第114話 完成
次の日、ユグドラシルの元へ行くとすでに素体は完成していた
「ほう、これはなかなか……」
ノロイも認める見た目らしい。今の我の人形より少し若い見た目のそれは、完全に継ぎ目などもない綺麗な、人間そのものだった。ただし、見た目だけなのは明らかで、ためしに軽く叩いてみると金属を叩くような硬さがあった
「どうですか?」
「完璧だな!」
「……」
ノロイはユグドラシルとハイタッチする。おぬしら、初対面だろう?
「で、コアはどこにはめるんだ?」
ノロイはエリザダンジョンで得た、高品質のコアを取り出す
「必要ありません」
「は?」
「私の枝は、それそのものがコアみたいなものですから」
せっかく用意したコアが無駄だったらしい……。それはともかく、我の自我の移植に移る
魔法陣を描き、その上にユグドラシルの人形を置く。もう一つ魔法陣を描き、その上に我が立つ
「じゃあ、やるぞ」
魔法陣が光り輝き、立っていた人形が倒れる。それと同時に、我は起き上がった。あれほどの硬さを誇っていたのに、動かしてみるとまったく支障が無い。手から受ける感触などもそのままだ
「……何をしている?」
「どんなもんかなって思ったけど、硬いな。残念だったな」
ノロイは素っ裸の我の胸を揉んでいた。我には揉まれている感触もない。それほどまでに硬いのだ。ただ、不快ではある
「吹き飛べ、エア・ストーム」
「ぬああああっ!」
我は軽く唱えたつもりであったが、爆発するような暴風が発生し、ノロイは吹き飛ばされた。そうか、リミッターが完全に解除されているのだな。それなら、ノロイにかけられた呪いも解除できるのでは
「できませんよ?」
「なぜだ?」
心を読んだかのようなユグドラシルの突っ込み。実際、解除しようにも、呪いの存在が感じられない
「あの人形を参考に、完全にその素体全体に呪印を施してありますから」
「グッジョブ!」
いつの間に戻ったのか、ノロイが再びユグドラシルとハイタッチする
「余計な事を!」
「可愛いは正義なので」
「だよな!」
「うるさいわ!」
我はがくりと膝をついた
「せめて服くらい着ろよ。ほらよ」
ノロイは村で調達してきたのか、エルフの子供用の服を取り出して渡してきた。風邪をひくとは思えないが、裸でいるのもおかしいと思い素直に着ることにした
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます