第297話 不死身

Side:フリードリヒ


「ぷはぁ! 酷い目に遭った。

まさか、一国の皇子である俺を躊躇なく射殺するとは……。

あいつ、国際情勢とか理解出来てるのかよ!

俺はトラファルガー帝国の皇子だぞ?

俺に危害を加えたら帝国が黙ってないぞ!」


 といっても、俺がクランド王を殺そうとして、タカトウを巻き添えにしたからなんだけどな。

しくじったわ。なんでクランド王とタカトウが一緒に出て来るんだよ。

俺が狙ったのはクランド王だけで、タカトウにまで射線が行ってしまったのは、銃の反動が思った以上に激しかったからだ。


 ああ、残機が2になってしまった。

これで後3回死んだら・・・・終わりだ。


 俺の転生チートは【黄泉がえり】だ。

残機の数だけ生き返る事ができる。

貴重な残機がこんなところで減ってしまうとは……。


 どうやら、俺の死体はそのままうち捨てられていたようだ。

幸いなことに、周囲には誰もいない。

このままこっそり隠れて、クランド王の隙を伺い襲撃の機会を待つことにしよう。

俺は額から流れた血を拭うと、ゆっくりと起き上がり、周囲を伺った。


 とりあえず、あそこの倉庫に集められて転がっているゴーレムを修理してみるか。

今の俺には武器がないからな。

このゴーレムを修理し配下に出来れば貴重な戦力となることだろう。

倉庫の中ならば、隠れるのにも都合が良い。


 この世界の連中は、同じ物が2つあって、壊れている場所が違う場合、片方から部品を移植すれば1つは修理出来るということすら知らない。

いや、クランド王だけは、それを知っているどころか、新たな部品を独自に製造して修理が出来るらしい。

あのメイド型ゴーレムなんか、既存のゴーレムに新しい機能を追加し、外観まで好きに弄った最新型だ。


 クランド王は、どうやら魔法のエキスパートのようだ。

あの魔法障壁、どんだけ硬いんだよ。

自動小銃の連射を簡単に弾きやがった。

それを詠唱無しに咄嗟に展開できる、それもタカトウの分までもだ。

クランド王は、その魔法を使って錬金術も使えるのだそうだ。

魔法文明との相性が良すぎる。

その結果、タカトウたちが使うことしか出来ない陸上戦艦を、新設計で新造出来るというのだ。

タカトウたちがクランド王と争わないようにしようと必死になる理由が良く判る。


 だが、そのクランド王さえ居なければ、この施設の最上級管理者は俺になるのだ。

なんとか隙を突いてクランド王を亡き者に出来れば、次席は俺なのだ。

やつの実績の全てを俺が引き継いで使ってやろう。

俺が死んだと思っている今こそ、奴の油断が最高潮となっていることだろう。

ゴーレムのシステムをリセットして、俺をマスターと認めさせれば、そのゴーレムにクランド王を殺させることも可能だ。


 クランド王とタカトウは、陸上戦艦の修理のためにドックへと向かったようだ。

そのため、こちらを監視する者など一人も居なかった。

動くチャンスだ。


 俺は壊れたゴーレムが運び込まれた倉庫に侵入した。

ほとんどのゴーレムが一撃で制御装置を破壊されている。

だが、同じ破壊であっても、その場所が違う。

制御装置そのものの破壊、制御装置からの各種信号回路の破壊、エネルギーを供給する伝導路の破壊、それぞれ違う壊し方でもゴーレムは動けなくなる。

つまり、これらの生きている部品を組み合わせればゴーレムは動くはずだ。

腕や脚が壊れているなんてのは、それこそ根元から外して動くパーツと付けかえれば良いだけだ。


 ほどなくして、ゴーレムを2体修理することが出来た。

さすがに外装の傷は直せないが、それは仕方がない。


「クラスA管理者フリードリヒの名において命じる。

起動せよ!」


 俺の命令で2体のゴーレムが再起動した。

そして、俺に向かって跪くと臣下の礼を取った。

思った通り、破壊され機能停止したゴーレムは、再起動時にマスター登録が必要なのだ。

いち早く、俺をマスター登録してしまえば、このゴーレムは俺の言う事しか聞かない。

このまま修理ゴーレムに紛れ、クランド王に接近し、後ろから攻撃させることも可能だろう。


「いや、さっきは焦ってしくじったのだ。

もう少しゴーレムを修理して数を増やしておこう」


 俺は黙々とゴーレムを修理するのだった。

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