第171話 機械兵襲来
鳴り響く警報。それはギアズエンパイアに敵が襲撃した事を知らせる音。
気持ちを切り替え、リンは今のこの状況に集中し、シオンに尋ねた。
「わかった どこに向かえば良い?」
魔王軍の有する機械兵が現れたのであれば、向かう他無い。
ギアズエンパイアに入る前にも倒したばかりだったが、まさか同日中に襲ってくるとはリンは思ってもみなかった。
《現れたのが二方向なの! だからリンには東側の門から外に出て欲しい!》
「了解 今レイと一緒にいるがレイも同伴で良いか?」
《丁度良かったわ! リン一人だと流石に数が多いから……私達は西側に行くわ!》
「頼んだ 終わり次第合流しよう」
通信魔法を切り、レイに事情を話す。
幸い町を探索していたおかげで、ある程度の道はもう知っていた。リンとレイは急いで東へと向かった。
「こんなにも早く来るなんて……オレらがここに来たからですかね?」
「あるいはギアズエンパイアに『用事』があるかの二択だろうな」
そもそもここに来る当初から機械兵は壁の外にいた。
もしもリン達を狙う、あるいはギアズエンパイアを襲うのであれば、もっと多くの機械兵が待ち構えていても不思議では無い。
(なのにそれ程多くいなかったのは……『機械兵の生みの親』が気になるな)
魔王軍側に寝返ったと思われる『マッド』という科学者。
リンはその存在が気がかりであった。
「見えました! 東門です!」
考えているうちに目的の門の前にたどり着く。
連絡を受けていた門番は、リン達を見るとすぐさま駆け寄ってきた。
「お待ちしておりました! 門を開ける準備は整っています!」
「町の人の避難はどうなってます?」
「それでしたら問題ありません 地下シェルターの方に既に誘導しております」
(シェルターがあるのか……便利だな)
「よっしゃあ! ならパッパと倒しちゃいましょう!」
「ああ たかだか機械に遅れを取るわけにはいかない」
「我々ギアズ兵も準備が整い次第出撃いたします! どうかご武運を!」
「安心しな! 整う前に全員倒しちまうからよ! アニキが!」
「ハードルを上げるな」
だがレイの言葉通り、兵士達の手を煩わせる事無く倒したいのが本音である。
「こちらから外に出られます! 準備を!」
「行きましょうアニキ……サポートは任せてください」
「……頼りにしてるさ」
外に待ち受ける機械兵達を相手に、この場所を襲わせるわけにはいかない。
レイは銃を構え、リンも手に魔力を込め、外に出る。
「中々数が多いな……」
目の前に広がる光景は当初訪れたと場所と同じく機械の廃棄所。そしてざっと見積もっただけでも百は超える機械兵の数。
それに対してこちらは二人。圧倒的に
「良かったですねアニキ オレがいなかったら今頃一人でこの数ですよ」
「まあ……
だが、
「聖剣……二刀流!」
聖剣は土の聖剣『ガイアペイン』と、木の聖剣『ローズロード』の二振り。
「形態変化 『
聖剣は形を変え、それぞれ別の武器へと変化する。
「聖剣連携『鎖鎌』!」
大鎌となった
「これで刈り取る 逃したヤツは任せた」
「了解!」
遠心力をつけた重たい一撃を、機械兵達に叩き込む。
「オラァ!」
鋭い切れ味の大鎌が、容易く機械兵の体刈り取り、一気に数を減らしていく。
「俺に銃弾が……効くと思うなぁ!」
当然機械兵達も黙ってやられる訳は無い。
搭載された銃でリンを狙い打つが、
「その程度の射撃じゃあオレには遠く及ばないぜ!」
リンの背後から、的確に機械兵達を狙い打つレイン。
「捨てる場所には困らねぇな! お前ら全員スクラップだからよ!」
次々に壊される機械兵達。
このまま全て倒してしまおうと考えていると、突然機械兵達の攻撃が止まった。
「……何だ?」
「いや~流石は聖剣使いとその仲間 一筋縄ではいかないか」
声と共に現れる老人。
機械兵達を引き連れ、そして生み出した張本人。
「初めまして聖剣使い ワタクシ『マッド』と申します」
度重なる警告を無視し、最後には人体実験にまで手を染めた自らの欲望に忠実な科学者。
