交響曲 第6番 「田園」 ベートーヴェン
<タイトル>
交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
<作曲者>
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
<おすすめ盤>
カール・ベーム(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
<解説>
ベートーヴェンが38歳のときに書いた交響曲であり、唯一自身で命名したタイトルとして知られます。
「英雄」や「運命」は出版社などによるセールスコピーですね。
全5楽章からなっており、自然の風景がありありと描写された名曲です。
作曲された当時、彼は耳の病気によって聴覚に不自由をきたし、人を避けるようになっていました。
そこで、精神的な慰みとなったのが、故郷であるボンなどの田園風景というわけです。
そのパノラマからインスピレーションを受けて作られたのですね。
第2楽章の終わりには小鳥のさえずりが現れますが、ロマン・ロラン「ベートーヴェンの生涯」によれば、このときすでに先生の耳はほとんど聞こえなくなっており、彼の精神世界に記憶された風景を落とし込んだということです。
そのとおりであるならば、本当は「心象風景」を描写したとも言えるのではないでしょうか。
ロラン同様、これには胸が締めつけられる思いです。
まさに表現者であると言えましょう。
ベートーヴェンの記憶を、いまわれわれが耳にすることができるというのは、皮肉じみているいっぽうで、切ない気持ちにならざるをえません。
ヘ長調は先生がもっとも好んだ調であるとも言われるので、なおさらです。
のどかな曲調の音楽ですが、その陰には苦難と向き合った彼の姿があるのですね。
おセンチになってしまい、申し訳ございません。
ところでこの曲は、岩手県出身の作家・宮沢賢治が特に好んだ音楽としても知られ、彼の作品である「セロ弾きのゴーシュ」にも登場します。
子どものときテレビの人形劇で目にし、「田園とはいったいどんな曲なんだろう?」と想いを馳せたものでした。
このように記憶をバトンタッチさせるのも、表現者たるやと思わずにはいられません。
やはりおセンチですね(汗)
おすすめはウィーンの巨匠として名を馳せたベームの録音です。
彼の全集の中でも特にファンから愛好される一枚で、きびきびと過不足のない名盤になっております。
交響曲というとつい恐縮してしまいがちですが、たまにはのんびりと聴いてみるのもよいものです。
ベートーヴェン先生の見た「景色」が見えるかもしれませんよ。
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