アノレキシアの百合

作者 宵澤ひいな

未成熟な魂は幸福たり得るのか? ――社会に弄ばれた百合たちの物語

  • ★★ Very Good!!

主役である日芽子の内面の描かれ方がとにかく尋常ではないのひとこと。きっと人によっては眩暈すら覚えるほど甘美に映るに違いない。人の心に触れる物語が読みたい方には、確実にオススメできる物語だと思う。

「精神が子どものまま」――よくそういう心無い非難の言葉を聞くことがある。しかしその非難は本当に的を射ているのか? それは非難をする者たちの側が意識的・無意識的かは別にして、彼らを「未成熟な存在のまま」であるように社会の隅に押しやってきただけではないのか? そもそも「未成熟な魂」が存在して何が悪いのか。本作は我々にそういった問いを鋭く投げかけてくる。

無論扱われるテーマがテーマだけに(拒食・性自認・同性婚etc)、賛否両論になることは間違いない。かくいう私も本作の主役たちの心情について全てを肯定することはとてもできない。だがそういった「許容しがたい」点があってこその純文学であろうし、本作を通してより多くの人が、現代社会の「歪み」によって生ずる諸問題について深く考えるきっかけになればと、私は願うばかりだ。

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