第81話 タマモ再び

森へ入ってすぐに、森の奥から人影が出てきた。


「どこへ向かうのかしら?」


「お前は! 親父を返せ!」


エンカはタマモに掴みかかろうと飛びつくが、タマモはあっさりと空中に浮いて避ける。そして、少しだけ離れた後に口に手を当てて笑う。


「ふふふっ、相変わらず反抗的なのね。あれだけの実力差を見せつけたのに」


「うるせえ! 負けると分かってても引き下がれるか! フレイム・ショット」


エンカの手から渦巻く炎がタマモに向かって飛ぶ。しかし、タマモはあっさりとその炎を尻尾で受けると、炎がはじける。尻尾は全く焦げてすらいないようだ。


「私を倒してしまったら魔王の居場所が分からなくなるけどいいのかしら?」


「ぐっ、そ、それなら、先に親父の居場所を吐け!」


エンカは次の攻撃をためらい、居場所を聞き出そうとする。どうせあの程度の攻撃ではタマモにダメージを与えることはできないだろうが。


「そうねぇ。教えてもいいけど、条件があるわ。他の魔王4人を倒して来てくれる?」


「ふざけるな! そんな交換条件を飲む必要なんかない!」


「そうよ。魔王を倒すとここと魔界が繋がるんでしょ? 絶対にそんな事させないわ!」


ミレもタマモに噛みつくが、タマモがミレを見ると、ミレはあっさりと我の後ろに隠れる。まあ、別によいが。


「お主の目的はなんだ?」


「私は、単に面白ければいいだけよ。昔、暇つぶしにいくつも国を混乱に陥れてたら封印されちゃったんだけどね。今はそんな事させないけどね」


「まあ、ここでお主を倒せば終わりか。ダーク・レイ」


我は真っ黒な闇の光をタマモに向かって放つ。この魔法はなんでも貫通するから尻尾では防げないはずだ。


「……やってくれるわね。言っておくけど、私はただの分身よ? 私を倒しても魔王は帰ってこないわよ」


尻尾に穴が開き、脇腹を掠めたタマモが、慌てて人質を盾に取った言い訳をする。正直、我達が魔王を助ける義理も無いのだが、エンカの手前、見捨てるとも言いづらい。


「……他の魔王は倒せねぇ。他の条件に変えろ」


「偉そうねぇ。まあ、あなたに他の魔王を倒す実力が無い事は知ってるわよ。そもそも、ここの魔王自体が最弱だって噂だし?」


「誰だ! そんな噂を流したやつは!」


「誰だっていいじゃない。ま、とりあえず今の私じゃそこのやつに勝てないし、大人しく退散するわ」


「くらえ!」


空気を読まないアクアが、密かにタマモの後ろに回り、槍を投げる。しかし、タマモにはバレていたようであっさりと槍は弾かれる。次に、ライカがその隙に電撃を飛ばすが、エンカ同様あっさりと弾かれる。


「分身の私にすら勝てないのに、本体に勝とうなんて100年は早いわ」


「グラビティ・プレス」


そう言った瞬間、我の重力場に圧されタマモはぺしゃんこになった。しかし、分身と言うだけあって後には一本の尻尾だけが残されただけだった。

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