第23話 復興作業
「ここから外に出るにはどうしたらいい? 出口はあるのか?」
俺たちは倒れていた塔が立ち上がったため、遺跡の中に閉じ込められた形になっていた。
とりあえず、外に出ないことには復興作業が出来ない。
俺はシステムコンソールに出口の場所を尋ねた。
『
ただし、地面とは二階分の高低差がありますので、お気を付けください』
今後はそこを出入口にしないとならないようだ。
システムコンソールの情報によるとここは六階の高さになるからだ。
二階を梯子か何かで上り下りするのは面倒だな。
いっそ屋敷を塔の東側に移築して屋敷の二階から繋げるか。
ちょうど屋敷の西側が壊れているしな。
俺は今までの出入口、つまり俺が土魔法で開けてしまった穴を遺跡の壁と同じ構造材で塞いだ。
相変わらず魔力を食うが、それは他の物を作った時と比べてであり、俺の魔力量からしたらたいした量ではない。
だが、それでも魔力を食うことは間違いなく、この構造材がどんな謎物質なのか興味は尽きない。
魔導機関が起動したおかげで照明も煌々と照っているので、穴が無くとも室内は暗くはない。
それと、今は土で汚れているが、どうやら西側には窓があるらしい。
土が剥がれた所から微かに日の光が漏れている。
「これで良し。皆、
俺はエレベーターのフローティングボードに乗り、皆にも乗るように促す。
しかし、皆には得体のしれないものと思われたようで腰が引けている。
「わん」
プチが躊躇なく飛び乗る。
「何ですか? これは」
「危なくないのか?」
「怖いです」
「乗っても落ちないの?」
「ん……」
五者五様の反応がある。
「大丈夫だ。いざとなれば、俺とプチが
皆、恐る恐るフローティングボードに乗った。
「これで下に降りる。観測室へ」
俺のリクエストにフローティングボードが四階下へ降りていく。
あのエレベーターが下がる時に感じる
「「「キャー!」」」
「「いやーーー!!」」
フローティングボードが止まると目の前の扉が自動的に開いた。
六人と一匹は目の前の部屋――観測室に入る。
土で汚れた全面ガラスのバルコニーに外へとつながる扉があった。
扉の向こうはキャットウォークのようになっている。
「ちょっと待っていてくれ」
俺は皆をその場に待たせると【レビテーション】で浮かび地上へと降りた。
そして、その場の地面を均し、屋敷の広さに固めて基礎とした。
半壊した屋敷まで行くと、そのまま【レビテーション】をかけて屋敷を持ち上げ、新しい基礎の上に置いた。
後は生産の極の力で屋敷を修復し、屋敷の二階と観測室を直接繋いだ。
これで歩いて屋敷と塔を行き来できる。
外から見れば塔に屋敷がくっついているようになった。
「ああ、私の部屋が……」
屋敷は修復されても、部屋にあったものは瓦礫の下になっていた。
一階の西側は倉庫だった。幸いなことに時間停止貯蔵庫が農場にあったのと、俺のインベントリが無限収納なので、ここにはまだ何も入ってなく被害を受けずに済んだ。
問題なのは二階にあったナランとニルの部屋。
ギリギリで壊されてしまった。
ナランがショックを受けている。
「失ったものはまた買えば良い。
思い出は胸の中に残っているから大切にすればいい。
よし農場と牧場が片付いたら、明日は街に買い出しに行くぞ」
農場は地割れでめちゃくちゃ。牧場も牧草地が同様の目にあっていた。
幸い、厩舎と畜舎に鳥小屋、ワイバーン厩舎、各所の時間停止貯蔵庫は無事。
果樹園も木の根が張っていて概ね無事だった。
「また、こんな目にあうのも嫌だな」
『システムコンソール、今後被害が出ないようにしたい。どの範囲が安心か?』
『
モバイル端末に安全範囲が図示された。
それは東西に長い長方形だった。
これなら農地や牧場を再配置するだけで、ほぼ同じ規模でいけるな。
今までは塔の先端――俺の元
「よし、この範囲で塀と空堀を造ってしまおう」
幸い果樹園は範囲内だ。範囲から外れた拡張したばかりの新しい穀物畑は放棄。
作物は収穫して他でまた栽培すればいい。
範囲外になるワイバーンの厩舎と牧場の畜舎は移築する。
騒いでいたワイバーンもニルの顔を見て落ち着きを取り戻したようだ。
牛や羊、鶏も大丈夫なようだな。
馬は平然としている。(魔物だしな)
この作業により農場と牧場、果樹園の配置が再編された。
まず西からワイバーン厩舎と果樹園で二区画。
その隣に野菜畑が一区画。ここが屋敷の目の前。
続いて東側に半区画がスパイスや薬草などの実験的な畑。
残り二区画と半区画が穀物畑で合計三区画。
二区画を予備地として、その隣に畜舎と鶏舎があり、東側に牧草地を二区画配置した。
牧場が遠くなったため、移動用の馬を配置するために屋敷の東側に馬の厩舎を配置した。
塔の南東が主な農地と牧場になる感じだ。
予備地を牧場と畑の間に入れたのは、家畜の大腸菌が生野菜に付かないようにという配慮だったのだが計画倒れとなってしまった。
移動手段として馬の厩舎を屋敷に隣接した場所にしたため、ほぼ無意味になってしまったのだ。
まあ『クリーン』の魔法で元々そんなに心配はないんだけどね。
『ああ、ちょっと230号、仕事の割り振り……』
横を通ったゴーレムに、そう声をかけようとして気付いた。
「え? 221号?」
ゴーレムの胸に印字された番号が違っていた。
どうやら傾斜により動けなくなっていたゴーレムが稼働しているようだ。
「そこにいるのは792号?」
地下に続く搬出口から何やら資材を搬出しているようだ。
「あ、その資材で塔を修復するのね」
どうやらシステムコンソールが勝手に仕事を割り振っているようだ。
他の200番代ゴーレムが窓に付いた土を落としている。
700番代は何をしているのかはわからないけど。
「もしやそれはレーダーアンテナですか?」
あ、700番代の武装解除をしてないぞ。
暴れる危険はなくて大丈夫みたいだけど、そんなもの使いようがないはずだぞ。
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