悔しいけど
ドゥケが討ち漏らした魔物を、私達は迎え討った。
『ドゥケに負けていられない!』
私は自分にそう言い聞かせて襲い掛かってくる巨大な蜂のような魔物に剣を突き立てる。最初はこれまでと勝手が違う相手に戸惑ったけど、冷静になって迎え討てば、蜂と同じように尻の先の針で攻撃してくるだけなので、動きが単純でむしろ読みやすかった。空を飛んで少しばかり素早いだけだ。針でこちらを狙ってくるところを逆に突いてやればいい。
みんなもそれに気付いて、危うげなく次々倒していく。
だけど、ドゥケの方はさらに次元が違ってた。馬を降りて魔王軍の真っただ中に走り込み、まるで独楽のように体を回転させてスケルトンもゾンビも薙ぎ払っていく。
四方から槍を突き出されても宙に飛び上がってそれを躱し、宙にいるところにさらに槍を突き出されてもそれすら剣で薙ぎ払って寄せ付けない。スケルトン兵が構えた槍の上に降り立ちそれを走り、ボールを蹴るようにしてその頭を蹴り飛ばした。
何をどうすればそんな真似ができるのか、見当もつかない。悔しいけど、ドゥケの力は本物だと改めて思い知らされる気もした。
しかしそれに見惚れてばかりもいられない。私達も、互いに死角を補い合い、隙を補い合い、誰も見殺しにせず誰も捨て駒にせず、戦った。
そうしているうちに、私達、
私達は、団員同士でいがみ合ったりせずに、それぞれを大切にし、信頼し、見捨てないからこうやって連携できるんだ。先輩風を吹かせて新人をいびったりして反感を招かないから、助け合うことができるんだ。
『こいつは死んだって構わない』なんて思える団員がいないから…!
「無理はしないで! お互いに頼るの! 自分の弱いところ、苦手なところは他の団員に任せるの! その代わり、自分が得意なところは徹底的に活かしなさい!」
いつの間にかライアーネ様が私の背中にいて、まるで訓練でもしてるみたいに私に声を掛けてくださってた。だから私もそれに応えようと力を振り絞った。
『負けない! 負けない! 私の視界に入った奴は見逃さない! そして私の死角に入った敵はライアーネ様が、仲間が倒してくれる!』
そんな私達とは、ドゥケの戦い方はまるで違う。彼は体中に目がついてるみたいにまったく死角というものを感じさせない反応で敵の攻撃を躱しながら自分の攻撃を当てていく。
『強い…! 悔しいけど本当に強い……!』
これまでは正直自分のことだけで手一杯で必死になりすぎて、彼の戦いぶりをちゃんと見てなかった、見えてなかった気がする。でも私も戦いに慣れたのか、そういうことが見えてきたんだ。
凄まじい勢いで彼が体を回転させたかと思うと、その周りの魔物が一斉になぎ倒された。それと同時に指揮官と思しき牛鬼に迫り、ドゥケは下から上へと剣を跳ね上げたのだった。
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