第267話 魔宝石枯渇

 第13ドックでの新造艦の就役が滞って来た。

艦体が完成し機関や武装まで搭載しているのに、最後の最後で工事が止まっているのだ。

これは基幹部品である電脳のコアとなる魔宝石が入手困難だからだった。

第13ドックでは、龍脈から魔力を抽出し圧縮することで魔宝石を造っていた。

だが、その生産は遅々として進んでいないのだ。

今までの艦は、長年活動を止めていた第13ドックに備蓄されていた魔宝石で製造されていた。

それが今はその魔宝石製造待ちが発生するまでになってしまっていたのだ。


「艦載電脳の魔宝石って、どれぐらいの大きさなんだ?」


 俺が疑問を呟くと、素早く反応する人物がいた。セバスチャンだ。

彼は執事型ゴーレムなのだが、俺のためによく働いてくれる。

こうして疑問を呟くと、何処からともなく表れて答えてくれるのだ。


「人の頭大になります。

魔導機関や重力制御装置、魔導砲が拳大の魔宝石で、ゴーレムになると鶏の卵より小さいぐらいになります」


 俺がピンポン玉大と言っているのがゴーレムのコアに使っている魔宝石だ。

これを蒸気砲や重力加速砲に使っていた。

つまり、艦載用は桁外れにデカい。製造に時間がかかるわけだ。


 実はピンポン玉大の魔宝石は、俺が石から錬成することが出来る。

いや、他の大きさは作ってみたことが無いだけか。

必要とした魔宝石がピンポン玉大だっただけで、それよりも大きい魔宝石を作ろうともしていなかった。


「作ってみるか」


 魔法はイメージの産物だという。

今まで魔宝石はピンポン玉大だと思い込んでいたから作れなかっただけだ。

まず拳大で作ってみよう。

拳大の魔宝石は第13ドックでも、多少時間がかかるが製造出来ている。

俺もある程度簡単に製造可能だった。

となれば、人の頭大だって作れないわけがない。


 「いくぞ!」


 そう気合を入れて石を魔宝石に錬成する。

石といっても魔宝石になりそこなった特殊な石だ。

成分的には魔宝石に成り得る素材だった。


 魔力を込めることで、石が魔宝石に錬成されていく。

だが、真ん中までには魔力が通らない。

俺は、成功イメージを乗せて再度錬成をかける。


 4時間後、やっと人の頭大の魔宝石が完成していた。

MPはまだあるので、あと3個ぐらいは錬成しとくか。


「ああ、そうだ。

改造戦艦に使ったポイント11のサブ電脳はどんな大きさなの?」


「身長3mのオーガの頭ぐらいです」


 やはり改造戦艦にはオーバースペックだった。

体積でいったら艦載電脳の8倍ぐらいありそうだ。

あれの製造は大変そうだな。


 俺は残り3つの魔宝石も作りあげた。

16時間ぶっ続けなので、魔力が残っていても体力精神力がもたない。

これで陸上艦と海上艦が合計4艦就役できることだけが唯一の喜びだろう。

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