玉虫色の箱庭で、キミはまほろばの夢を見る

作者 紫藤 咲

私達は、誰だって、何時だって、何か足りない

  • ★★★ Excellent!!!

 特筆すべきは、そのリアリティである。
 エピソードの細部に宿るそれは、真に迫り、思春期を迎えた少女の実像と家族から派生する学校での人間関係までの箱庭のパーツとして形成する。

 今でこそ、障がいと言われたハンディキャップは個性と捉えられる向きが見られ、更にはそこから伸びる自身だけの長所――ギフト――を大切にする価値観の浸透も少なくは無い。
 が、やはり、知識の欠如や感情からの偏見など、世間の壁は高くそびえ立つことを我々は自覚すべきだろう。

 本作の主人公の苦悩もまた、加えて思春期という誰もが思い悩む体験を通して、読者に感情移入をもたらすものだ。
 思い返せば、我々は事足りていただろうか。
 完璧などと、言葉に出来ただろうか。

 例えば100点のテストより、成長できた5点のテストが誇らしかったり。
 哀しいかな、愛しても愛しても、愛し足りない存在がいたり。
 良かれと思ったことが、大好きな人を傷付けたり。

 誰だって、何時だって、誰もが何かが足りない生き物なのだ。
 その何かを埋めて、補ってくれる存在を得られることは、人生において幸いである。
 この作品に描かれる大人たちは、私の目には皆が好ましく映る。
 少女の行く先に虹色のアーチを描く、救いだ。
 作者からの愛情――メッセージ――でもある。
 嗚呼、プリズムのように、世界が光り輝いて見えてこないだろうか。

 それこそ、この小説そのものが、玉虫色の箱庭として。

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