第12夜・願いの代償

「……え?でも、それって…、、

“誰か”を見つける事が出来ないじゃない。

自分のために犠牲になった誰かに、上乗せして分けられないから………意味がないんじゃなくって?」

「まぁ、そーいう意味ではそーなるな。

でもさぁ…、幸せは誰にでも平等にあるだろ?その時期が違うだけで、みんな必ず、幸せを味わえる…

そう、思いたいんだ。

それでもやっぱり……、そうじゃない時も…あるから……。

だから俺は、そんな人達に幸せを分けてやれる、

幸せを一緒に作っていける騎士団を作りたいんだ!」

勇ましく拳を空へ突き上げるオールは、メチャクチャなのはわかってるんだけどな、と苦笑して付け足した。

「あなた、やっぱりおかしな人だわ。わたくし、理解できそうにない。

でも…、それがあなたの素敵なところ。…………きっと、そう…、よね。御館様があなたを説得するようにと仰り、わたくしは頷いたけれど…、やめるわ。

わたくし、自分の思うようになんとかしてみるから!」

「?

なんのコトかよくわかんねーけど、困ったら言っていいからな!

絶対、助けてやるから!!」

神楽の宣言を柔らかく微笑み見守ったオールは、その後にぱぁっと満面の笑みでそう言った。

「やっぱり、全然わかっていないじゃない!……別にいいのだけれど。

けれど!

やっぱりあなた、少し不用心すぎではなくって!?仮にもわたくしはあなたの敵よ!そしてここは敵の本拠地!

あなたを殺そうとした人を主人とする騎士!今こうして話している間に、わたくしがあなたの隙を突く事も、

わたくし以外の者が襲い掛かるのも簡単なのよ!!」

「…でも、お前はそんなコトしねーしさせねーだろ?」

ふっと今までで一番穏やかに微笑んでみせるオール。そして神楽ははっとする。

「っ、ま、まぁ、そうだけど…っ、

…って、いつの間に出てきたのよ!?どうしてわたくしとここでお話しているの!?この無礼者ッッ!」

「…?あ、ゴメン。」


とてつもなく些細で“幸せ”な一夜を過ごした。

一応付け足しておくと、オールは廊下(空き部屋近く)辺りから神楽に話し掛けてきた。何故そこにいたのかはよくわからないが、神楽にとっては、

あそこで会えて、話せてよかった、と

そう思える一夜となった。






翌朝、神楽は早くから誠の説得に勤しんでいた。

「で、ですから…っ、今はここに、“イラー”を有する者がいるので……、お力添えを頂くのは…」

「あんなガキがまだ力に目覚めている訳がないだろう?

それはお前も分かる筈だよな?お前がまた昔みたいに粘り強く俺を説得しようとするのなら、俺にだって考えがある。

お前を一瞬で黙らせる考えだ。昔にはなかった感情が生まれ始めているから…、

昔には全く効果がなかったとしても、今はとても効果があるよね。」

誠は依然、昔からの意見を貫き通す。神楽も神楽で、頑固に説得を続ける。

そして突然、誠が溜息をついた。それに対し、神楽は誠が怒ったのだと思った。その為、いつ殴られるのかと身構えた。

「まぁまぁ。神楽。お前の身体に罰を与えるわけではないよ。

お前の“心”に罰を与えてやるよ…。」

そう言い妖しげに微笑む誠が口にしたのは

「哉汰、いるかな?いるのなら、小夜を呼んでおいで。」











一人の幼い少女の名だった。

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