秋の陽気
冷たく乾いた季節に入る半歩手前。
珍しく湿度が六十パーセントある本日。
緑、黄、紅、橙に染まります楓の木の下。
包まれますのは、ぽかぽか陽気だけに非ず。
微動だにすれば、カサカサ枯葉の動く音。
飛び跳ねたい衝動をこらえてましては。
頬を掠める微風にまゆじりを下げて。
あー、きもちいいいなあ。
意図して出した感想は。
意図した以上の音量を持って。
なにがおかしいのか、腹の底から笑いが噴出。
あーきもちいいなあ!
「楽しいの?」
「うん」
呆れた顔はけれど、冷ややかではなく温かいもの。
「やろうやろうと思って、いつしかこんな年になってました」
「それはそれは。念願叶ってようございましたね」
「ええええ、それはもう」
澄まし顔で見返して、次いで、匂いに釣られるように枯れ葉布団から上半身を起こした。
カサカサと、軽快な音が心身を軽くする、愉快にさせる。
「自宅?スーパー?」
「焼き芋屋さん」
「お、珍しい」
「早く立ち上がりなさい」
「んー。離れがたい」
紙袋から取り出し、焦げ目のある焼き芋にかぶりつく姿を視界に入れながら、まだ渋るも。
さすがに四個目を取り出し、食べる姿を見せられれば、立ち上がざるを得まい。
カサカサと軽快な音を背中で受けながら、来年は枯れ葉をもっといっぱい集めて、少し高いところから飛び込んでみようと決意した。
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