第21話仲間達の相談

俺らはアロイスの部屋に入り、座る。


「で、どうしたんだ?あそこでは、言えないことだったのか?」


「へい……なるべく人に聞かれたくなかったもんで……」


アロイスにしては歯切れが悪いな……これは、覚悟して聞いた方がいいかも知れん。


「……シノブはいいのか?」


「まあ、仕方ねえっす。そいつは離れませんし、一応女子ですし」


「ん?どういうことだ?」


「実はですね……こんなお手紙をもらいまして……ちなみに、読んでもいいんで」


「ふんふん……何?……なるほど。準男爵家の女性から恋文とは……」


「へい……どうしていいやら。こんな見た目なんで、女性には縁のない俺です。ましてや、貴族のお嬢さんなんてどうしていいやら……」


アロイスは見た目山賊だからなぁ……中身は、気配りもできる男前なのだが。

だが、これは渡りに船かも知れん。


「お前は、この女性を知っているのか?」


「へい、知ってます。以前、絡まれていたのを助けた覚えがありやす」


「なるほど。アロイス、よくやった。で、お前はどうしたい?」


「……正直、よくわかんねえっす」


「はいはーい!シノブちゃんから質問です!この手紙はいつ来ましたか?」


「……1週間前くらいだと思うな」


「なら、とりあえずお茶でもしませんか?と手紙を返信したらいいんじゃないですか?だってその女性は返事もなくて不安なはずですよー?」


俺とアロイスは顔を見合わせて、同じことを思ったようだ。


「確かに!シノブの言う通りだな!……いや、しかしシノブにそういう気持ちがわかるとは……」


「シノブの言う通りだ!……でもシノブに言われると、釈然としないぜ」


「ちょっと!?どういう意味ですか!私だって、団長に恋する乙女ですよー」


「いや、お前は手紙を書くようなタイプじゃないから。そんな暇あったら、特攻かける奴だから」


「むー!……まあ、否定はできないですねー」


「では、今日にでも手紙を書きやす。で、団長の相談は?」


「……妹が、本気で剣の稽古をつけてくれって言うんだ……」


「はぁ?……つけてあげれば、いいのでは?」


「馬鹿野郎!つまり妹を痛めつけるということだぞ!俺は、叔父上からそういう訓練しか受けていない!つまりそういう稽古しか出来ないということだ!」


「あー……まあ、そうですね。団長」


「お!良い案があるのか!さすが俺の右腕!」


「いえ。手紙を書くんで、帰ってくだせえ。そんなわかりきったことを……。鍛えてやれば良いかと」


「何!?それで悩んでいるんじゃないか!それでも俺」


「はいはい、団長。帰りますよー」


「おい!シノブ!引っ張るな!まだ話は」


「はいはい、私が聞いてあげますからー」






全く薄情な奴だ。

俺が、真剣に悩んでいるというのに。


そして家に戻ると、玄関にイージスとアテナがいた。


「どうした?2人揃って」


「団長!オイラを家臣にしてくれ!!」


「……はい?」


「馬鹿野郎!順序があるだろうが!……はぁ、仕方ない。アタイが言うか。団長が当主になったから、戦争に出なければいけないということに気づいたのさ」


「……なるほど。しかし、ダメだ」


「団長!なんでですか!?」


「うちには、優秀な盾役のお前に払える金がない……」


「そんなのいらないです!オイラは団長がいなければ、とっくに死んでいました!」


「馬鹿野郎!お前は、故郷の兄弟の為に仕送りをしているのだろう?それは、どうする?」


「……でも、オイラ。どうしたら……」


「団長、この鈍足の頼み聞いてくんねえかな?こいつが、こんなに必死になることなんか滅多にないからよ」


「アテナ……しかしだな。現実問題として、金がないんだ」


「はいはーい!折衷案はいかがですかー?」


「ん?どういうことだ?シノブ」


「団長は、お金がないけど雇いたい。イージスさんはお金が必要だけど、団長を守りたい。とゆうことで、戦争の時だけ、臨時で雇えば良いんじゃないでしょうかー?で、お金入ったら正式に家臣にするとか」


なるほど……良い考えかも知れん。

確かに、イージスがいたら心強いしな。


「……わかった。イージス、聞いていたな?今の条件でいいなら許す」


「本当ですか!?団長を守れるならなんでもいいです!ありがとうございます!」


「おいおい、俺に礼はいらんさ。俺が助けられるのだから」


「アテナさん!シノブさん!ありがとうございます!おかげで、団長を守れます!」


「まあ、いいってことよ。やるからには、しっかりやんなよ!」


「イージスさん!2人で団長を守りましょう!ヨロシクです!」


どうやらシノブのおかげで、丸く収まったようだな……。


しかし……つくづく思うな。


俺は、仲間に恵まれていると。


俺も此奴らに見合うように、努力をしていかなくてはな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る