第227話 次なる脅威
『ご主人、ご主人、輸送船のところに変なのいる』
俺がバイゼン共和国が用意した冷蔵倉庫に潜水艦乗組員の遺体を出していると、タカオに残して来たプチが念話を送って来た。
生身の俺に連絡を取ろうとすると、艦載装備である魔導通信機が使えないため、プチを残して連絡役をしてもらっていた。
プチとは強い絆で繋がっているため念話が出来るのだ。
タカオはいま、輸送船の沈没地点に向かっていたところだった。
どうやら、その沈没地点で動きがあったようだ。
『わかった。すぐに戻る』
俺はそう心の中でプチに伝え、ゴードン司令にも事情を話した。
「タカオの方でトラブルだ。
おそらく敵だと思うが、沈められたこちらの輸送船に何かしているようだ。
では、私は戻るとする。アイ、ティア、行くぞ」
いつもは私なんて使わないのだが、国王らしくしてみました。
俺はそのままアイとティアを連れてタカオの後甲板にある転移魔法陣に帰還した。
俺が【転移】で消える一瞬、ゴードン司令が口をポカンと開けているのを目撃した。
よっぽど魔法が珍しいんだろうな。
「お帰りなさいませ」
プチが引っ張って来たのだろう、通信員が後甲板まで迎えに来ていた。
プチは俺の帰還が嬉しいのか尻尾をブンブン振っている。
「現状報告せよ!」
「はい、不明艦1が海中の輸送船に接近、何やら行っているようです」
なんとなく何をしているのか判ったぞ。
輸送船の何に用事があるといえば積み荷だろう。
いや、魔導機関があったか!
そういえばオーバーテクノロジーの塊だったわ。
「こちらは気付かれているのか?」
「いいえ、パッシブモードで監視中ですので、まだ気付かれてはおりません」
それなら、まだ焦る必要は無い。
艦橋まで戻って魔導レーダーを覗いてみるか。
◇
艦橋に戻ると俺は、パッシブレーダーの画面を見させてもらった。
「なるほど、輸送船の魔導機関の反応を阻害しているために見えたのか」
潜水艦は魔力をほとんど漏らしておらず、通常はパッシブモードではほとんど見ることが出来ない。
しかし、巨大な魔力反応を妨げることでその存在が露呈しているのだ。
「この深度では人は水中活動が出来るんだったか?」
「はぁ?」
「いや、忘れろ」
潜水艦という存在を知ったばかりの我が国の兵に、水中活動がどうのなんて知っているはずがないのだ。
さらに、俺にもわからない謎技術や魔法を駆使すれば、出来ないわけもなかった。
その詳しい方法は知らないが……。
「潜水艦は我が国の資産を強奪しているものと断定する。
左舷重力加速砲、斥力場フィールド用意」
俺は潜水艦をそのまま拿捕することにした。
「プチ、協力してくれ」
「わん(任せて)」
「斥力場フィールドで敵艦周辺の海水を除去。
プチと俺のレビテーションで浮かす!」
左舷舷側にある重力加速砲が海面に向く。
そしてその砲身の根元から斥力場フィールドが掃射される。
今回は潜水艦全体が露出するように範囲が広大だった。
この範囲は魔力を多く注入すれば可能であり、タカオの魔導機関ならば十分にその魔力を供給できた。
「斥力場フィールド発生、潜水艦の周りから海水を除去しました」
「よし、プチやるぞ。3、2、1、いま!」
俺とプチでレビテーションをかけ、潜水艦を浮上させた。
潜水艦は斥力場フィールドが海中に開けた空中をゆっくりと浮上しはじめた。
そしてタカオの後甲板の上に移動させるとゆっくりと降ろした。
潜水艦は、いくらスクリューを回しても空気中ではもう動けなかった。
「ついでだ。【収納】!」
俺は斥力場フィールドによって海底に見えていた輸送船をインベントリに仕舞い込んだ。
目で見える物はインベントリに収納できるのだ。
これでもう積み荷がどうこうとなる危険は去った。
「次はこの潜水艦の武装解除だが……」
魚雷は発射管に海水を入れ水圧で押し出す仕組みらしい。
海水が無くなったら撃つこともできないようだ。
ドーーーン!
突然潜水艦の艦首部分が吹き飛んだ。
丁度魚雷発射管の後部のようだ。
「危ね!」
俺が咄嗟に結界魔法を使わなかったら危なかった。
おそらく魚雷を意図的に爆発させて証拠隠滅を謀ったのだ。
「そこまでするとは……」
俺はこの乗組員たちにちょっと興味が涌いていた。
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