第61話 アクアの首を切る(物理)
「俺はここに残って殿様の眠りを覚ます方法を探す。新しいお庭番の頭だ、ソシンカ、来い」
キールはそう言うと、フッと音がして覆面をした女性が現れた。魔法なのか、キールの影から現れたような気がしたが。
「ソシンカに殿様の容態を見てもらう事になる。」
「何か手伝えることがあれば言ってね。ギルド経由で手伝うわ」
ミレがギルド長に打診しておくわね。と付け加えた。まあ、遠からず殿様がこういう状態なのは伝わるだろうが、他人に任せるよりは伝えられる情報は濃いだろう。
我達は城を出ると、足りない物資を買い足して次の街へ行くことにした。食料は我の氷魔法を使えば保存食などすぐに作れるし、そのまま凍らせておけばほぼ溶けることは無い。
「次の街は、ミワね」
「ふむ、どんな美味しい食い物がある街なのか、楽しみだな」
「私はそろそろ旅に飽きて来たわ!」
アクアは人間の生活に慣れないのか、すでに飽きてきたようだ。
「じゃあ、ダンジョンへ帰るか?」
「それはまだ早いわ!」
どっちだ……と思わなくもないが、居ても居なくてもどちらでもいいから放置する事にした。
「新しいマジックアイテムが無いかしら」
ライカは研究の足しになりそうなものを探しているようだ。他にめぼしい物も無いので、早々に次の街へ向かう事になった。
次の街へは山を越えることになる。まあ、タフネス・ヒールのおかげで休憩なく登山することは出来たし、下山もスムーズだ。
山を越えると、大きな湖が見えてきた。頂上から見たところでは湖だったが、近くに来ると海の様に見える程大きい。
「この湖の近くにミワの街があるみたいね。湖の近くと言ってもどっちかしら?」
ここからでは大きな建物は見えないので、小さな街のようだな? とりあえず、どっちに行っても一周すれば必ず着くので適当に右へ向かった。
しばらくして、運が良かったのか、半分も行かないうちに街が見えてきた。しかし、街に着くとまるで飢饉でもあったかのように人々はがりがりに痩せていて、活気が無い。
「これは一体どうしたことだ?」
ノロイは一応疫病や呪いがないか調べたようだが、異常はないみたいだ。適当にそのへんをふらふら歩いている人に聞いてみることにした。
「この街で何かあったのか?」
「いままで湖で獲れていた魚が、まったく獲れなくなったのじゃ。神の怒りかもしれぬ」
ここは魚が特産物らしいな。逆に言うと、それ以外に目立ったものは無いようだ。
「マジックアイテムも無さそうね」
「ギルドも無いわね」
「飯も無さそうだし、次の街へ行くか?」
「待って! 私が湖を調べるわ!」
すでにトラブルメーカーと化しているアクアが発言する。みんな、嫌な予感がして顔をしかめた。
「ギルドすらないんだから、仮に解決しても褒賞すらないわよ?」
「泳ぎたいのよ!」
本心がだだもれ過ぎて誰も反論できなかった。逆に、大声につられて集まってきた人たちから何かを期待するような目を向けられて居心地が悪い。とりあえず湖へ向かう事になった。
湖のほとりに立って湖を覗くと、透明度が高く、結構深い所まで見えるが、確かに魚の1匹も見当たらない。
「で、人間になる呪いはどうするのよ?」
そう聞かれたアクアは急に服を脱ぎだした。
「こんなところで脱がないでよ!」
「周りに人なんて居ないわよ?」
「ノロイが居るじゃない!」
「あ? 俺は魚に興味はない」
ノロイにとってアクアは人型であっても魚認定らしい。我もアクアは興味の対象外だ。
「じゃあ、問題ないわね!」
誰の特にも損にもならないので、ミレも止めるのをあきらめた。ほどなくしてアクアは全裸になる。
「じゃあ、マオ。私を切り刻んで!」
誰か人が居たら大問題になる発言をするが、要はネックレスを外したいのだろうと理解した。
「ウィンド・カッター」
我はアクアの首をはねてネックレスを取り外す。すると、体にえらが出来て足がひれになる。
アクアは自分の首を拾って首につけると、あっという間に繋がって再生する。
「……グロいわね」
アクアが平気なのは見てわかるが、ライカとミレは気分が悪そうだ。
「じゃあ、泳いでくるわね!」
アクアは気にせずにそういうと、ドボンと飛び込んだ。
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