第77話 オレの番
真剣勝負に水を差すような真似をされ、アヤカは不満げに言う。
「戦いに割り込むとはリン殿どういうつもりでござる?」
「勝負はもう着いてる アンタの勝ちだ」
シオンの腕を掴み攻撃を止めたかと思うと、リンはこの勝負の勝敗の結果を告げた。
「納得いかないでござるな 勝手に決められるのは」
「勝敗は降参か気を失ったらだろ だったらシオンの負けだよ」
そう言った瞬間、シオンは力なくリンに倒れこむ。
戦いの中、痛みや疲れの影響で限界に達していたのだ。
「まさか……」
「途中から気を失ってたんだよ もっとも
リンはとりあえずシオンをゆっくりと、汚れないようにしながら地面へ寝かせる。
「ったく……誰がここまでやれって言ったんだ」
目覚めを待つ。
それがせめてもの、リンに出来る事だった。
「……ハッ!?」
シオンは起き上がり、辺りを見渡す。
先ほどまでいた広場ではなく、泊めてもらっている城の一室だった。
「……腕治ってる」
痛みはある。が、問題なく動かせた。
「え〜と……負けちゃった?」
「その通りだ」
「ひゃあ!?」
突然襖が開くと現れたのはリンだった。
「俺が止めた 気を失った方が負けだって言ってたからな 意識のないまま戦ってたから無理矢理にだが」
「あははは……ごめん」
あれだけ言っておきながらシオンは負けてしまった。
実力差があったのは勿論承知の上での戦いだったが、それでも勝ちたかったのだ。
「俺に責める理由は無い」
「でも……」
「それにこれで心置きなく修行に専念できる これでよかった」
意外にも乗り気なリンに驚いていると、それが顔に出ていたようだ。
「……まあ別に やりたくてやるわけじゃあないがな」
「じゃあなんで……」
「聖剣が使えなくなった」
「!?」
その一言に驚きを隠せなかった。
「どうして!? 何があったの!?」
「知らん 特に身体に異常はなさそうなんだが何故か出せない」
「そんな……」
「そんな状態でここを離れるのは危険だ 一旦ここで様子を見たい」
「どれくらい?」
「一応アヤカと交渉してみるが一ヶ月だな それ以上は無理矢理にでもここを出て行くさ……いや本音は一刻も早く抜け出したい」
余程嫌なのだろう、その顔には余裕はない。
「まあとにかく今は休め 前にレイや俺に使ったここの変な薬でとりあえず骨はくっついてるみたいだが……痛みはまだあるんだろ?」
「ハァ〜……仕方ないか」
シオンの口からおもい溜息が出る。
今は傷を癒す事もそうなのだが、聖剣が使えないという事態は深刻な状況だからだ。
「俺はレイ達にもこの事を話しておく あれからまだ二時間ぐらいしかたってないしな」
「あら? そんなに経ってないのね」
「流石の回復力だな 俺には真似できない」
「アハハハ……気にしないでいいのに」
「いやはや全然 戦いのたびに寝込む俺と大違いだと羨んでいただけさ」
(めっちゃ気にしてる)
普段から顔つきの悪いリンなのだが、いつも以上に眉間の皺を寄せている。
「まあそういう事にしておいてあげる それじゃあしばらく会えなくなるわね」
「ああ その間チビルとレイをを頼む 特にレイのやつは何しでかすか分からんからな」
「任せといて 貴方も修行頑張って」
「死なない程度にな」
そう言ってリンは立ち上がり部屋を後にしようとした時、シオンが一度呼び止めた。
「あーえっと……あのさ」
「ん?」
「え〜とさ……今日の戦いので私が言ってた事なんだけど」
「言ってた事……」
リンへと立てた誓いの本音、それを聞かれてしまった事を思い出してしまい、急に恥ずかしくなってしまっていた。
「私が言ってた事なんだけどさ……どう受け止めたのかな〜って」
「どうって……」
「いや勘違いしてくれてたらそれはそれで安心なんだけどほらやっぱりこうなんと言うか」
「あー……えーと」
リンはなんとも言いにくそうにシオンにこう答えた。
「すまん 眠気のせいであんまり聞いてなかった」
「……は?」
「いや昨日は色々あって眠れなくてな 眠ってたわけじゃあないんだがこう意識がポツリポツリ無いというか」
「は?」
「……で? なんの話だったんだ?」
リンは勢い良く追い出された。
シオンからすれば安心したような、でも聞いてはほしかったような、複雑な気持ちを抱えてふて寝した。
そして時が経ち、夜となる。
「……ふむ」
此処はリンとムロウが決闘した場所。今は殆ど焼き焦げているこの場所が、戦いぶり。激戦を物語っている。
「これが今の聖剣使いの力か」
そしてこの地に一人で立つ軍服の魔王軍の一人。
「このデータはドライ様へと送るとして 後はどうするべきか」
「おーおー ココが決闘跡地かー」
「!?」
この地へと足を運ぶ者が少女と、小悪魔の二人がまだ居た。
「で? あれだろ? 犯人は現場になんとやらってやつだな」
「それ使い方違うくねえかな?」
「細けえこたあいんだよチビル! 奴がこの場所に来てるならマジなわけだしよ」
「お前は……聖剣使いの」
「お? 知ってたか アンタが木鬼っていう魔王軍の手先だろ?」
その場に現れた者の事は木鬼は既に調べていた。
魔王軍の諜報役として、聖剣使いの事を調べ、身辺の人物の事も調べ上げていたからだった。
「そうとも! このオレ様は今巷で人気急上昇中の二代目聖剣使いの右腕にしてライトアーム! レイ様だ!!」
よくわからない名乗りをあげるレイを黙って木鬼は見ている。
満足げな表情をしているレイとは他所に、チビルはこの空気に耐えられなかった。
「なあ! 見つけたのはいいけどさ! どうすんだよ!? リンもシオンもいないし……まさか一人で戦うわけじゃあないんだろう? あとお前の名乗りスゲエダセェぞ」
「あぁ? 何言ってんだよチビル」
銃を取り出し木鬼へと構える。
「目標捕捉ってな いい加減オレの番だろうが! あとダサくない」
手柄を立てる為、レイは魔王の木鬼と対決する。
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