玉虫色の箱庭で、キミはまほろばの夢を見る

作者 紫藤 咲

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★★★ Excellent!!!

 特筆すべきは、そのリアリティである。
 エピソードの細部に宿るそれは、真に迫り、思春期を迎えた少女の実像と家族から派生する学校での人間関係までの箱庭のパーツとして形成する。

 今でこそ、障がいと言われたハンディキャップは個性と捉えられる向きが見られ、更にはそこから伸びる自身だけの長所――ギフト――を大切にする価値観の浸透も少なくは無い。
 が、やはり、知識の欠如や感情からの偏見など、世間の壁は高くそびえ立つことを我々は自覚すべきだろう。

 本作の主人公の苦悩もまた、加えて思春期という誰もが思い悩む体験を通して、読者に感情移入をもたらすものだ。
 思い返せば、我々は事足りていただろうか。
 完璧などと、言葉に出来ただろうか。

 例えば100点のテストより、成長できた5点のテストが誇らしかったり。
 哀しいかな、愛しても愛しても、愛し足りない存在がいたり。
 良かれと思ったことが、大好きな人を傷付けたり。

 誰だって、何時だって、誰もが何かが足りない生き物なのだ。
 その何かを埋めて、補ってくれる存在を得られることは、人生において幸いである。
 この作品に描かれる大人たちは、私の目には皆が好ましく映る。
 少女の行く先に虹色のアーチを描く、救いだ。
 作者からの愛情――メッセージ――でもある。
 嗚呼、プリズムのように、世界が光り輝いて見えてこないだろうか。

 それこそ、この小説そのものが、玉虫色の箱庭として。

★★★ Excellent!!!

 カクヨムコン6の原稿が終わり落ち着いたので、読み切った完結フォロー作品を整理していたのですが、本作についてはフォローを外す前にちゃんとレビューをしておいた方がよいなと感じたのでいまさらレビュー。

 グレーゾーンの少女の成長と克服を描いた作品。
 こういうのってなかなか当事者として描くのが難しかったり、どうしてもその属性をお話の都合に合わせる方向で使ってしまうんですけれど、この作品ではそういうご都合主義的な所が極めて薄い。
 丁寧かつリアルに少女とその周りに起きる出来事を描いているように感じます。

 まぁ、もちろんある程度は話の都合を感じる部分もあるんですが、作中で発生するアクシデントのディティールが「これはありそう」と思うような内容ばかり。
 これは本当に凄いことです。
 なかなかこれは体験を伴わないと書けないんじゃないか、ならこれは結構な覚悟をして世に出した作品だぞと、連載中は思っておりました。まぁ、それは僕の推測の域は出ないのですが。なんにしても、ここまでリアルに苦悩を小説に落とし込み世に出すという行いを素直に賞賛したいです。

 また、こういう体験はどうしても負の感情を引きずって書かれてしまう部分があると個人的には思っているのですが、本作はそういう所を丁寧に摘み取って、ほどよい塩梅で成立させているのがまたすごい。
 同じ苦しみを持つ少年とのやりとりなんかは、物語の重要なギミックとして機能させてもよいのですが、そうせず淡々と一つの出来事として描写する辺りに、なんというかちゃんとした人間(それもグレーゾーンを個性として持つ等身大の少女)の苦悩を描きたいという作者の意地のようなものを強く感じます。

 とまぁ、ここまで書いて、あまり読者寄りのレビューではないなと思ってしまったのが、今日までレビューを書くのが遅れた理由でもあるのですが。(こんなんレビューされてどうなん… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

発達障害、グレーゾーン、言葉としては知っていても実感はなかった。
本作はその障害(そう呼ぶべきかどうか?)を、とても前向きに、時に笑いを交えながら語ってくれる。
作者(母親)の実体験がベースであろうが、エッセイとは違う創作物。
それが最後に分かる。
キミ(子供)の目線で物語は進んでいく。
なかなかに逞しくて、生意気で、それがとても微笑ましく、また嬉しくもある。
子供というのは、親が思う以上に強いのかもしれない。
そんな風に思わせてくれる。

本作は作品として完結しているが、別の作品の素材にも成りうる。
とても可能性を感じる内容。
別のテイストでも読んでみたい。

★★★ Excellent!!!

発達障害も、そのグレーゾーンも、実はそんなに特殊ではない。
どこにでも転がっていて「ちょっと変わった子」くらいでしかないのだ。

それを「とても特殊」にしてしまっているのは、実は周りの環境だったりする。

昔はちょっと変わった子なんかいくらでもいた。
だが今はどうだろう。
様々な情報が溢れ、核家族が当たり前になり、ワンオペ育児で子供とマンツーマンで向き合う親が増え、誰でもお受験でき、親の「子供に対する期待」が膨れ上がった結果、過干渉で疲弊する子供や親離れの出来ない子供が「異常」と認識されなくなる。

そして親の子離れが著しく遅れる。

「標準」からほんの僅かでも外れただけで「この子はちょっと足りない」とされてしまい、本人の努力は無視されて傷ついて行く。

悲しいのは「母が子を愛している」ことだ。
愛しているからこそ、「この子のために」束縛し、支配し、押さえつけてしまっている、子供も母の愛に応えようとする。それが何よりも悲しい。

この物語の主人公は人に恵まれた。
彼女のちょっと特殊な部分を受け入れ、伸ばそうとしてくれる先生たちに囲まれて、少しずつ大人になっていけたのはとても幸運だろう。
先生たちがいなかったら彼女はどうなっていたのかと思うと空恐ろしくなる。

彼女が救われたことで、母も救われたのではないだろうか。

★★★ Excellent!!!

