第73話幕間

 ここは、どこだ?


 知らない場所だな……。


 ん?誰かいる?


 あれは……シャロン!今までどこに!?


 ん!おかしい……身体が動かない……。


 それに、シャロンの目の前にいるのは誰だ?

 

 全身に黒いもやがかかり、姿が見えない……。


 すると、会話が聞こえてくる。


「シャロンよ、目覚めたか」


「は!ウィンドル様!」


「どうやら、転生の術は上手くいったようだな」

 

「ええ。ですが、デュラン国で生き残ったのは私だけでした……」


「まあ、いい。国王こそ殺せなかったが、第1王子と第2王子は殺せたのだから」


「申し訳ございません!まさか、宰相があんなに強いとは……」


「よい、許す。まだ、いくつかの駒は残っているしな」


「それで、記憶が戻ったことで気になることが……」


「なんだ?言ってみろ」


「は!デュラン国に、我が国秘伝の技である魔闘術を使う者がいます」

 

「なんだと!?確かだろうな!?」


「ええ、報告を受けています」


「あれは……直接戦闘が劣る我らの祖先が編み出した、魔導師用の奥義だぞ?普通の人間には、魔力が足りず使えないはず……」


「それが……シャロンーグラムの知識から推測します。かの者の母親は、とある滅んだ貴族の生き残りです。そして膨大な魔力を持ち、聖女と呼ばれていました」


「……なるほど。その滅んだ貴族が、統一王朝の血脈だったのではないかということか」


「おそらくですが……」


「ということは、我とは血が繋がっているということか……。ククク、いずれ目覚めるかもな……面白くなってきおったわ」


 俺の意識は、そこで途切れる。






「団長!団長!」


「ん?……シノブか。どうした?」


「どうしたは、こっちの台詞ですよ!疲れているのはわかってますけど、寝るならきちんと寝なくては、疲れはとれないですよ」


「ああ、わかっている。すまないな」


 どうやら、机に突っ伏して寝ていたらしい。

 それにしても、最近身体がおかしい……。

 時折、身体から魔力が溢れそうになる……。

 

 それにしても、なんか大事な夢を見たような……?

 今さっきまで、覚えていたのに……くそ!思い出せない!

 最近これも、多いんだよな……。

 自分が知らないところの、映像が流れるみたいな……。


「どうしたんですか?難しい顔して」


「いや、なんでもない。で、どうだ?街の様子は?」


「とりあえずは、落ち着いてきましたね。あれから、1ヶ月が経ちましたから……」


 そうか……。

 あの事件から、もうそんなに経ったか……。

 あの後、国王様から正式に伯爵に任命された。

 そして葬儀を済ませ、カロン様が王太子になられた。


 まず俺は領主になる勉強と、アロイスへの引き継ぎを行った。

 実家のことは、アロイスに任せることにした。

 母上のことも、任せてくれと言われたので、安心して行ける。


「あっという間に、過ぎたな……。で、どうした?なんか用があったんじゃないのか?」

 

「あ!そうでした!国王様がお呼びですよー」


「………早く言わんか!このボケー!」


「むー!私は言いましたよ!」


「知らんわ!寝てたっつーの!」


 俺らが言い合いをしていると、セバスが部屋に入ってきた。

 

「相変わらず、仲がよろしいようでなによりです」


「おい、セバス。笑いながら言うことじゃないから」


「ゴホン、失礼しました。馬車を用意したので、お乗りください」


「ありがとう。では、俺とシノブで行く」


 俺らは馬車に乗り、王城へ着く。


 そのまま真っ直ぐに、国王の私室に案内された。


 そこにはカロン様とホムラと、見知らぬ女性がいた。


「よく、来てくれた。まずは、座ってくれ」


 とりあえず、俺らはソファーに座る。


「ユウマ様ですね?初めまして、サユリーティルフォングと申します。よろしくお願いしますね」


 ティルフォング……公爵家か!つまり、カロン様の婚約者だな……。


「公爵令嬢様であられましたか。こちらこそ、初めまして。ユウマーミストル伯爵と申します」


「ちょっと、ユウマ?ワタクシも公爵令嬢ですけど、随分態度違いませんこと?」


「いいんだよ、お前はそれっぽくないし。この人はお淑やかで、それっぽいだろ」


「ちょっと!?どういう意味ですの!?この高貴なワタクシをつかまえて!」


 ホムラは、肩に掴みかかってくる。


「わかった!わかったから、揺らすな!」


「ふふふ、仲が良くて羨ましいですね」


「ええ、僕もそう思います」


「ゴホン、話が進まんからその辺りにしてくれ。カロン、ホムラ、サユリ。話は聞かせるから、黙っておれ。今からユウマと大事な話をするのでな」


 3人共、静かになる。


「うむ、ユウマ、シノブ殿。もう一度言うが、感謝する。其方らのおかげで、王家の血が途絶えなかった」


「それについては、もういいですよ。な、シノブ」


「ええ、散々言われましたから」


「いくら言っても足りんが……まあ、其方らが言うならやめておこう。さて、今日はユウマに頼みがあって呼んだのだ」


「……王族の血を引く者が集まっての、頼みですか……」


「すまないな、お主ばかりに……。だが、もう誰を信用していいかわからないのだ……」


 国王様は、相当お疲れのご様子だ。

 無理もない……目をかけていたシャロンや近衛に、裏切られたのだから……。

 俺は、覚悟を決めた。


「いえ、私にお任せを」


「そう言ってくれるか……。実は、ここにいる3人をお主に預けたいのだ」


「……一応、理由をお聞かせください」


「うむ……ここにいるのは、残された若き王族だ。継承権こそないが、ホムラもサユリも王家の血を引いている。そしてここにいる者が亡くなれば、我が国はお終いじゃ」


「……はい、そうなりますね」


「それでだ……王都では、最早誰を信用していいかわからないのだ。ずっと、一箇所に閉じ込めているわけにもいかんしな。それで、ユウマが治めるガーランドへ連れて行って欲しいのだ」


「……なるほど、シノブもいますしね」


「正直、それもある。だが、何よりお主を信頼しておる。これは、宰相とも一致した」


 そういえば、ガレス様がいないな?


「わかりました、責任を持ってお守り致します。ところで、ガレス様は?」


「彼奴は今、修行中だ。余程、悔しかったらしい。感覚を取り戻し、余を守ると息巻いておる」


「なるほど。では、国王様の護衛はガレス様が務めると」


「ふむ、そうなるな。という訳だ、3人ともよいな?」


「「「はい……」」」


「そう暗い顔をするでない。ことが済めば、帰ってこれるからのう」


「そういえば、叔父上はまだ国境に?」


「ああ、アースドラゴンを瞬殺できるのは彼奴しかおらん」


「……多分、俺でもいけますよ?」


 今は、魔力が溢れるくらいだからな。


「ほう、其方にしては珍しい。だが、それだけ力をつけたということか……。では、お主の所も国境が近いので、いざとなれば頼む」


「はい、お任せを」


 その後、俺とシノブは家に帰った。


「なんだか、大変なことになりましたねー」


「すまないな、お前の力を貸してくれ」


「えへへー、このシノブちゃんにお任せをー」


 さて、これからどうなるのかね。












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