第4話 岬の秘境(8)
洞窟を抜けると、そこは開けたところだ。今度は何が襲い掛かってくるんだろう。5人は辺りを見渡した。すると、石像がある。いや、旋風神カイが石化した姿だ。
「フッフッフ・・・」
誰かの声に気付き、5人は後ろを振り向いた。後ろの高台には1人の若い男がいる。首に新劉協のペンダントを付けている。見張っている信者のようだ。
「お前は!」
「知らないのか? 私の名はレイだ。私はかつて死のうとした。だが、偉大なる創造神王神龍様の手によって大いなる力を与えられた。そして、再びやり直すことができた」
レイはこれまでの経緯を語った。レイも王神龍の手で蘇った。そのことにとても感謝していた。
「王神龍め、たった一度だけの命をもてあそぶなんて」
サムは王神龍が許せなかった。自分を洗脳して悪に利用しようとしていた。そんな神龍教が許せなかった。
「素晴らしいことではないか。私は一度人生を諦めようとした。教員になりたかったが、教える力がなくていらない子扱いされ、もう一度人生をやり直したかった。だが、私は偉大なる創造神王神龍様によって再び命を与えられ、教員になることができた。今ではこんな立派な教師さ。何て素晴らしいことよ」
レイは王神龍に出会った日のことを思い出した。
9年前、レイは絶望していた。教員になりたくて大学に入ったのに、教える力がなくて諦めざるを得なかった。教員にさせないために、実習を辞退させられ続けた。レイはとても悔しかった。夢だったのに、ここまで頑張ってきたのに、どうしてこんなことになるんだ。
その日の夜、レイはベッドでぐったりとしていた。今夜はジョッキ6杯飲んだ。ふつうは居酒屋に行かないのに、こんなに飲まないのに。とても悔しかった。みんなは実習ができるのに、自分だけできない。これほど辛いことはない。レイはいつの間にか涙を流していた。
レイはそのまま寝入ってしまった。レイは夢を見た。今日、教授たちに呼び出されて諦めるように言われたことが夢に出てきた。それほどショッキングな出来事だった。
「君は勉強ができても、教える力がないから向いていないよ。諦めなさい!」
教授は残念そうな表情だった。本当は教員にしたかった。実習に行かせたかった。でも、レイは無理だろうと思った。
「そんな・・・」
レイはそれ以上言えなかった。これから、どうやって生きていけばいいんだ。教員という夢をあきらめた今、何になれというんだ。
「しょうがないんだ。君はそんな性格なんだ」
その隣にいた学務センターの人も残念そうな表情だ。彼も教授と気持ちは同じだった。でも、諦めてほしかった。
「もし君が問題を起こしたら、大学にも影響してくるんだぞ。場合によっては、断れるかもしれないんだぞ」
確かにそうだ。今まで何度かトラブルが起こったことがあった。トラブルが起こったら、縁を切られる。実習に行けなくなる。大学を守るためなら、どうしてもしなければならなかった。
「それでも僕は教員になりたいんだ!」
レイは今までの我慢が解けて、強気な口調で言った。レイは本気だ。何が何でも教員になってみせる。
「諦めろ!」
突然、教授がビンタした。レイは驚き、泣き出した。ビンタするとは思わなかった。あんなにやさしかった教授がこんなことするなんて。
レイは目が覚めた。枕は涙で濡れていた。レイはベッドから体を起こし、座った。涙が止まらない。これからどうすりゃいいんだ。夢を諦めざるを得なかった。これほど辛いことはない。生きていく意味をなくしそうだ。
「あぁ、俺、これからどうすればいいんだろう」
と、レイはある物が目に浮かんだ。包丁だ。そうだ、この包丁で自ら命を絶って、人生をやり直そう。そして、今度こそ教員になるんだ。
「どうしましたか?」
誰かの声に気付き、レイは上を向いた。そこには、白い服を着た忍者のような男がいた。どうやって入ったんだろう。レイは首をかしげた。
「あなたは?」
レイはその男が誰なのか知らなかった。神龍教なんて、知らなかった。
