第77話考察

 さて、叔父上が来た日は、久々ということもあり、野暮な話はせずに盛り上がった。


 そして翌日に、皆を呼んで話を聞くことにした。


「では、基本的には俺が話を聞くので、皆は黙って聞いてて欲しい。いいかな?」


 俺は、皆を見て確認した。


「さて、どこから話したもんか……」


「まずは、国王様から要請を受けたんですよね?」


「ああ、そうだ。さすがの俺も、国の危機となっては動かないわけにもいかん。ただ、それが裏目にでるとはな……俺がいれば、シャロンの奴を殺せていたのだがな……」


「……ということは、やはりシャロンの動きと、アースドラゴンの動きは繋がっているように思えますね。明らかに、タイミングが良すぎますから」


「ああ、そうだろうな。まあ、俺も知ってはいたが、宰相が強いことが誤算だったろうな」


「なるほど、叔父上は知っていたのですね。そして、希少な上級回復魔法の使い手の俺がいない……。そもそもエデンに行くキッカケは、ウィンドルとの予期せぬ戦争……。つまり、今回の件はウィンドルが絡んでいる?」


「そういう難しい話は、俺にはわからん。後で、考えてくれ。とりあえず、俺は国境へ向かった」


「わかりました、後にします。それで、どうでしたか?」


「まあ、酷い有様だったさ。逃げ惑う人々、響き渡るする悲鳴、飛び散る血、まさしく地獄絵図とはあのことだろうな」


 散々、色々な物を見てきた叔父上が言うのだから、相当なものだったんだな……。


「そんな酷い状態でしたか……。でも、叔父上がここに来たってことは……」


「ああ、大分片付いたのでな。ただ、全部は無理だった。俺も、いつまでもいるわけにはいかんし。という訳で、ここで世話になろうかと思ってな。ここなら、いざとなればいける距離だ」


「なるほど、了解です。それでは好きなだけいてください。俺も、稽古相手が欲しかったところですし」


「おう、サンキュー。世話になるな。よし!アースドラゴンを一撃で倒せるように、鍛えてやるか!」


 やっぱ稽古やめておこうかな……いや!覚悟を決めろ!

 いざとなってからでは遅いからな……。


「……いいでしょう。よろしくお願いします」


「お!珍しいな。……昨日の闘いといい、強くなったよな?何があった?」


「やはり大きいのは、エデンの王との闘いですかね。さすがは、特級クラスでしたよ」


「ほう、そいつは一度殺ってみたいものだ」


 今この人、殺って意味で言わなかった?

 二人が闘ったら、洒落にならないな……死人がでても不思議じゃない。

 何故なら、二人とも戦闘狂だからだ。

 ……もしかして……その場合……止めるの俺?……俺が死にそうだな。


「はは……その場合は立ち会います。死人がでそうなので。あとは、最近魔力量がどんとん上がっているんですよね」


「それは、ミストルティンを持ったことや、コントロールが上手くなったとかではないのか?」


「それらも、あるとは思います。でも、それ以上に増えていると感じています」


「……なるほど。まあ、それに関しては俺にはわからん。だが、良いことじゃないのか?」


「うーん、なんというか……自分の力じゃないような……いや、いいです。自分でも、よくわからないので」


「そうか……まあ、訓練がてら見てみるとしよう。では、こんなものでいいか?」


「ええ。では、叔父上は自由にして結構です。ただ、問題だけは起こさないでくださいね?」


「おう!わかったぜ!では、飲みに行ってくる!フゥーー!!」


 テンション高!

 まあ、叔父上にしてはじっとしてたほうだな。

 というか、まだ午前中なのだが?





 そしてその後、さっきのことについて話し合うことにした。


「やはり……エデンに攻め込む、デュラン国に攻め込む、バルザックに攻め込む。それらのことは、ウィンドルの仕業とみていいだろうな。これだけのことが、偶然にも同時に起きるとは考えられない」


「でも、そうするとセントアレイとウィンドルが組んだってことですかねー?? あとトライデントがどうなっているかですねー」


「そこは疑問だよな……。トライデントか、ゼノスは無事に帰れたかな?」


「……ゼノス……ああ、あの人ですか」


「ん?覚えてないのか?」


「いや、覚えていますよ。でも、会ったのは二回くらいですからねー。団長は、そんなに会っていたんですか?」


「………なに?そうだったか?アテナとイージスは?」


「オイラも、エデンに行く時が二回目とかかなぁ」


「アタイも、皆と同じだよ」


 ……言われてみれば、俺も他の人より多いが、そこまで会っていたわけではない。

 もう、すっかり心を許してしまっていたからな……。

 それで、何回も会ったような錯覚になっていたのかもな。


「うーん、まあいいか。考えても仕方ない」


「あとは、シャロンがどこの手先かということですねー」


「え?それはウィンドルだろ?何を言っている?」


「え?そうなんですか?何か証拠が?」


 あれ?なんか当たり前にそう思ったのだが……どういうことだ?


「……すまん、勘違いだったようだ」


「はぁ、そうですか。今日は、もうやめましょう。団長もお疲れなんですよー」


「そうだな、そうするか。おい、ホムラ何をしている?」


「え?く、くっついていますわ。だ、だってシノブとばかり話して、ワタクシだって構って欲しいですわ!」


「はい、王子様達ー。アタイと一緒に部屋からでるぞー。ほら!イージス!いくぞ!」


「え?え?なんで?待ってよ、アテナさん!」


 俺とシノブとホムラを残し、皆部屋を出て行った。


 アテナ、空気が読める子!

 イージス、空気が読めない子!

 やっぱり、相性いいんじゃね?


「そんなこと言われてもな……お前、難しい話とかわからないだろう?」


「……それは、そうですけど。でも、それとこれとは別ですわ!そ、その、シノブとはキスをしたそうじゃありませんか!」


 俺はどういうことだ?と思い、シノブを見た。

 すると、既にシノブはいなかった。

 あれ?あいつ逃げたな……。

 というか、これする流れなのか?


「いや、まあ、そうだが……公爵令嬢がいいのか?」


「お祖父様に言われましたわ!正妻として、シノブという女子おなごに負けてはならんぞ!と」


 おい!ジジイ!孫娘に何言ってんの!?馬鹿なの!?


 すると、ホムラは目を瞑る。

 これは……恥をかかせるわけにはいかないな。


 俺は、優しくキスをする。


 俺が顔を離すと、目の前には真っ赤になったホムラがいた。


「おい、顔真っ赤だぞ?」


「うるさいですわ!仕方ないじゃない!初めてですもの!責任とってくださいね!」


 そう言い残し、部屋を出て行った。


 おいおい、キスでこれでは……できるのか?


「いやー責任とらなきゃですねー」


「うお!?シノブ!?……お前見てたな?」


「はい。一瞬の隙をつき、壁の角の天井にいましたよー」


「おい、一流の技術を無駄遣いするんじゃねえ」


「えへへ、こういう時のためですよー」


 ちなみにホムラは、その後も目も合わせなかった。


 おい、これ大丈夫か?

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