第22話 魔王、イアラの街へ到着する
我達は順調に旅を続け、城壁に囲まれた街が見えてきた。
「あれがイアラの街よ」
ミレがそう言うと、関所の方へ向かう事にする。今の時間帯が人が少ないのか、単にいつも人が少ないのか分からないが、誰も居ないのですぐに順番が来た。我が先頭で街に入ろうとすると、門番に止められた。
「身分証はあるか?」
門番は一般的な鉄の鎧に鉄の槍を持っている。ここに2人と恐らく室内に1人は居るな。思ったより厳重なのか? 我達は今、大人の男一人に女一人、子共2人だが家族には見えないだろう。門番がどういうつながりがある人達なのか不審がっている。
「これでいいか?」
我とノロイは冒険者証を、ミレはギルド員証を出した。
「うむ、問題はないな」
門番は一応証が本物かどうか確認するが、問題が無かったようで頷く。何も持っていないライカは、ミレと我を見て少し迷った末に、我に「お姉ちゃん、行こう!」と懐いてきた。
門番は、小さい子の身分証まで調べる必要は無いと思ったのか、明らかに姉妹に見えない我達を通してくれた上に、ライカに「気を付けてな」と手を振っている。
街に入ると、さっそく喧騒が聞こえてくる。やはり、活気がある街はいいな!
「ミレ、さっそく裏メニューのある店に案内しろ!」
「マオ、気がはえぇよ。まずは宿の確保が先だ。当然、ミレの顔が利くところで頼むぞ?」
ノロイはミレにそういうと、「任せてよ」と先に立って歩いて行った。ギルド員だけあって冒険者の好む宿を知っているようで、しっかりとした宿を紹介してくれた。さっそく中に入る。
「ほぉ、さすがギルド員だけあるな。なかなかいい宿じゃないか」
「食事もうまそうだ!」
「私は、早く休みたい」
きちんとした受付嬢が居て、4人で泊まる事を告げると、ご飯付きで小銀貨2枚と言われた。これが高いのか安いのか知らないが、最初だからか、ミレが奢ってくれる事になった。1階は酒場もあるらしく、料理も結構いけるらしい。
「私寝るね、お休み」
ライカは部屋へ向かおうとする。ご飯すら食べないとは、よっぽど疲れたのか?
「じゃあ、俺達は次の街へ行こうか」
「ええ! ひどい!」
「冗談に決まっているだろう」
ノロイがライカをからかっている間に、我とミレで料理を頼む。裏メニューは羊肉のステーキだった。肉厚に切られたステーキは、こってりしているようで脂が少なく、さくさくと食べ進めることができた。
「ふむ。我は満足だ!」
若い娘が腹を出してぽんぽんするな! とミレは言うが、中身は封印時間を除いても数百歳の魔王だぞ。え? 魔王らしくもないって? 気にするな。
「よう、嬢ちゃんたち、どこからきたんだ?」
隣の席から、私はすごい冒険者ですというオーラを放っている男が居た。食っているときは全く気が付かなかったが、男は一人らしく、酒だけ飲んでいたようだ。
「我達はアイズの街からきたぞ」
別に隠す事でもないので素直に話す。すると、男は少しだけ酒をあおると、ニヤリとする。
「へぇ、何か森で事件が起きたそうだな?」
「あら、耳が早いのね?」
ミレも驚いている。四天王が現れた事やライカの事件は漏れないようにしていたはずだ。街を行き来する商人ですらまだこの街へは情報を持ってきていないだろう。
「ああ、なんかエンカってやつがしゃべっていった」
「何をしているのよあの子は!」
ミレが突然大声を出すので、周りの客がビクリとしてこっちを見てくる。
「あ、ごめんなさい」
ミレは謝ると、席に座りなおした。顔を赤くして静かになった。
「どんな話をしていったのだ?」
我は別に興味は無いが、ミレが聞き出しなさいって顔をしている。どんな顔かって? 無表情で目だけ力を込めた感じだな。
「四天王のセッカを倒した魔王を探しているって。魔王が四天王を倒すとか、意味が分からんから皆が知らないって答えたらどこかへ行ったな。四天王を倒す魔王とか、聞いたことあるやついるか?」
男は、はははっと笑って、酒の肴には丁度いい話しだったが、と言った。エンカはここに来たらしいな。
「で、そいつと入れ違いの様にお前たちが来たから、少し気になったんだ」
男の体からオーラが吹き上がったように見えたのは、我とノロイだけか?
「俺達は冒険者に昨日なったばかりのルーキーだ。まだ情報には疎いし、どうせすぐ次の街へ行くから関係はないな」
ノロイはそう言ってエールを1口飲む。男は、結局我達も何もしらないと判断したのか、酒を一口飲む。
「そうか、気を付けていきな」
それが意味するところは何だろうな? それ以降、男が話しかけてくることも無く、我達は食事を終えると部屋へ向かった。
「何で私とノロイが一緒の部屋なのよ!」
「あ? お前が部屋を間違えているんだろう?」
ノロイとライカがどっちの部屋にするか言い合いをするので、我はミレとノロイを交換してやると、ライカにスリープを使って静かにした。夜は静かに寝るに限る。
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