「私は王神龍。あなたの味方です。あなたは教員になりたかったのですか?」
王神龍はそのことを知っていた。神であり、世界のすべてを知ることができた。そして、力を求めるレイの声に気付き、ここに駆け付けた。
「はい。なのに教える力がなくて、あきらめざるを得ず、夢を失い、自ら命を絶とうとしました」
レイは涙ながらに語った。この人なら信じられる。必ず教員にできるように力を与えてくれる。レイは期待していた。
「何て残念な終わり方なんでしょう。でも、私がいれば、大丈夫。憎しみの数だけ、人は強くなれるのです。私にはわかります。あなたは力を求めている。教える力を」
王神龍は嬉しそうだ。また1人、信者が増える。これほど嬉しいことはない。
「どうしてわかるんですか?」
「私は心の目を持っているのです。あなたの心が読めるのです」
王神龍は神であるため、心の目を持っている。人間の心を読むことができた。
「すごい」
レイは感動していた。自分もそんな力が欲しい。
「あなたは教える力が欲しいですか?」
「はい」
レイは何としても教員になりたかった。子供の頃からの夢。絶対に叶えたかった。
「教員になりたいですか?」
「もちろんです!」
レイは嬉しそうだ。この人についていけば、必ずなれる。確信していた。
「わかりました。そなたに教える力を与えましょう!」
「ありがとうございます」
レイは嬉しそうにお辞儀をした。
「もう一度大学に入り、そして教員になるための資格を取るのです! お金は心配ありません。お金は私が出します」
「わかりました。もう一度入って、必ず教員になってみせます」
それから、レイは新たな力を手に入れた。それによって、教える力を身につけ、どの教授からも信頼された。そして、教員になることができた。その後、レイを見切った大学教授や学務センターの人が突然いなくなった。王神龍の生贄に捧げられた。だが、その事は誰も知らなかった。ただ、関係者の中にその悪夢を見た人がいて、そうなったんじゃないかと思う人がいた。
「そんなことしてまで教員になろうとするなんて!」
サラは拳を握り締めた。そんなことをしてまでも教員になろうとするレイが許せなかった。
「素晴らしいことではないか? 夢を叶えることができたんだぞ!」
レイは教員になれたことが嬉しくてしょうがなかった。その喜びを多くの人々に伝えたい。そして、神龍教の信者にしたいと思っていた。
「まるでドーピングをしているようだ! 強くなるためにこんなことをするなんて!」
サムも拳を握り締めた。
「ドーピングなんて、あまりにもオーバーな表現ではないか。悪いことだと思っているようだが、夢を叶えるためなら仕方がないことだ!」
レイは高笑いしていた。どうしてそんなものに例える。夢を叶えるなんて、ちっとも悪いことではない。
「その腐った脳みそ、叩き直してやる!」
「ほう、やる気か? ならば、相手してやるぞ! そして、お前らも神龍教の信者にしてやるぞ!」
レイは巨大な水色のドラゴンに変身して襲い掛かってきた。
「天の裁きを!」
バズは魔法で強烈な雷を落とした。レイはびくともしない。
「雪の裁きを!」
サムは魔法で猛吹雪を起こした。それでもレイはびくともしない。
「それっ!」
レミーは空高く飛び上がり、氷を帯びた剣で何度も斬りつけた。レイには全く効いていないようだ。
「食らえ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。それでもレイには全く効いていない。
「グルルル・・・」
サラは氷の息を吐いた。だがレイはびくともしない。
「ガオー!」
レイは灼熱の炎を吐いた。5人は非常に大きなダメージを受け、レミーは倒れた。
「命の奇跡を!」
バズは魔法でレミーを復帰させた。
「癒しの力を!」
サムは魔法で5人を回復させた。
「覚悟しろ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。それでもレイはびくともしない。
