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「なぁ、シャーミィ」
「なん?」
「服でも買わないか? シャーミィはいつも同じ服ばかりだろう?」
その街にたどり着いて、少し経った日のことである。ふと、マサルがそんなことを言った。
まじまじとマサルはシャーミィの服を見ている。
シャーミィの現在着ている服は、シャーミィが魔力で作った服である。必要ではないということでシャーミィは服を買うこともしていなかった。
しかし此処は衣服店が多くある街である。衣服店を目にとめて、シャーミィに何か服を買ってあげたいという気持ちにマサルはなっているらしい。
正直、シャーミィは服なんていらなかった。でもマサルがシャーミィに新しい服を買ってほしそうにしていたから、それに頷くのであった。
とはいえ、シャーミィはマサルにお金を出してもらう気はなかった。マサルとの関係は対等でありたいと願っているシャーミィだ。お金は自分で出すといって、宿を飛び出していった。
(それにしても服か。私は本体が魔物やし、これ以上大きくもならんやろし、幾つか買ってもよかか。マサルに荷物預ければ気にせんでよかし)
そんなことを考えながら衣服店に入ったシャーミィは、女性店員に囲まれて着せ替え人形のようにされることとなる。
シャーミィはかわいらしい見た目をしているので、女性店員たちにとってみれば色んなものを着せたいと思ったようだ。
「可愛いー」
「お客様、これが似合いますよ」
「これはどうですか?」
丁度、シャーミィ以外の客がいなかったからというのもあるだろうが、シャーミィはその店にいた三人の店員に囲まれてしまった。
シャーミィは一人で此処に来てしまった事は後悔していた。女性特有の可愛いものを着飾りたいという気持ちを甘く見てしまったのが悪かったのだろうか。しばらくシャーミィは着せ替え人形になった。
あれもこれも似合うといって店員に持ってこられてしまったが、シャーミィはなんとか三着ほどに絞って、購入する。なんとか引き留める店員たちから、逃れた。
(ひどか目にあったわ。こがん、着せ替え人形にされっとはおもわんかった。あー、疲れたわ)
そんなことを思いながらシャーミィは疲れながら、街を歩く。
街を歩いていれば、シャーミィは視線を感じた。じっと、シャーミィを見つめる視線。
――射貫くようにシャーミィを見ている、その視線にシャーミィはもちろん気づいた。
背後だろうとも、誰がシャーミィを見ているかがすぐにわかった。
男女二人の冒険者パーティーだろうか。その二人はシャーミィを見かけて、驚いた顔をする。そしてシャーミィのことをまた見つめている。
(なんかみつめられとんね。私なんかしたんかな。でも嫌な視線ってわけでもなか。なんやろ、私の事を気にして、私のことを驚いているようなそんな視線。なんなんやろ)
シャーミィはその視線の理由が全く分からなかったが、シャーミィに敵対しているような視線でもなかったので放置することにした。
シャーミィは洋服を抱えて、宿へと戻るのであった。
宿へ戻ってからはシャーミィの着せ替え会になった。
三着しかないものの、シャーミィは「似合うやろ?」と言いながらマサルに洋服を見せていく。
「ああ。似合う」
「そがんほめられっと、嬉しかね」
シャーミィは衣服にはそこまで興味はないものの、こんな風に褒められるとやはり嬉しいものである。シャーミィは褒められて伸びる方である。褒められるとこれから、たまには洋服を買ってもいいかななどとそんな風に思うのだった。
(そういえばあの私を見とった人たちのことは言わんでよかかな? 害はなかし)
そして結局シャーミィは自分に向けられている視線のことはマサルには言わないのであった。
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