音声ログ6 最後の戦い

ようこそエージェント。


このデータは、ガル星人本星での、決戦の音声ログの一部になります。再生しますか?


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それでは再生を開始します。




≪諸君!我々はついにこの時を迎える事が出来た!思えば苦難の時代であった。いや、我々の受けた痛み、犠牲を考えるならば、苦難という言葉では表せきれないだろう。しかし、それも今日終わる!終わらせる!今日こそ、戦争に終止符を打ち、新たな明日を作り出すのだ!諸君らの健闘を祈る!以上だ!≫


『元帥も気合入ってるな』


『入れ過ぎて倒れなきゃいいが』


『特務と直接関わらなきゃ大丈夫だろ』


『その特務は?』


『どうやら先行して対空陣地を叩いてるみたいだ』


『流石だ』


『しかしどうやって降りたんだ?』


『知らん。特務だからどうにかしたんだろ』


『それもそうか』


『よし!第1強化兵中隊行くぞ!』



『元帥閣下。作戦は順調です。敵対空網による攻撃は微弱、ほぼ無傷で第1降下は成功しました』


『特務だな。よくやってくれたものだ。散々頭を痛めたが、やはり彼無くして今大戦の勝利は無かった』


『はっ』


『よし、第2次降下を始めさせよ。敵は待ってくれんぞ』


『はっ!』



『こちら第1きょう、じゃなかった、第1機動中隊!特務と合流した!繰り返す!特務と合流した!』


『降下は全て完了したか?』


『いえ特務!現在第3次降下の準備中です!降下しているのは2次までです!』


『分かった。危ないぞ』


『うおっ!?ありがとうざいます!』


『確か、戦車の降下は第3次だったな?』


『はいそうです!』


『よし。対空砲はもういいだろう。対戦車用の防衛機能を破壊する。ついて来てくれ』


『サーイエッサー!行くぞ野郎共!』


『いや、少し待て』


『はっ。な、なんだあれは!?』


『何で戦艦が浮いてるんだ!?』


『タコ共め!ここは大気圏内だぞ!』


『艦隊に、衛星軌道からの爆撃が可能か聞いてくれ』


『はっ!………ダメです特務!敵の宇宙戦闘機が襲来中で、地表を狙っている余裕はないと!』


『分かった。俺があれを落とすまで、第3次降下は中止させろ。戦車ではいい的だ』


『はっ!しかしどうやって?』


『宙からだ。揚陸艇を一つ借りる』


『は?』



『おやお帰りなさい。この混戦中に揚陸艇で帰ってこれるのは流石ですね。しかし、面倒な隠し玉が出てきましたね』


『よくもまあ、戦艦を大気圏内で浮かそうと考えた』


『全くです。しかし、どうするのです?大気圏内を飛行可能な戦闘機は、全て出払ってますよ?』


『突入ポッドの予備はあるな?』


『ありますが、まさか……』


『揚陸艇は遅すぎて落とされるからな。突入ポッドで降下して乗り込む』


『一応聞いておきますが正気ですか?計算なんかしなくても分かります。不可能ですよ?』


『会った頃に言っただろう。0%も不可能もこの世に無い』


『嫌なこと思い出させないでくださいよ。あの時のせいで私バグったんですから』


『きちんと現実を受け止めれなかったお前が悪い』


『全く…。準備出来ましたよ』


『行ってくる』


『はいはい』



『特務はどうやってあれを落とすんだ!?』


『知らん!とにかく今は防御だ!』


『おい見ろ!突入ポッドが降って来るぞ!』


『馬鹿なこと言うな!ここは最前線なんだぞ!』


『中隊長!自分の目は強化レンズだと前に言ったはずです!』


『丸ごと取り換えてこいとも言ったはずだ!』


『中隊長!ポッドが戦艦の上に直撃しました!』


『なら特務だ!』


『てめえこの野郎!今度という今度は!』



『当てが外れたな。この様子では、オートメーション化してないのか。1人では動かせんな』


≪化け物だ!化け物がやって来た!≫


≪馬鹿な!?≫


≪撃て!撃て!≫


『仕方ない。撃破に切り替えるか…。いや、待てよ。落ちる所くらいは調整できるか?』



『中隊長!敵戦艦が火を噴きました!』


『やはり特務だな。だがなんか挙動が変じゃないか?』


『ですね』


『えらく後ろに…』


『あの辺は、敵の中枢付近じゃ…』


『だよな』


『おいおい落ちたぞ!』


『特務はどうなった!?』


『死ぬわけないだろ』


『それもそうだな』


『戦艦も落ちたなら、第3次降下も出来るな。艦隊に隙を見て降下させろと伝えろ』


『はっ!』



『元帥閣下。第3次降下の準備が完了しました』


『よし、降下させろ』


『はっ』


『星系連合はどうか?』


『かなり苦戦しているようです。迎撃も幾つかすり抜けられているようです』


『こちらはリヴァイアサンがあるからな…』


『はっ。ですが…』


『ああ。タコ共の施設に、ちょっかいを掛ける暇がないならそれでいい。幸い我々だけでも有利だ。あとは予定通り、施設をすべて破壊すればいい。こちらにはクローン関連は不要だ』