「グルルル・・・」
サラは灼熱の炎を吐いた。レイは少し暑がったが、びくともしない。
「ガオー!」
レイは氷の息を吐いた。5人は大きなダメージを受け、レミーは氷漬けになった。
「氷の裁きを!」
バズは魔法でレイを氷漬けにした。だがレイはびくともしない。体力が高い。
「くそっ、体力が高い。天の裁きを!」
サムは魔法で強烈な雷を落とした。レイはびくともしない。まだまだ体力があるようだ。
「食らえ!」
レミーは空高く飛び上がり、炎を帯びた剣で斬りつけた。レイはそれでもびくともしない。
「覚悟しろ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。レイは少し痛がったが、すぐに持ち直した。
「グルルル・・・」
サラは氷の息を吐いた。レイの表情は変わらない。
「ガオー!」
レイは灼熱の炎を吐いた。5人は大きなダメージを受け、マルコスは倒れた。サムとレミーの体に火が付いた。
「命の奇跡を!」
バズは魔法でマルコスを復帰させた。
「癒しの力を!」
サムは魔法で5人を回復させた。
「それっ!」
レミーは空高く飛び上がり、炎を帯びた剣で斬りつけた。だが、レイはびくともしない。
「ギャオー!」
サラは氷の息を吐いた。レイは少し凍えたが、びくともしない。
「ガオー!」
レイは灼熱の炎を吐いた。5人は大きなダメージを受け、レミーは倒れた。
「命の奇跡を!」
バズは魔法でレミーを復帰させた。
「癒しの力を!」
サムは魔法で5人を回復させた。
「覚悟しろ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。まだレイはびくともしない。
「グルルル・・・」
サラは氷の息を吐いた。だがレイはびくともしない。
「食らえ!」
レイは見えないかまいたちを起こし、バズを切り裂いた。バズは一撃で倒れた。
「命の奇跡を!」
サムは魔法でバズを復帰させた。
「えいっ!」
レミーは空高く飛び上がり、炎を帯びた剣で鋭く突いた。レイは少し表情が苦しくなったが、すぐに持ち直した。
「覚悟しろ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。レイは表情が苦しくなった。
「グルルル・・・」
サラは氷の息を吐いた。レイはますます表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
レイは魔法で自分を回復した。レイは元気を取り戻した。
「天の裁きを!」
バズは魔法で強烈な雷を落とした。レイはびくともしない。
「氷の裁きを!」
サムは魔法でレイを氷漬けにした。だが、レイは氷漬けにはならず、びくともしない。
「それっ!」
レミーは空高く飛び上がり、炎を帯びた剣で流れ星のように斬りつけた。レイは大きなダメージを受けたが、びくともしない。
「食らえ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。それでもレイはびくともしない。
「ガオー!」
サラは氷の息を吐いた。だが、レイはびくともしない。
「グルルル・・・」
レイは灼熱の炎を吐いた。5人は大きなダメージを受け、サムは倒れた。
「命の奇跡を!」
バズは魔法でサムを復帰させた。
「それっ!」
レミーは空高く飛び上がり、炎を帯びた剣で斬りつけた。レイはびくともしない。
「覚悟しろ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。レイは少し表情が苦しくなったが、すぐに持ち直した。
「グルルル・・・」
サラは灼熱の炎を吐いた。レイは少し表情が苦しくなった。
「癒しの力を!」
レイは魔法で自分を回復した。レイは元気を取り戻した。
「天の裁きを!」
バズは魔法で強烈な雷を落とした。レイは少し表情が苦しくなったが、すぐに持ち直した。
「星の裁きを!」
サムは魔法で大量の隕石を落とした。レイは表情が苦しくなった。
「えいっ!」
レミーは炎を帯びた剣で何度も斬りつけた。レイにはあまり効いていないようだ。
「覚悟しろ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。レイは更に表情が苦しくなった。
「グルルル・・・」
サラは灼熱の炎を吐いた。レイは前かがみになった。
「癒しの力を!」
レイは魔法で自分を回復した。だが、表情は苦しいままだ。魔力が切れた。もう回復するだけの魔力は残されていない。
「天の裁きを!」
バズは魔法で強烈な雷を落とした。レイは大きなダメージを受け、体がしびれた。
「星の裁きを!」
サムは魔法で大量の隕石を落とした。レイはますます表情が苦しくなった。
「それっ!」
レミーは炎を帯びた剣で何度も斬りつけた。レイは前かがみになった。
「食らえ!」
マルコスは巨大な腕のオーラを作り出し、引っかいた。レイの表情はうつろうつろになった。
「とどめだ!」
サラは灼熱の炎を吐いた。レイは倒れた。
「くそっ・・・、よくも俺に歯向かったな。覚えておけ! お前らも偉大なる創造神王神龍様の生贄になるんだぞ。覚えておけ!」
レイは息絶えた。
「こんなことしてまでも夢を叶えようとするなんて。なんでも夢がかなうようなったら人生面白くないじゃないか?」
サラはレイの夢の叶え方がおかしいと思った。いくら向いてないからといって、神龍教の力を使ってまで叶えようとするなんて。自分で努力して強くなってこそやりがいがあるのに。
「そうだそうだ」
サムも同感だった。こんなことで叶えようとするなんて、許せない。もっと努力することが大切だ。
4精霊の光が旋風神カイを包んだ。すると、赤い巨大なかまいたちが現れた。旋風神カイだ。
「よくぞ来た! 奇跡のドラゴン、サラよ。お前に私の力を授けよう。そして、聖魔導、聖バゾス卿よ、新たな聖魔導を授けよう」
サラとバズの体は水色の光に包まれた。サラは力強く羽ばたき、巨大な炎の竜巻を起こす「レッドツイスター」を覚えた。
バズは見えない刀で素早く切り裂く「エアスラッシャー」を覚えた。
「選ばれし5人の魔獣達よ。世界はかつてない危機に陥っている。誰にでも叶えたい夢はある。そのためには、それなりの努力が必要だ。だが、それでもなれない場合がある。レイが教員になれなかったのはまさにそれだ。だが、そのために神龍教の力を借りて教員になることができた。彼は努力をせずしてこうなった。こんなことがあってはならない。努力なくして栄光なしなのだ。努力せずに夢が叶ったら人生は面白くないと思う。努力して、夢を叶えるこそ人生は面白い。レイはそれがわかっていない」
サラはレイのことを考えた。努力せずして夢を叶えることができたなら、人生面白くないだろう。努力してこそ人生は面白い。自分は今まで教員になるために色んなことをしてきた。勉強に、家庭教師に、教育実習。それによって、自分は成長することができた。今、夢を叶えられるほどの力を持っているのは、今までの努力のおかげだ。
旋風神カイの後ろには魔法陣がある。その魔法陣は青白く輝いている。これに乗れば入口に戻れるだろう。
5人は魔法陣に乗った。すると、周りがまばゆい光に包まれた。5人はどこかにワープした。
光が収まると、そこは灯台の入り口だ。もう夕方だ。この時間も入口の辺りには誰もいない。静まり返っている。
「さぁ、早く行かないと!」
4人はドラゴンに変身したサラの背中に乗った。5人はまぶしい西日を浴びて、エムロックタウンに向かった。
5人は空からキュラータビレッジを見ていた。夕方になっても多くの人がいた。みんな空襲を逃れた人々だ。彼らは空襲によって夢も希望も失った。どうしてこんなことにならなければならないのか。全ては神龍教のせいだ。こんなこと許せない。王神龍を封印して世界を救わねば。そして、彼らに夢と希望を与えねば。
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