第89話 月を眺めて‥(湖畔の月の城・カクヨム内作品・番外編) 

 今日の晩の満月は夢のように綺麗だった

月が綺麗だ・・ポッンとアーシュはつぶやいた・・


昨日は悪い夢を見た


こんな綺麗な場所にいるのに・・過去の記憶が胸を刺し

あんな夢の形で出てきたのだ・・・


大きな金の天秤に それぞれ一人づつ

一人は立ち上り 黒い長い髪の少女


鎖に片手をかけて握りしめ

もう一人の少女は金の髪 ・・


うつ伏せになり血まみれで 天秤の盆の中は血で満たされていた


片手がだらりと・・

二の腕は 火傷に 他の怪我で血が大地に向かって

腕から流れた血で滴り・・


「兄さま・・湖れは貴方のせい?

それとも生き残り、こうして生きて貴方を脅かす私 のせい? 」

立ち上っている美しい 黒い髪の少女の背中や肩には呪いの刺青 

泣き叫ぶように言うのは哀れな俺の異母妹のテイ


金の髪の少女はよく知ってる 気を失っているのだろうか?

盆の中の自らの血の中にいるのは・・ 誰よりも愛しい・・


あれは昨日の夜の夢


「満月が綺麗だ」

ぽっんと 城のバルコニーの長イスに持たれ俺は 呟いた。

「そうだね。」と少女があいずちをうつ


「お城に招待してくれたアルテシア姫に感謝しなくっちゃね。」と

金色の髪と左右違う瞳の美しいエルトニア姫ことエイル


あいずちをうったエイル‥

彼女こそ夢の中の盆の中の血まみれの少女…


エイルは 今 この湖畔の月が見える美しい城で嬉しそうに笑う

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