第6話

「うらぁっ!」

 勢いよく一斉に襲いかかる三井たち。

 風魔法を行使すれば吹き飛ばすことができる佐久間は一人ずつ捌いていく。


 いち早く間合いに入った一人の股間を蹴り上げる。

 取り巻きAはブルっと全身を震わせたあと、白目を剥いて倒れる。

 続いて取り巻きBとC。


 まずは正面に見えているBの拳を最小限の動きで躱す。

 勢いを殺さないまま足を引っ掛け、背後のCとぶつかるように誘導。

 殴る寸前だったCの拳はBにヒット。


 それを流し見た佐久間。Cの意識を奪うため、回し蹴り。遅れてやってきたDを巻き込む形で蹴り飛ばす。

(まずは四人……と)

 四人が瞬殺された光景に、単体で特攻するのを躊躇う三人。

 視線を合わせて、三方向から攻める作戦に切り替える。


(……うーん。これは飛ばないと無理かな?)


 足にチカラを入れてジャンプする佐久間。

 後ろに回転しながら、二人の顔面を足裏で蹴り飛ばす。

 鼻血を吹き出しながらバタッと倒れる二人をよそに正面の三井だけが残る。


「クソが! 舐めたマネしてんじゃねえぞ!」

 圧倒的な実力の差にも拘らず、受け入れられない三井はカッターナイフを取り出し、切り付けようとする。

 もちろんハエが止まりそうなスローな動きに佐久間が反応できないわけがなく。


 三井の首に右手を持っていき、カッターを持つ手首を左手で掴む。

 握り締めるチカラを強めてカッターを離させた後は、流れるように関節技を決める。


「……あっ、ごめん。手を使っちゃった。僕の負けでいいから今後は関わらないでもらえるかな?」

 そう言って拘束を解く佐久間。

 三井の胸に屈辱と復讐心が宿る。


「……クソがッ‼︎ 覚えてろよ佐久間! 俺をコケにした罪は重えからな!」

「えっ、ええー……そんなテンプレみたいな文句ある?」

「うるせえ! お前だけはぶっ殺す! あとで吠え面をかいても絶対許さねえからな‼︎」


(他人は変えられないって異世界あっちで思い知らされたし、僕が彼に会わないようにする方がいいのかな? 引っ越しの予定を早めないと)

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