ああ。俺のっていうか、貰い物だったんだけど……」
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