野焼き




 くもれやくもれ

 おどれやおどれ

 ときめけやときめけ


 なまりよ宙へと駆け上がれ

 べにばなよ空へと舞い上がれ

 すみよ天へと祈りを捧げよ

 



 

 灰が馬や牛の飼料となる草の成長を促し、わらびやぜんまいなどの発育を助ける肥料となる。

 春先、晴天で風のない日に火を放って枯草を焼き払う、野焼き。


 春野の風物詩。

 景観と土興しと、感謝とを伝来させるべく。


 巫女が舞う。

 地域の者が舞う。

 



 くゆれやくゆれ

 くるえやくるえ

 さかえやさかえ





「美しい菜の花を咲かせたまへ」


 煙一色だった。

 炎が交わった。

 今は炭だけになった大地。


 ここから咲き乱れるのは、菜の花。

 かぼちゃとマヨネーズと胡椒を混ぜ合わせた、甘さと辛さがある菜の花サラダが大好物なのだ。

 だから今年も。


「美味しい菜の花を咲かせたまへ!」


 渾身の叫びに、春雷が落ちたのは、僥倖と捉えるべきだろう。

 何と言っても雷は、野焼き同様に大地に活力を与える。


「おまえはなにを勝手に莫迦な事を言っとるかあ!」

「まだまだまーだ花より団子じゃー!」

「っせめてさっさと花と団子にせんかあー!」

「善処しまーす!」


 ただし、沈静化へときちんと図るべし。







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