「アンタが……脱獄者か?」
以前『トールプリズン』に収容された科学者が、唯一トールプリズンの壊滅時の遺体の中に含まれておらず、魔王軍に手を貸しているのではないかと噂では這い聞いていたリン。
「脱獄もなにも……大人しくしていたらトールプリズンが
「そしてそのまま逃げて魔王軍に手を貸している……これもアンタの意思じゃあないとでも言う気か?」
「はっはっは……そう言ったら信じますかな?」
「まさか……アンタを信用するなんて無理な話さ」
「これはまた初対面だというのに嫌われましたなぁ……ワタクシはもっとお話しをしてみたいというのに」
薄気味悪い笑顔を浮かべ、マッドはリン達を見る。
「まあ良いでしょう 今回ワタクシがここに来たのは理由が有りまして」
「なんだ? 大人しくお縄につきたくなったか?」
「なぜ? ワタクシの才能に嫉妬して牢に送り込んだ連中になぜ従う必要がある? そんな無能な連中のルールに従う必要は無い」
自らの行いは何の間違いも無いと、そう言ってのけるマッドの人格は間違いなく『狂っている』と言っても良い。
「さあ見なさい! 兵士達の動力源はこのワタクシが発明した『擬似賢者の石』で動いている……流石に聖剣使いほどの魔力は持ち合わせてはいないが……完全自立型の機械兵の動力源としては充分!」
今まで倒してきた機械兵も、全てこのマッドが造り出した兵器。
「ところで『賢者の石の造り方』はご存知かな? 膨大な魔力を込めた石を造るにはそれ相応の術者の魔力を有するのだが……それだけの魔力を持つものはそういない」
だがこのマッドは『擬似賢者の石』を造り出す事に成功した。
「だからそこに私はプラス『α』を加えた……何かわかるか?」
「さあな 凡人には理解できないよ」
苛立ちを覚える言い回しに、リンは嫌気をさしながら答える。
「その謙虚な姿勢は素晴らしい では答えあわせだ……『命』だよ」
「……なんだと?」
「命にはそれだけのエネルギーがある! だからワタクシ……沢山人を攫ってもらいましたよ それをアナタが『アイン様』を倒してしまったせい効率が悪くなってしまった」
なんの躊躇いも無く、マッドは『命』をただの自分の発明品の『資源』としか思っていない。
「自分のやったこと……わかってんだろうな?」
「安心したまえ 人間も魔族も平等にワタクシの実験の礎となった どちらかといえば魔族のほうが質が良かったかな? まあ誤差ではあるが……」
「さっきから聞いてたらこのクソジジィ! 胸くそ悪いんだよ!」
今まで黙っていたレイが銃口を向けて、引き金を引く。
「なんと野蛮な これだから常識に囚われた凡才は……」
マッドを機械兵達が銃弾から守る。
「無駄ですねぇ……何があってもワタクシを守れとインプットしているのでね 素晴らしいと思わないか?」
「いいやまったくこれっぽっちも……呆れて何も言えないな?」
リンは覚悟した。この男は『生かしてはおけない』存在であると。性根が腐っているとはこの事なのだと。
「呆れる? 何を言っているのか? いくらワタクシの研究結果がわからないからといってそのような……」
「機械ってのはな……『誰かの役にたつ為』の道具なんだ お前の私利私欲を満たす為のものじゃあない」
機械兵達の動力が、たとえ元『人間や魔族』であろうとも、リンは戦う事に躊躇は無い。
「随分自分を過大評価しているようだが……見てみろよ? そのアンタの発明品は今どうなってる? ここのスクラップ置き場の仲間入りだ」
「なんだと……?」
あからさまに怒りを顕にするマッドに対し、煽りをやめない。
「つまり俺が言いたいのはな……アンタの才能なんて『掃いて捨てる程度』のものなんだよ 理解したか? 『凡才』科学者」
「クソガキがぁ! 舐めた口を利くなぁ!」
完全にリンのペースへと引き込まれるマッド。
一斉に機械兵達がリンへと襲い掛かった。
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