第244話 海行くぞ10

「フー食った食った」


「食後にかき氷とか食べない?」


「でも、俺一個丸々は食えねぇよ?」


「そっか……じゃぁ半分こにしようよ」


「え?」


 そんな話しの流れで俺達はかき氷を追加で注文した。

 味はイチゴにしたのだが、たしかかき氷シロップの味って全部同じって聞いたことがあるんだよなぁ……。


「いただきまーす」


 嬉しそうにかき氷を食べ始める高城、デザートは別腹だと言うが本当にそうなんだなと俺は高城を見ながら思った。

 さっきまでうどんを食べて満足そうにしていたのに、今はかき氷を食べて幸せそうにしている。


「圭司君食べないの?」


「あぁ、食べる食べる」


「じゃぁ、はい……あ、あーん」


「ん? あ、サンキュー」


 高城はそう言いながら俺にかき氷をスプーンにすくって差し出してくる。

 俺はそのスプーンにのったかき氷をパクリと食べた。

 甘い味が口に広がるのを確認した後「美味いな」と言ったのだが高城からの返答はない。

 

「どうした?」


「へ? あ、い……いや……普通に食べるんだね……」


「ん? まぁな」


 いや、食べさせて来たのはそっちだろう?

 なぜか顔を真っ赤にする高城。

 何か俺は変な事をしただろうか?

 それよりかき氷を食ったからか少し冷えてきた。


「そろそろ出るか? かき氷も食ったし」


「そ、そうだね」


 まだ顔が赤い高城。

 なんだ?

 日焼けでもしたか?

 クラスの奴らの所に戻ると、今度はスイカ割をしていた。

 なんでか知らないがスイカの隣に小野が埋められているが、恐らく気にしない方が良いのだろう。

 その後も俺と高城は海で泳いだり、砂浜で寝頃がったりと海水浴を満喫した。

 そして夕方になり俺たちはホテルに戻ってきた。


「あー良く遊んだ」


「お前ほぼビーチで寝てただろうが」


「でも、遊ぶには遊んだろ?」


 ホテルの部屋に帰ってきた俺達は夕食までの時間を各々の部屋で過ごしていた。

 順番にシャワーを浴び、汗を流している。

 

「よぉ親友!」


「最上、お前海に居たか?」


 部屋で着替えをしていると同じ部屋の最上がやって来た。

 海に来てからこいつと会って居なかったが、一体どこにいたんだろうか?


「いたぞ? しかし海岸で女性から何度も声を掛けられてな、親友と海で勝負が出来なかった」


「こんなとこまで来ても勝負かよ……」


 大人しくリゾートを楽しんで欲しいものだ。

 

「食事まで時間もあるし、何か暇つぶしでもしないか?」


「お、いいな」


「何やるよ?」


「全員で寝てようぜ」


「前橋、お前どんだけやる気ねぇんだよ……」


「トランプなんてどうだ?」


「お、八代良いな! 大富豪やろうぜ!」


「負けた奴はジュース奢りな」


「よし、親友! これで勝負だ!!」


「いや他にもプレイヤーいるからな?」


 そんなこんなで急に部屋では大富豪が始まった。





「椿ちゃん」


「ん? どうしたの?」


「少し話しがあるんだけど良いかな?」


「話し?」


 同じ部屋で最近仲の良い優菜ちゃんにそう言われて私はホテルの廊下に出て来た。

 一体何の話しだろう?

 なんて一瞬思ったけど、大体想像がつく。

 きっとあいつの事だ。


「椿ちゃん、私告白しようと思う」


「……そう」


「今日一緒に居て分かったよ……私、やっぱり圭司君の事好きだって。だから椿ちゃんにも他の二人にも負けたくないから」


「そうだよね……分かった、頑張って」


 そう彼女に言いながら私は自分自身にこう思っていた。

 なんで私はこの子のように勇気を出せないのだろうかと……。

 それはきっとあいつと居るのが自然になって来たからなのかもしれない。

 今日だって、海では後半こそあいつは優菜ちゃんと一緒だったけど、前半は私と一緒だった。

 そんな状況に私は甘えているのだ。

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