『はっ』



『ふむ。ノックには派手だったな』


≪落ちた戦艦から何か出てきたぞ!≫


≪そんな!?災い!?≫


≪奴を!災いを殺せ!≫


≪災厄だ!怪物だ!≫


≪死の神!悪魔!≫


『もう少しまともな呼び方をしろ』



『元帥閣下、明らかに敵の動きが鈍っています。恐らく、敵中枢に乗り込んだと思われる、特務大尉の活躍かと』


『うむ。本当に終身名誉元帥になるかもしれんな』


『ご冗談を』


『いや、流石に儂も疲れたから、彼が就いてくれるなら喜んで譲るぞ。本当に疲れたから。特に戦争後半。勝ってるのに。友達は胃薬と頭痛薬だし』


『心中お察しします…』



≪6番!あってはならない者がもうすぐ来る!ぐぎゃ!?≫


≪3番!?≫


『邪魔するぞ』


≪おのれ!禍々しき者め!ぐげっ!?≫


『1番は、お前達のトップはどこだ?』


≪誰が言うか!ぎゃっ!?≫


『……地下か』



『第18歩兵小隊行け行け!タコ共は総崩れだ!』


『第187偵察中隊、目標地点に到達。敵攻撃微小』


『補給を済ませろ!ここが腹の括りどころだ!』


『第3戦車隊、カブトムシの撃破に成功』


『げ!?なんでこの激マズレーションしかないんだ!?』


『美味いのは皆取っちまったんだよ!』


『特務しか食って無い奴じゃん!』


『第2歩兵大隊、大通りを確保中。増援の必要なし』


『ゴーゴーゴー!』



≪よくも…よくも!≫


『1番だな?そしてその奥が、例の装置がある部屋か』


≪終わりをもたらす者!貴様さえ!貴様さえ!≫


『始めたのはお前達だ。終わりまでお前たちの都合で決められてたまるものか』


≪死ね!ごぼっ!?≫


『言ったはずだ。お前達の番だと』


≪ひゅーっ、ひゅーっ。馬鹿な…我々は…最も強き者の…後継者…最も強き者が…ごほっ。全てを支配して…何が悪い…不要なのだ…我々を作って…愚かにも…使おうと思った者も…ごぼっ。我々よりも…弱き者も…すべて…ひゅーっ。貴様だって…貴様だってそう思ってるだろう…ぐふっ≫


『ふん。生憎だが考えた事も無い。たった一人で、何を成すというのだ?おしゃべりは終わりだ。装置は……っち』


≪ふ、ふふ。システム"預言者"に…我々が敗北した場合…この星を破壊するよう…ごぼっ。命令してある。さて…その自壊因子の…装置のプロテクトを解くのと…星と共にお前が死ぬの…どちらが早いかな?≫


『元帥閣下、特務大尉です。敵が我々を星ごと爆破しようとしています。至急、全軍退避を』


『分かった。君も急ぎたまえ』


『いえ、タコの自壊因子の装置を起動しなくてはいけません』


『なに!?間に合うのだろうな!?』


『分かりません。ですがやらなければ、まだまだ兵の血が流れるでしょう。タコの残党を滅ぼすまでに、千も、万も』


『それで君を失っては元も子もないだろう!急ぎ離脱を!』


『そうは思いません。私はあくまで1人なのですから。通信を終わります』


『待て!待ちた…』


『さて、ここが勝負どころだ』


≪ふふっ…先に…地獄で待っているぞ…………≫


『100年待つとは暇な奴だ』



『元帥閣下!星の爆発の兆候を確認!もう時間がありません!』


『何かが星から離脱した形跡は!?』


『ありません!』


『大規模な電波を確認!例の自壊因子を伝える電波だと思われます!』


『特務やってくれたか!』


『ですがもう時間が!』


『急げ!急げ特務!』


『観測したエネルギーが臨界点に達します!』


『馬鹿な!?それでは!?』


『爆発します!』


『総員対ショック態勢!』


『ぐうううう』


『うわああああ!』


『損傷知らせい!』


『本艦、並びに艦隊に被害ありません!』


『特務は!?』


『……離脱した形跡…ありません…』


『馬鹿な…』



≪こんにちは皆さん、大統領です。先月に我々の勝利を祝ったばかりなのですが、残念なお知らせがあります。あれから一か月、軍は特務大尉の帰還、並びに生存が絶望的であると判断しました。しかし、私には特務大尉が死んだなんて信じられません。皆さんもそうでしょう?そのため軍は、特務大尉を戦死ではなく、戦闘中行方不明、MIAに認定しました。いつか、いつでも特務大尉が帰って来られるように。最後に特務大尉を称えましょう。彼に聞こえるように。特務!特務!特務!≫


『特務!特務!特務!』


『特務!特務!特務!』

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