終わってみれば
魔王軍の指揮官らしき牛鬼を、下から上へと剣を奔らせるようにして切りかかったドゥケを、まるで巨大な岩そのものに持ち手を付けただけのような棍棒が打ち下ろすように狙った。
ガイイィィンッ!って音を立てて、オーガの戦斧すら切り裂いたドゥケの剣が打ち返される。
「え…っ!?」
私は、彼の剣が打ち負けるところを初めて見た。でも、ドゥケはまったく慌てた様子もなく弾かれた剣の勢いを利用して体を回転させ、再び棍棒を振り上げようとする牛鬼を今度は上から切りつけた。
牛鬼はそれを私のウエストよりも太そうな角で受け止める。でも、受け止められたと見えた瞬間、角がボキリと折れるのが見えた。
「遅いっっ!!」
振り上げられた棍棒を躱しつつその下に潜り込み、再び棍棒が振り下ろされる前に、ドゥケが牛鬼の体に飛び込むように剣を突き立てたのだった。
「ぐおおおおおおっっっ!!!」
苦悶の絶叫を上げ、握っていた棍棒を落とし、牛鬼の体が後ろへと地響きを立てそうな勢いで倒れた。ドゥケの勝ちだ。
これまでに比べれば手こずったようにも見えたけど、終わってみればやっぱり圧勝だった気がする。
統率なんか取れてなさそうにも見える魔王軍だけど、やっぱり指揮者を失うと明らかに動きが悪くなる。連携が取れてないんだ。それぞれが勝手に動き始めて、味方同士でぶつかったりもする。どうやら指揮者に当たる魔物の感覚を使って統率を取ってるらしい。だからそれが失われると途端に烏合の衆になるんだ。
しかも一体一体は元々そんなに強力な訳でもない雑魚モンスターだから、武器を手にして心構えさえしっかりしていれば普通の人間だって恐れるほどのものじゃない。さすがにこの数だと大変だけどね。
「よし、一気に押し切るぞ!」
ライアーネ様の掛け声に私達も「応!!」と応えて、次々と魔物を討ち倒していった。私も、一体二体を倒して興奮してたのが嘘みたいに次々と魔物を倒していく。体が勝手に動く感じかもしれない。自分が戦場にすっかり慣れたのを感じてた。
『私は、王国を守る騎士だ…!』
自分が王国を守っているんだっていう実感もある気がする。
ドゥケはそれこそ私達とは次元が違うにしても、私達も強いんだ。力を持つ私達がこうして戦うんだっていうのは当たり前のことだって自然に思えた。
やがて散り散りになって逃げていく魔物達を見送って、皆で、
「うおおおおおおおーっっ!!」
ってカチドキを上げてたんだ。
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