烏天狗を育てる事になった人の話




 木枯らしが吹く季節になった。

 色とりどりの葉が空と大地を飾り、目を楽しませる。

 黄、橙、赤、茶、紫、黒。

 黒?


 あれ。黒の葉っぱて珍しい、よな。

 珍しいっていうか、今まで見た事がない。

 ………

 いや、鳥の羽だろ。

 しかし、矯めつ眇めつするも、葉っぱにしか見えない。

 羽だろうが、葉っぱだろうが、どっちでもいいと思いつつも、やはりどちらか気になる。

 どーしても、気になる。

 しょーもないってわかってるんだけど。

 どっちか、もしくは、どっちでもないのか知りたいので。


 ではちょっと手に取ってみましょうか。












 と、安易に手に取ってはダメ。

 毒が付いているかもしれないし、もしかしたら、動物のフンだったのかもしれない。

 肉体的、ないし、精神的に、多大なるダメージを負う可能性があったのだ。

 どっかの専門家も言ってただろう。

 何かをする際には、ひと呼吸置いてからにしろと。

 何かをする際って、ご飯食べる前だけど、まあ、今は置いといて。

 突発的に行動したら、やっぱ、碌な事にならない可能性が高まるんだよ。

 幸い、毒でもなければ、フンでもなかったんだけどさ。

 そして、葉っぱでもなければ、鳥の羽でもなかった。

 枯葉の見た目を裏切るつるつるの感触の葉っぱに小枝の足がつき、その足でせっせと動き、どこから出しているのか不明な鳴き声を出す、未知なる存在でした。



「はる」

「ああもう、なんだよ」

「は~る~」

「ああ、ばか。飛ばされるな」


 

 これが母性?父性?

 魔法か魔術によって引き出されたのか、生み出されたのか。

 手に取った瞬間、小枝の足が出現すると同時に、突如として噴出した庇護欲。

 何故こんな得体のしれないものを、との疑念と常に競り合うも、庇護欲が僅かに上回る。

 風に飛ばされないように、掌に乗せて家へと帰る。


 のちに、この得体のしれない存在が烏天狗だと知るのだが、まだまだまだまだ、遠い未来の話である。

 どれくらい、遠い未来かって?

 ざっと、五十年は経つな。






「地獄なら、私がなんとか口添えして罪を軽くするなりできたんだがな。天国じゃ、やる事ないし。世話になった礼ができないな………よし。私の妖力を注いで、半妖怪になって、まだまだ生きるか?」

「御免被る」







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