第35話 予兆
日も
ウツロは目を
考えがまとまらない。
やはり
人間についてわかったつもりになっていたけれど、実際はとても複雑だった。
人間には表面と内面がある。
それは
人それぞれ、ということだ。
彼女は邪悪な内面を、しとやかな表面で
しかしそれだけで「悪い存在である」と決めつけられるだろうか?
彼女は彼女で、何か
彼は俺と同じだった。
俺と同様、強すぎる
俺はその表面だけを見て、彼を傷つけてしまった。
自分だけが不幸だと思っている……
そのとおりだ、彼の言うとおりだ。
柾樹の苦しみは、俺にはわからない。
いや、人の数だけ苦しみの形があると、いえるのではないか?
苦しみとはひとつの個性なのかもしれない。
やはり良くも悪くも、だけれど……
そして
俺なんかには理解しえないほどの
それはまさに、俺がやっていたことではないのか?
俺はひとりよがりな思い込みで、みんなを傷つけてしまった。
ウツロの
彼は
「やっぱりここは、俺なんかがいていい場所じゃない。
いまは無理でも、
ウツロはそう
その鳴き声は、いまの彼にはどこか、
そうだ、ここを去る前に、もう一度だけ目に焼きつけておこう……
「世界」のありさまを。
ウツロは影を落とすようにふらふらと、ベランダのほうへ足を運んだ。
学生服を着た下校中の高校生数名が、
あれが学生……
学校というところにかよっている人たちか。
俺と同じくらいの
なんて楽しそうな顔だろう。
俺もあるいは、あそこにいたかもしれないのに……
いや、そんなことを言っても
わかっている、わかっているけれど……
ウツロは
家族がいて、学校へ行って、いつかは社会へ出る……
そんな当たり前を、自分は持つことができなかったのだ。
それではお
あるがまま、与えられたものを受け入れなければ……
「……ウツ……ロ……」
「――!」
桟の上にとまっている
「……これは、アクタの『
「……ウツロ……俺は逃げのび……いまは、
それを言い終えると、スズメは
「アクタ、お師匠様、ご無事で何より……! 人首山……早く、行かなければ……!」
(『第36話
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