第32話 宿泊学習編9
*
レクリエーションの後、俺達は配布された昼飯を食べていた。
「はぁ……疲れた」
「大活躍だったじゃねーか」
「あんなのただの晒し者だろうが」
俺は英司と一緒に昼食を食べながら、先ほどのレクリエーションの話をしていた。
「もう二度とあんな役やってたまるか!」
「人気者はつらいねぇ~」
「あ、二人ともここに居たんだ」
俺と英司がそんな話をしていると、池内がニコニコしながらコッチにやって来た。
さっきの騒動の現況めっ!
お前は敵だ!
「俺も一緒に良いか?」
「あぁ別に構わないぜ」
そう言って了承する英司。
いや俺は嫌なんだが……。
まぁだが、変に拒んでも後々クラスで噂とかされそうだし、ここは我慢するか。
「いやぁ~さっきは大変だったな前橋」
「まぁな」
ほとんどお前のせいだけどな。
「三組の最上、なんだかさっきの事でお前を完全にライバル視してるみたいだぜ?」
マジかよ……面倒くせぇな……なんで俺があんなキラキラしたイケメンのライバルなんだよ。
もっと別な奴をライバル視しろよ、魔王の幹部とスライムじゃ比べようがないだろう。
「まぁ、でもそうだよな……好きな人の好きな人なんて男としては敵視しちまうよな」
「は? なんの話だ?」
「いやいや、とぼけても無駄だよ。井宮さんの事だよ」
こいつは一体何を言っているんだ?
何の話か待ったく俺には理解が出来ない。
「井宮さんも変なのに好かれて困ってたよ、ちゃんと前橋が守ってやらないと」
「おい、さっきも言ったが俺と井宮はそんな関係じゃないからな」
「あんなに仲良いのに? 隠したい気持ちはわかるけど、同じ班の俺ぐらいには本当の事を教えてくれよぉ~」
だから違うって言っただろうが……。
なんで俺がそんな面倒な関係に井宮とならなきゃいけないんだ!
「そう言えば午後は何をするか聞いたか?」
「あぁ、夕方にみんなで晩飯作るくらいしか聞いてないけど?」
「面倒だな」
なんで飯を自分で作らなきゃいけないんだ、世の中にはインスタント食品という、人類の英知を終結した素晴らしい物があるというのに。
「これを食い終わった後は自由時間らしいぞ、あとで三人で川にでも行って見ないか?」
「良いな! そろそろ暑くなってきたし、涼みにいくか!」
「俺は遠慮しとく」
日陰で涼んでいた方が静かだし心が安らぐ。
「えぇ~なんでだよぉ~行こうぜぇー」
「うぉっ! バカくっ付くな! 暑苦しいしきもち悪い!!」
「そんなこと言うなよぉ~」
はぁ~本当に陽キャのこういうテンションにはついていけない。
俺は池内を引きはがし、残りの弁当を食べながらため息を吐く。
飯を食った後、俺は池内の強制的に連行され、近くの浅い川に来ていた。
川では結構な数の生徒が遊んでおり、見ている分にはほほえましい光景だった。
しかも、その中には女子の姿もあって男子は色々な意味で興奮している様子だった。
「アホくせ」
「なんだよ、自分だって川に足つけて涼んでるくせに」
「暑いからこうしてるんだよ、お前は水の掛け合いなんかして楽しいか?」
「なんか小学生に戻ったみたいで楽しいよな?」
「お前も今も小学生みたいな感じだろって冷たっ!!」
「うるせぇよひねくれ者! お前はそこで年寄り臭く座ってろ!」
英司はそう言って、池内達男子が遊んでいるところに行ってしまった。
さて、邪魔者も消えたし、俺はスマホゲームでもしながら涼みますか。
こういう時、最近のスマホの防水機能に感謝だな。
俺がそんな事を考えながらスマホを弄っていると、急に後ろから声を掛けられた。
「何やってるの?」
「うぉっ! ビックリしたぁ……なんだ高城か」
そこに居たのは、少し髪の濡れた高城さんだった。
おそらく高城さんも水遊びをしていたのだろう、体操着のあちこちがわずかに濡れていた。
「前橋君は遊ばないの?」
「疲れる、体力の無駄だ、俺は休んで体力を回復させたい」
「そ、そっか……さっきは頑張ってたしね」
「あれは強制的にやらされただけ」
「で、でもすごかったよ! 最後のあれは……まぁ偶然みたいな感じだったけど」
「あぁ……あいつ怒ってるかな?」
あれは本当に悪いと思っている。
「ね、ねぇ……前橋君っていつもスマホでゲームやってるけど、スマホゲーム好きなの?」
「まぁな、スマホのゲームが好きって言うか、ゲームが好きなんだよ」
なんなんだ高城の奴。
俺の隣に座り込んで、折角邪魔者が居なくなってゆっくり出来ると思ったのに。
「そ、そうなんだ……私も良くスマホでパズルゲームとかするよ」
あぁ、あの陽キャ御用達のパズルゲームか。
まぁ俺はあんまりパズルゲーム自体しないし、こいつとはゲームの話が合うとは思えないな。
「高城は遊びに行かないのか?」
てか、そろそろ俺を一人にしてくれ。
一人で静かにゲームがしたいんだ!
頼むからどっかいけ!
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