第83話 デートってどうやるの?
『あ、もしもし? 宮河だけど』
「はい、何か用ですか? 切っていいですか?」
『いきなり!? もう、サインあげたじゃん! ちゃんと手伝ってよ!!』
「うっ……それを言われると弱いんだよなぁ……」
『もう……私、プライベートの連絡先はあんまり教えないんだからね……』
「俺からしたら、宮河さんの連絡先なんて別に知りたく無かったです」
だって、こうやって連絡してくるし。
それに俺のゲーム時間を削って来るし。
あわよくば事務所に引き入れようとして来るし。
俺にとってマイナス要因しか無いんだよなぁ……。
「それで何か?」
『あ、この前言ってた彼氏役の練習のことなんだけどね』
「あぁ……はい」
『なんでそんなテンション下がるのよ』
「だって……俺ハッキリ言って宮河さんとデートなんてしたくないですもん」
『本当にハッキリ言ったわね……っていうか私、一応付き合いたい女性ランキング一位になったこともあるんだけど!!』
「何? それ自慢? 言っておきますけど、世の中にはアンタと死んでもデートしたくない男だって居るんですよ」
『そんなに!? 私とのデートってそんなに辛いことなの!?』
「そもそも知り合って間もない女とのデートが苦行」
『それってデート事態が嫌ってことだよね!? 私がいやってワケじゃないよね!?』
「まぁ、そんなことはどうでも良いんだ、それで練習はいつどこで何時に?」
『どうでも良いんだ……日程は今週の土曜日に駅前に待ち合わせで、一緒に映画に行くだけだから』
「わかった。ちなみにその彼氏役の練習は何回くらい手伝わなきゃいけないんだ?」
『まぁ、ドラマの撮影が始まるまでだから……今週の土曜日とあともう一回くらいのデートの二回で良いわ』
「わかった。まぁこっちも報酬を貰ってる以上、しっかり彼氏役は演じよう」
『お願いね、じゃぁ私は当日変装して駅前に行くから!』
「はいっす」
宮河さんはそう言って電話を切った。
まぁ、芸能人なんだし変装しないと色々大変だろうしな……しかし、デートか……彼氏役って一体どうすれば良いんだ?
井宮と買い物に行った時の感じで良いのか?
こうなったら家に帰ってギャルゲーでもプレイして研究を……。
「ねぇ、こんなところで何してんの?」
「うぉっ! びっくりしたぁ……なんだよ井宮」
俺がブツブツ考えことをしていると背後から井宮が俺に声を掛けてきた。
なんで井宮がここに居るんだ?
「アンタが電話なんて珍しいわね」
「お前とよくしてるだろ?」
「いや、私意外と電話なんて珍しいからさ……誰と電話してたの?」
「あぁ……お前に話した例のあの女だよ」
「彼氏役をして欲しいっていう?」
「デートの日程が決まったから連絡をな」
「ふーん……」
俺がそう言うと井宮はなぜか少し不機嫌だった。
なんでこいつが不機嫌になるんだ?
はっ!!
もしかしてあれか、俺と一緒に攻略したいイベントクエストがあったけど、俺がデートで忙しくて一緒の出来ないから膨れてるのか?
「安心しろ井宮、ちゃんとゲームにはログインするぞ!」
「は? 何の話よ?」
あれ?
なんか違ったっぽいぞ……。
「てかアンタのそのデート相手って、宮河真奈なんじゃないの?」
「え!? そ、そそそそそんなワケないだろ?」
「隠すの下手過ぎ……はぁ……まぁ口止めされてるんでしょうけどね」
なんでだ!?
どうして井宮にそのことがバレた?
俺は完璧にバレないように相談したはずなのに!!
俺がそんなことを考えながら焦っていると、井宮はため息を吐いて寂しそうな顔で俺にこういった。
「……なんか残念」
「え?」
「……友達とか言ってくれたくせに……そういうところは私に隠すじゃん……」
「あ、いやそれはだから……」
「友達なんでしょ? だったら、嘘つかないで相談してほしかったわよ……」
うっ……確かにそれはごもっとも。
井宮だって高城と同じくそういう話をバラすような奴じゃないのはわかっていた。
でも、俺は井宮にその事実を隠してしまった。
はぁ……俺から友達になろうっていったのに、これはあまりにも不誠実だったか?
「わ、悪かったよ」
「まぁ、アンタの気持ちもわかるから、今回は良いけど……なんかあったらちゃんと相談しなさいよ?」
「お、おう」
「まぁ、今回はそういうわけで……今度買い物に付き合ってくれたら許してあげる」
「え?」
「じゃぁ、また詳しい日程連絡するから」
「………」
そう言って井宮は俺の前から去っていった。
「………やっぱり友達って面倒くせぇ……」
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