第7話 新米冒険者と魔獣


 翌朝、何事も無く朝を迎えたラファとユグルスは、朝食を摂ることにした。


「いやぁ、いい朝だね! 晴れてるし、空気も美味い!」


 朝から元気なラファに、まだ眠たげなユグルスは少しおされながら、用意された朝食に手を出した。


「……いただきます!」


 朝食も野営食の一種だった。あまり味は良くないが、文句一つ言うことなく、二人は他愛もない話をしながら食べ進める。


「いい食べっぷりだったね! それじゃ、シャインに替わるとするかな!」


 そう言うや否や、あっさりとシャインに替わる。


「……準備はいいか? 行くぞ」


 ****


 歩き出して三日目、賞金首の魔獣ウォーウルフが現れた。


「しゃ、シャインさん! 魔獣です!」


「ああ。わかっている」


 慌てるユグルスに対し、余裕そうなシャインは冷静に言う。


「この魔獣は初心者には丁度いい。ユグルス、お前が狩れ」


 その言葉に、ユグルスは思わず叫ぶ。


「ええええ⁉︎ ワタ……オレ一人でですか⁉︎」


「そうだ。この程度も倒せないようでは、この先、生き残れん。やれ」


 有無を言わせないシャインの言葉に、ユグルスは覚悟を決め、ウォーウルフと対峙する。


 ウォーウルフは、狼を大きくしたような獣であり、オスは単独で行動する。この個体も恐らくオスだろう。そして、シャインのカンが正しければまだ若く、また、物理が効くタイプの魔獣なので、今のユグルスなら倒せるだろうと踏んでいた。


 ユグルスはゆっくりと距離を詰め、しばし睨み合う。先に動いたのは、ウォーウルフの方だった。

 ユグルス目掛けて、突進してくる。


「うわぁ!」


 それをギリギリで回避すると、ウォーウルフは体勢を崩し転倒した、その隙にユグルスは急いで立ち上がり、手にしている武器、モーニングスターを大きく振りかぶりながら、ウォーウルフ目掛けて上から叩きつける。


「うぉおおお! えい! えい! えい!」


 一発で仕留めきれなかったからか、それとも初めての実践だったからか、ユグルスは何度もモーニングスターをウォーウルフの頭部目掛けて振り下ろす。


「……ユグルス。ユグルス!」


 シャインの呼びかけで、ユグルスは正気に戻る。


「もう死んでいる。……過剰に攻撃をするな。無駄な動きだ」


 厳しい指摘に、ユグルスはシュンとする。シャインはそんな彼女にため息を吐くと、


「耳でも牙でも爪でもいい。何か、倒した証明を残せ」


 そう言うと、シャインが乱暴にナイフを渡す。ユグルスは少し考えた後、一番切り取りやすい耳を切り取った。


「今後は無駄な動きは控えろ」


「は、はい! 気をつけます!」


 そんなやり取りをしながら二人は、二週間かけて歩いては休み、獣が出たら狩りを繰り返して、ゼルガとグーガスラヒとの中間にある町、シーリンの近くまで来た。


「やっとですね! シャインさん!」


「……ああ」


 浮かない顔のシャインに、ユグルスが首を傾げながら聞く。


「どうしたんですか?」


「……人目は……ないな?」


 そう言うと、光に包まれフレナと交代した。


「あれ? シャインさんじゃないんですね?」


 フレナは声のトーンを落としながら言う。


「シャインは、強い、けど。女ってだけで、絡んでくる人も、いるから。なるべく面倒事に、ならないように。ボクなら見た目で、あまり絡まれないし、絡んでも相手が逃げる」


「……なるほどです! でも冒険者ギルドはどうするんですか? この町にはないんですか?」


 立て続けの質問攻めにも、フレナは真摯に答える。


「ボク達は、それぞれ個人、で冒険者登録してる。から、ボクでも大丈夫。後、この町にも、ギルドはある……はずだよ?」


 そう言うと、ユグルスは納得したらしい。笑顔を向けながら、フレナの横につく。


 そんな彼女に、フレナは気になっていたらしい疑問を素直に聞く。


「ところで……気になって、たんだけど。なんで、武器、モーニングスター、なの?」


 何故フレナがそう言ったかというと、ユグルスが元々持っていた武器の中から選んだ武器が、モーニングスターだったのだ。ちなみに他の武器はボルレの町を出る時に換金している。


「それは……見た目的に強そうだからです! ダメでしたか?」


 少し不安げにするユグルスに、フレナは首を横に振ると、


「いや、いいんじゃ、ない? それじゃ、町に。行こうか?」


 自分で話を振ったものの、話題が広がらなかった事に軽くショックを受けたフレナだったが、なんとか誤魔化し、二人は町に入って行った。

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