嘘みたいだな

 私、ポメリア、カッセル、アリスリスの四人になった私達のパーティは、とにかく王国軍と合流するべく、改めて西を目指すことにした。軍に合流できれば、私とポメリアは青菫あおすみれ騎士団に復帰できる手立ても見付かると思う。

 あの時、ドラゴンのブレスは封じることができたからきっとみんな無事だ。ドゥケもリデムもいるから大丈夫。

 カッセルとアリスリスについては、もう軍に戻る必要はないと思う。どうせもう、戦死したと思われてるんだから、そのまま故郷とかに帰ったって、誰も気付かないよ。たぶん。

 私は自ら志願した騎士だから、最後まで戦う。実際に死にかけてもその気持ちは変わらなかった。私の中でそれはもう確固たる信念になってるんだ。私は騎士として王国と民のために戦うんだ。

 そして、もし、魔王軍を倒すことができて平和になったら、その時にはカッセルに会いに行ってもいいかなと思う。そういう人生もありだよね。

 とにかく人がいるところをまず目指そう。そこでカッセルとアリスリスとは別れることになる。私達は軍に合流し、二人は勇者をやめるためにね。

 水と食料の両方を確保する目的もあって、川を見付けてそれに沿って歩く。ちょうど東西に流れるそれなりに大きな川だったから、川沿いには人が暮らしてる場所もあるはず。

 川で水を汲んで火を起こしそれを沸かし、木の枝で槍を作って魚を採る。こんな時でもなければまるでキャンプで遊んでるようでさえある。家族で。

 その場合は、カッセルと私が両親で、ポメリアとアリスリスが子供ってことになるのかな。

 そんなことを思って、私は顔が熱くなるのを感じた。

「熱があるんですか?」

 カッセルに訊かれて、

「いえ、大丈夫です!」

 なんて慌ててしまう。

 キスを交わして抱き合ったっていうのに彼は控えめで、付き合ってるとなれば途端に女性を召使いのように使う男もいるのにそういうのが全然なかった。それがまた素敵だ。

 アリスリスも、最初は何だか身構えてる感じがあったけど、しばらくしたら普通に子供っぽい感じに戻ってきた。

「ポメリア! 魚をこっちに追い立てて!」

 とか言って、遊ぶみたいにして魚を採ってたりする。

 それがまたカワイイ。

 鎧もしっかり身に付けてたのは最初の一日だけで、次の日からはカッセルが預かってくれてた。

 だけど、本当に、魔王軍と戦争してるなんて嘘みたいだな……

 これが現実で、戦いの方が悪い夢だったらいいのに。なんてことも頭によぎってしまう。

 ああ、でもダメだダメだ! 今もきっと仲間たちは戦ってる。私とポメリアは早く復帰しないといけないんだ。


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