第21話 皆のお仕事

 農場に人が増えることで、ここの生活も随分変わった。

朝起きたら着替え洗顔を済ませて各々朝の作業に向かうというルーティンが纏まりつつある。


 家畜担当のナランはゴーレム783号と共に畜舎に向かうと牛と羊を牧草地に放す。

畜舎で糞を掃除すると寝藁などを交換し【クリーン】をかける。

水桶を排水し水を満たす。

寝藁の保管場所を畜舎の側に建てた方が便利になるな。

次の作業課題としよう。


 ターニャは同様に厩舎に向かうと馬を牧草地に放し、ゴーレム230号と共に厩舎を掃除、水桶を排水し水を満たす。

時間停止倉庫から穀物を取り出すと鶏に与え、糞を掃除、卵を回収する。

餌用の時間停止貯蔵庫も鶏小屋の側にあるといいな。


 ニルは時間停止貯蔵庫から魔物肉を持ち出すとワイバーンの厩舎に向かい、その肉を与え、水桶に水を満たす。

ワイバーンが肉に食らいついている間に厩舎内を掃除する。

ワイバーンは厩舎から出さない。

勝手に飛ばすと家畜を餌にしてしまうからだ。

ワイバーンはちょっとアホなのだ。

なのでワイバーンの厩舎は牧場とは離した別区画だ。


「ここにも餌用の時間停止貯蔵庫を建てようか」


主人しゅじん、それはダメ。

ワイバーンは食いしん坊だから匂いがすると倉庫を壊して食べる。

どうせ魔物肉を倉庫まで運ぶ手間はかかる。今のままでいい」


 ニルの意見は尤もだ。どうせニルが運ぶのだ。

一度に運ぶのか、小分けにして運ぶのか、結局作業量は同じだ。


「それに、そんなに便利にすると仕事が無くなる」


 本末転倒だった。いや仕事に余裕があるのは良いことだ。


 ちなみに水桶に水を満たすのは水の属性石だ。起動の魔力を流すと水が出て来る。

この水の属性石をあらゆる水場に設置しているのだ。

生活魔法の【ウォーター】で水を満たすよりも、水の属性石で行う方が遥かに少ない魔力で同量の水を満たすことが出来る。

【クリーン】も属性石で出来るようにしようと思っているのだが、【クリーン】はどうやら水と風の複合魔法らしい。


あるじ様なら水と風の複合魔法の属性石も出来るのは無いですか?」


 そういえば、俺はシャワー用に火と水の複合属性石を作った実績があった。

俺はサラーナの何気ない一言で試してみる気になった。

【クリーン】の魔法が使える属性石を創ると強く念じたら……簡単に出来てしまった。

生産の極の限界は俺が頭で縛りを設けていただけらしい。

今後、使える場所にはこの属性石を設置していこう。

まずは畜舎と厩舎と鶏舎だな。

屋敷にも取り付けよう。あ、トイレにも使えるな。


 俺は野菜畑に行って朝採れ野菜を収穫し、一連の農業魔法で次の作物を植える。

サラーナは俺の側を付いて回って、たまに野菜を手で収穫してつまみ食いをしている。

今食べているのは真っ赤なトマト。朝食が食えなくなるぞ。


 朝の作業が終わるとアリマが大浴場と朝食の準備をしてくれている。

泥に塗れた者は大浴場で汚れを落とす。

しまった。風呂を一つしか作ってないから自動的に混浴になってしまう。

ラッキースケベどころか確信犯(誤用)と思われても不思議ではない。

なるべく見ないようにシャワーを浴びる。

彼女たちは気にしないどころか、俺に見せつけて来ているように思えるのは気のせいだろうか?

これは俺専用の男風呂を作るべきだな。

その後、全員で揃ってダイニングに集まり朝食を摂る。


 朝食後、ターニャとナランの家畜担当の二人は牛や馬の肉体面の世話をする。

ニルは果樹園に向かいゴーレム230号と共に果物の収穫をし時間停止倉庫に入れる。

俺は穀物農場に向かい収穫し、一連の農業魔法で次の穀物を植える。

最近は稲わらや麦わらも収穫物と認識して収納している。

家畜の寝藁として重要な資源なのだ。


 アリマは洗濯の後、昼食の用意をする。

そして皆で昼食。午後から皆は休憩。

俺はもろもろの道具の開発や塀の整備、必要になった建物の建築、プチをモフる等の雑務を行う。

いや、プチをモフるのは雑務ではなく癒しだ。


 家畜や土に塗れる仕事の後は風呂の使用頻度が高い。

食事前にはどうしても綺麗にしておきたいでしょ?

いちいち風呂を入れるのも何なので、シャワーを浴びる。

お湯の出る火と水の複合属性石は思った以上に便利だ。

全員慣れたもので、好きな温度に設定してシャワーヘッドを使っている。

俺は、この便利な火と水の複合属性石を【ホットウォーター】の属性石と命名した。

意外にこのシャワーの使用頻度が高いので四基に増設することにした。

四基なのは、汚れ仕事をするのが俺を含めて四人だからだ。

同時に四人が使えれば問題ないはずだ。



 午後、日が暮れる前に家畜を畜舎に入れる。

プチが牧羊犬モードで羊を追い立てて集める。

ターニャとナランは馬に乗り、牛を追う。

実はターニャとナランは裸馬の状態で馬に乗っている。

鞍はいらないのかと聞いたら鞍を知らなかった。せいぜい毛布を敷くぐらいらしい。

はみと手綱は用意した。これはどの世界でも共通らしい。

鞍と鐙は後で用意しよう。そうしないと俺が乗れないからな。

そういやワイバーン用の鞍も必要だな。

馬を厩舎に戻したら夕食、一日が終了する。


 稼働時間の試運転も兼ねてシャワーを浴びていると、何故かサラーナが横でシャワーを浴びている。

当たり前だがシャワーなので全裸だ。


「何をしている?」


「あら、あるじ様、わらわはわらわの本職の準備をしておりますのよ?」


「本職? サラーナに仕事なんて振ってないぞ?」


 俺が不思議そうな顔をしていると、サラーナが満面の笑顔でこう言った。


あるじ様の子を生すのが、わらわの本職ですわ♡」


 いや、俺はまだお前に指一本触れてないじゃないか!

このまままだと想像妊娠されるのも時間の問題だろう。


「ぴゃっ! 痛いです~」


 俺は全裸のサラーナの頭にチョップをお見舞いして寝室に逃げた。

ああ、サラーナも使うならシャワーヘッドは人数分設置しといた方がいいのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る