母、同級生、先生、そして自分自身とどう向き合うか。
人との交流は、難しい人にとっては難しい。自分の扱い方も満足にできなければ、なおのことしんどい。

中学一年生の明佳は母との間に大きな溝があることに気が付いた。
もしかすると、もっと前からそうだったのかもしれないですね。思春期だからこそ、まず最初にぶち当たる壁が親でしょうか。はたまた友達かも。人間関係で悩むのが一番厄介です。
自らを「疲れ果てた魚」であると表現する彼女の心が、ミシミシと窮屈に音を立てているようでした。
母との問題、クラスメイトとの問題、先生との問題が短編形式に綴られており、言葉ひとつひとつが脚色のないリアリティさを感じます。
主人公の明佳は発達障害グレーゾーンというハンデを抱えてますが、私が中一のときと比べると、かなりしっかりしていますよ。
自分なりに正解を見つけ出し、言葉にして伝えるのって、大人でもなかなかできないことです。それもまた周囲の人々が暖かく、優しいからでしょう。彼女はこれからもっと優しくなれる。
先生たちが魅力的ですよね。私のお気に入りは花島先生です。本当に素敵な人です。最後のほうは思わずニマニマしてしまいました。
そんな花島先生、色の魔術師なんですよね。私たちの生活に欠かせない「色」から観測し、操る魔術師。どういうことなのかは読んだらわかります(笑)

さて、クラスメイトや先生との問題も挙げてくとキリがないのですが、本作のテーマはやっぱり「母娘」ではないでしょうか。
ちょっと厳しいことかもしれませんが、私は今も明佳ちゃん側にいるので、お母さんの発言が結構刺さってしまい、苦手意識が何度か生まれまして。
でも、さすがに私も大人暦うん年なので、お母さんが抱えている苦労もよくわかるのです。焦るし不安だし、ともすれば娘よりも不安でいっぱいいっぱいで、きつい。安易に周囲に甘えられないから自分自身を責めて… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

いやもう、あっという間に読んでしましました
文章、設定、キャラクター……なんかもう私が書きたかった、じゃない、私が欲していたものばかりですやん(褒め言葉)
自分語りするのは恥ずかしいので省略しますが、こんな大人たちが中学生だった私の側にもいてくれればなー、と泣きそうに
そういう意味で、あかりちゃんよりもママの方に感情移入してしまいました……
そういえば今週の私のラッキカラーは虹色でした
年越しに素敵な虹色の魔法をありがとうございます

★★★ Excellent!!!

It takes a village to raise a child (子供を一人育てるには村がまるまる一つ必要だ)というアフリカのことわざがあります。子供は一つの家庭だけで育てられるものではない、多くの人との関わりの中で初めて育っていくものだ、という言葉です。どれほど愛していても親だけでは足りない、とこのことわざは教えてくれます。
でこぼこした能力を持つ明佳ちゃんは、まさに多くの大人達との関わり合いの中で育っていきます。頑張っているのに子供を息苦しくさせてしまう母親と、さまざまな大人達から少しずつ色々なことを素直に吸収していく少女の成長の物語。周囲の大人達のさりげない優しさも、魅力的です。

★★★ Excellent!!!

私もピンクが好き。今も。
娘は水色が好き。
最近聞いたら
いつまで私が子供のままだと思ってるの?
紅茶やコーヒーも飲めるよ?
って言われちゃった。

母も圧が強い人で自分が出来なかった習い事を押しつけて期待をどっぷりしてくる人だった。
合唱で私がピアノ伴奏になると喜んでいた。
私は演劇がやりたかったのに。

私は娘には圧をかけないように育てたつもり。
ただ中学生の頃の反抗期は凄かった。

振り返れば反抗出来ないほど母は恐ろしかったのを思い出した。

私にとってのじっちゃんは
離れて住む祖母だった。
望まない引っ越しをし、
望まない生活を強いられ
早く親の元から離れたかった。
実際18で家を出た。
私明日大学の寮に入るから。と。
家を出た後何ヶ月も鬱になったらしい。

娘は22で家を出たけど寂しくなかった。
何でも決めてから話す娘は私にそっくり。
頑張れよ、って背中を押して。
離れてからの方が関係は良好。

中学生の頃って全て世界は自分の味方じゃなくて
どこか寂しかった。
もちろんたくさん友達はいたし。
ただ、家の中はつまらなかったなぁ、って
あの頃を懐かしく思い出しました。

★★★ Excellent!!!

思春期特有の悩みと、発達障害グレーゾーンを抱える主人公。 
そんな彼女を取り巻く友達や先生や母親の人間模様が、短編集という形で綴られています。
お母さんの気持ちが痛いほど分かる。
主人公明佳の気持ちも痛いほど分かる。
それぞれの想いがもの凄く伝わる文章です。
二人を取り巻く先生達がものすごくいい人達です。世の中、こんな先生ばかりだったらいいのにね!

★★★ Excellent!!!

元塾講師なのでさまざまな子供を見てきましたが、やはり『いつものやり方』では教えるのが困難な子供は時折見られます。

なぜか自分がそうした子供を担当することが多かったこともあり、今でも教育関連の本を調べることが(半ば趣味で)多くなりました。

果たしてどのように解決していくか。