第26話 無機物操作君改名
「じゃあ、改めて、マネージメントのマネちゃんにするね!」
「さっきよりマシかな?」
「私はムッキーの方がよろしいのですが」
「センス悪いな!」
突っ込みを入れたところで、多数決を採った。ムッキー:本人、ライカ マネ:ノロイ、ミレ、マオ。よって、マネに決定だ! あれ? 本人とライカがいいなら変える必要無かったのではないか?
「仕方ないですね、これが民主主義ですか? 人間ども」
「いきなり口が悪くなったな……」
「人間は私の住居兼ご主人様の研究室を勝手に荒らしますので排除対象です。この男みたいに」
マネは串刺しの男を指さす。それを思い出したライカとミレは「ひーっ」と悲鳴を上げた。
「で、こいつはどうするんだ?」
「回収してゾンビとして再利用しております」
「再利用しないで! せめて焼却処分してよ!」
「スケルトンの方がお好みですか?」
「スケルトンもだめ! 私の研究室にはふさわしくないよ!」
「分かりました、ご主人様の言うとおりに致します」
マネはそう言うと、パンッパンッと手を叩く。すると、数十体のゾンビが「あーっあーっ」って言いながら洞窟の奥から歩いてくる。
ゾンビは恐らくここで死んだ冒険者をマネが回収して再利用したやつだろう、手が取れているもの、体中穴だらけの者、足が取れているものと様々だが、一人として無傷の者は居ないな。
「ぎゃーっ!」
ゾンビのグロさに耐えれなくなったのか、ライカは失禁して失神した。我はウォーター・シャワーでライカを水で洗い流すと、クリーンを使って綺麗にしてやる。
「ご迷惑おかけしました」
ライカが殊勝にも謝った。ミレはギリギリ恐怖に耐えたようだが、表情が固まっている。
「ちなみに、私は罠は作れますが、魔法は使えないので、どなたか処分をお願いします」
「我がやろう。フレイム・ピラー・オクタプル」
ゾンビの周りを炎の柱で囲むと、高温で焼却処分した。後には灰しか残っていない。
「ありがとうございます。また後日、増えたらお願いします」
「もう増やさないで!」
「ところで、ゾンビはどうやって作っているのだ?」
魔法が使えないのであれば、クリエイト・アンデットやウォーキング・コープスなどの魔法ではないのだろう。
「これを死体に埋め込んでいます」
マネの手には、小さな蜘蛛のような物が乗っている。
「この蜘蛛をこのように埋め込んでやれば、自動的に脳を乗っ取って動かします。一度同化すると取れませんが」
そう言って串刺しの死体の貫通した穴に蜘蛛を入れる。蜘蛛はごそごそと潜り込んでいき、しばらくすると「あーあー」といいながら動き出した。
「これも処分して!」
ライカが叫ぶ。我はフレイム・ピラーで灰にした。
一旦場所を移して、今後の事についてマネと話し合いを行った結果、そもそも研究室に入らないように入り口に一筆書くことになった。
「立ち入り禁止、無断で立ち入った場合は命の保障は致しません」
「解決になっていないんじゃないか? 命の危険を冒してトレジャーハントするのが冒険者だろ?」
「じゃあ、無断で立ち入った場合には金貨1枚を請求します」
「うむ、こっちの方が効果がありそうだ」
少なくとも我は金貨1枚持っていないから、この看板を見て入ろうと思わないからな。まあ、実際に払うかどうかは別の話だ。無一文からは何をしても取れないからな。
「マネ、状況を教えて」
「かしこまりました、ご主人様。私が知性を得たときからの話をします」
もともとはライカが研究以外の雑事を任せようと作ったのが無機物操作君だ。最初はただ単に言われることをこなすだけだったが、急にライカが居なくなったため、命令する人が居なくなった。すると、動物が入り込むようになった。その動物を掃除するために、わなを仕掛け始めた。さらに数年後、人間まで来るようになったので、いろいろと効率を考えた結果、人間用の罠も仕掛けられた。
「最近は、勝手にご主人様の道具を見つけては、ひゃっほー、お宝だ! と言って勝手に持ち出そうとするので、実力行使をしたりしています」
「うむ、ご苦労様。ただ、方法は考えてね」
「かしこまりました」
我達はマネが出してくれたお茶を飲みながら、ライカの研究結果をまとめたノートを見ている。
「ライカよ、この研究のここだが、こうしたらいいのではないか?」
「あ、本当だ! じゃあ、ここは? 何かいい案はある?」
「ここは、魔方陣を組み込んで魔力能率を上げるとか」
「そんな魔方陣があるの? 教えて!」
「お前ら、先に用事を済ませろよ」
「そうだった!」
ライカは思い出したように、マネに命令した。当初の目的は、ライカのパワーアップだったか?
「私の宝石箱を持ってきて!」
「申し訳ありません。盗まれました」
「なんですって!!」
こうして振出しに戻るのであった。
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