第40話 采配の行方


(落ち着け。大丈夫だ――俺には、


 すぐさま気持ちを落ち着かせた皇成は、その後、状況を確認しつつ、矢印様に問いかけた。


(矢印さま、矢印さま──あの拳銃は、ホンモノ? それとも、ニセモノ?)


 すると、皇成の目の前に、また、いつものプレートが現れた。


 《ホンモノ》と書かれた赤いプレートと、

 《ニセモノ》と書かれた青いプレート。


 そして、その真ん中には《矢印》があり、それはすぐさま、プレートの方をさした。


(ニセモノ……!)


 とりあえず、強盗がもつ拳銃が、なのはわかった。そして、次に聞いた質問から、あれが、ただのレプリカで、弾が出ないこともわかった。


 つまり、あの拳銃に──殺傷能力はない。


 するとそれが分かった皇成は、次々と、矢印さまに確認していく。


『拳銃の他に、凶器になるものを、もっているか、いないか?』


『店員は、警察を呼べたか、どうか?』


 そして


『このを実行したあと、怪我人が出るか、出ないか?』


 ──など。


 すると、淡々と矢印さまに確認を終えた皇成は、その後すぐさま、四月一日わたぬきに小声で話しかけた。


「四月一日くん……顔は向けずに、話だけ聞いて」

「え?」

「今から、俺があの男を引き付けるから、そのスキに警察に連絡して」

「え? 引きつけるって……何言ってるんですか、拳銃を持ってるんですよ」


 コソコソ話をする中、強盗は、今も声を荒らげていた。


 四月一日の言い分は、わかる。他の人間には、あれが本物か偽物かなんて、きっと区別がつかない。


 だけど、このままでは、と矢印さまが采配した。


 それも、あの──が。


「ここは、じっとしていた方がいいですよ。下手に動くと犯人を逆撫でします」


 だが、四月一日わたぬきは、そう言って、皇成を引き止めてきた。確かに、四月一日の言う通り。普通だったら、ここは動かず、強盗が立ち去るのを静かに待つべきだ。


 だけど、ここで、女の子が怪我をする。どういう経緯で怪我をするかは分からない。矢印様は、未来を見せてくれるわけではないから。


 だけど、どの道、女の子に怪我はさせたくない!


「おらァァ! 早くしろォ!」

「ひぃ!? す、すみません!!」


 強盗がまた、店員を怒鳴りつけた。それも、拳銃を親子に向けて『早くしないと、打つぞ』と脅している。


 怒り狂ったように鬼の形相を浮かべる強盗は、正直に言うと怖い。体格だって、華奢な皇成とは比べ物にならない。


 とはいえ、今はちまちま考えてる場合じゃない!


「四月一日くん、頼むよ」

「え、ちょ……!」


 瞬間、皇成が動く。有無を言わさずそれ決行すれば、皇成は、レジ前でくずぶっている、強盗めがけて思いっきり体当たりをした。


「うわッ!?」


 すると、強盗は、そのまま床に倒れ込んだ。馬乗りになり、必死に強盗を押さえ込む。


 だが、その瞬間、強盗は、皇成の頭に拳銃を突きつけてきた。それを見て、客や店員たちから、悲鳴があがる。


 無理もない。学生が銃殺される瞬間なんて、トラウマものだ!


 だが、皇成は臆することなく、その拳銃を掴むと、男と揉み合いながらも、必死にその拳銃それを奪い取った。


(やった……!)


 男の手から拳銃がなくなる。

 だけど、まだ安心は出来ない。


 とわかっていても、この強盗を取り押さえないことには、終わらないから。


「矢神先輩!!」


 だが、その時、突如、四月一日わたぬきが叫んだ!


 すると、男はポケットからを取り出していて、そして、そのナイフは、容赦なく皇成に向かっていく。


 刺される──そう誰もが確信して、二度目の悲鳴があがる。


「ぐああぁぁぁぁ!?」


 だが、その直後、強盗もまた悲鳴をあげていた。いや、悲鳴と言うよりは、呻き声に近い。


 皇成が刺される直前、強盗のナイフは、によって、弾き飛ばされていた。


 そして、その後、皇成を押しのけ、逃げようとした強盗を、その誰かは、あっさり食い止めた。


 まるで、空手の有段者のごとく、見事に決まった一本背負い!


 そして、その後、強盗はあっさり気を失って、その誰かは、スッと皇成の方を見つめてきた。


「矢神。テメー、なんて無茶しやがるんだ」


 そう言って、睨みつけてきたのは、あの鮫島さめじま 優一郎ゆういちろうだった。



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