第11話 それぞれの新たな旅へ…
真一がホテルの自室から下りてきて、ロビーに到着した。
由貴「しんちゃん」
真一「由貴ちゃん」
由貴が真一に悟とカナを紹介する。
由貴「しんちゃん、こちらが私の彼氏の悟」
悟「はじめまして、川嶋悟です」
真一「堀川真一と申します」
悟「この度は、由貴が大変ご迷惑をおかけしました。申し訳ございませんでした」
真一「いえいえこちらこそ、お世話になりました」
由貴「しんちゃん、こちらが私の幼なじみのカナ」
カナ「西村カナです。由貴がお世話になりました」
真一「堀川真一です。こちらこそ、お世話になりました」
悟「見ず知らずの由貴を見守っていただいて、大変感謝しております。この度はありがとうございました」
真一「いえいえ、こちらこそ。事情をうかがいまして、『ちょっとこれはただ事ではないかもしれん』と思ったので、まぁ暇なオレにとっては旅の道中でも身が引き締まって、大変ありがたかったです。自分が羽目をはずすこともなかったので…。旅の道中では、由貴ちゃんはあなた方の事を真剣に悩んでおられました。それでもこうして東京に戻られて、あなた方とちゃんと向き合って話し合われた。良かったです」
悟「なんとお礼を言っていいのか…」
カナ「本当にそうです。私からもお礼を申し上げます。ありがとうございました」
真一「いえいえ、こちらも由貴ちゃんに今日の宿泊場所も確保していただいて、なんとお礼を言ったらよいか…」
由貴「それは気にしないで、しんちゃん。私は仙台から新幹線に乗ったところから始まった。青森、函館、登別、小樽、幸福駅、帯広、浦河、富良野、美瑛、札幌…、どこに行っても新鮮だった。悟とカナのことも考えながら旅してた。しんちゃんにも相談した。一人だったら、今ここにいないと思う。だから、私はしんちゃんに助けてもらったの。悟、私の気持ちもわかってほしい…」
悟「あぁ…。いい人と旅ができて良かったな」
由貴「しんちゃん、今日は東京でゆっくりしてね」
悟「堀川さん、今夜、食事ご一緒にどうですか?」
真一「ありがとうございます。今日はこうして3人が仲直りされたんですから…。それに、貴方と由貴ちゃん、色々と話したいこともあるでしょうし…。お気持ちだけで結構です。ありがとうございます」
由貴「しんちゃん、明日帰るよね」
真一「うん、帰ろうと思うけど、ちょっと寄り道しながら帰ることにするわ」
由貴「まだ旅続けるの?」
真一「由貴ちゃんが悟さんとこうやって仲直りができたのを見たら、また新たな旅に出たくなってなぁ…」
悟「今度はどちらへ行かれるんですか?」
真一「決めてません。行き当たりばったりですから…(笑)」
カナ「いいですね、旅」
由貴「だから、柴又に行ったんだね」
真一「オレの『旅のルーツ』やし、オレの彼女は『旅』やから、また明日からデートなんや(笑)」
カナ「旅が彼女…」
悟「本当に旅が好きなんですね…」
真一「けど、こんな人間になったらあきません。ちゃんと就職して家庭を築かないと…。オレはその悪い例ですから…。じゃあ、少し部屋で休みます。由貴ちゃん、悟さん、お幸せに…」
悟「ありがとうございます」
由貴「しんちゃん、ありがとう。さようなら」
カナ「ありがとうございました。お気をつけて…」
真一「失礼します」
真一は自室へ戻っていった。
由貴「しんちゃん、いい人でしょ?」
悟「あぁ…」
カナ「恋はしないんだね、堀川さん」
由貴「昔、遠距離恋愛したことがあるって言ってた。でも別れたそうよ」
カナ「そうなんだ…」
由貴「カナ、しんちゃんに一目惚れ?」
カナ「ち、違うわよ…、からかわないで❗」
由貴と悟が微笑んだ。
真一は自室の窓から東京の景色を眺めていた。
翌日、由貴は悟とデートする姿があった。旅行会社に行き、九州旅行のリベンジをする為、旅館選びから始めた。
カナは、真一の話を聞いて刺激を受けたのか、一人旅の計画を始めた。カナはこれまで由貴や友達と旅行には行っていたが、一人旅はしたことがなかった。『女の一人旅はどうか?』と思っていたが、真一の話を聞いて、何となく行きたくなったのだった。カナは京都、大阪、神戸を旅しようと計画していた。
そして真一は、ホテルをチェックアウトして、東京の街を一日中歩いた。歩きながら、どのルートで旅をしながら帰ろうか考えていた。当初は新幹線で帰る予定だったが、由貴と悟、それにカナと話していて、また旅に出たくなったのだった。結局、この日も東京で泊まることにした。
翌日、朝から東京駅から電車に乗る真一の姿があった。東海道線のホームから電車に乗り、1日かけて京都まで乗ることにした。急ぐこともなくあてもなく、のんびりした電車の旅。鎌倉、熱海、静岡、豊橋にそれぞれ立ち寄り、結局この日も京都まで戻れなかった。真一は豊橋でビジネスホテルに泊まり、翌日、京都まで戻って、南町に帰っていった。
予定よりも4日程遅れての帰宅だった。
真一は、その後ここまでのんびりした旅はしていない。あっても1泊、または2泊で行く旅だった。あとは就職活動の傍らでアルバイトや競馬場で競馬観戦…と、このときしかできないことをやっていた。
真一は会社を辞めて400日が経った頃、新しい就職先が見つかった。自宅近くの会社に就職し、倉庫管理業務に務めるのだった。
そして真一は、今でもテレビ等で石川さゆりの『津軽海峡冬景色』の歌を聞くと、初めて北海道へ旅したことを思い出すのだった。
(完)
不器用な男~旅情編②『津軽海峡もうすぐ冬景色』 まいど茂 @shinchan17
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます