03-020.観光と参拝は果たして同じ軸線上に据え置いて良いものだろうか。 Schreinbesuch.

2156年8月12日 木曜日

 台東区浅草二丁目。

 午前中のよく晴れた夏の空は淡い青をたたえるのだが、その色に反して日差しは強く、じわじわと路面を熱していく。日差しの暑さよりも路面からの放射熱が過酷であり、否応なしに空気を熱風に変えていく。熱気に目をショボショボさせているティナは、昨日マリーに言われた「あっついぞ~」の台詞は揶揄したものだと思っていた。思っていたのだが、それは誇張でもない事実であったことに驚きを隠せない、となる前に暑さにやられている模様。


 今日の姿は、鍔が広いストローハットに降ろした髪、胸元が大きく開いた淡い躑躅つつじ色のミニ丈ワンピースは、Aラインだが胸の下で絞られている構造で裾へ向かってのドレープがエレガントに映る。足元はアンクルストラップのサンダルだが、ヒールはない。ティナは踵に暗器が仕込まれていない限り、戦闘時に安定性が劣るヒールの高い履物をチョイスすることはない。

 そして、昨日はつうっぽい外国人だと注目を浴びていたにも関わらず、二つ名【姫騎士】への評価に繋がらなかったことの反省から、変装するのはやめたのだ。


 巨大な赤提灯を見上げながら佇む外国人の図であるティナは、どう見ても周囲から浮いている。

 それもその筈、国外で素顔を晒して観光しているため、如何にも護衛と言ったパンツスーツ姿の女性が四人、彼女の周りを固めているのである。

 今日はクラーラとソフィヤの他に、護衛担当から二人増員してきた。ティナが変装することをやめたので、護衛の強化をする必要があるからだ。

 追加要員は、フランスカレンベルク所属のジョゼ・リエーヴル、ドイツのWaldmenschenの民から穂乃花・ハイデマリー・フローエが護衛任務に就いた。穂乃果は名前から判る通り、日独のハーフである。


 一目でVIPと判る一行だ。だからなのか、すれ違う人々や道を行く人々は少し距離を空けながら避けたり、振り返って二度見して驚いたりされるのはいつものこと。ティナだと気付いても黒服の護衛に囲まれている相手に声を掛ける者はいない。この状態でもファンからお願いされれば対応するのだが、それは見ただけでは判らないだろう。遠巻きにティナの写真をパシャリと撮って出来上がりに渋い顔をする者がいるのだが、芸能人や有名人は肖像権保護協定で法的に保護される対象のため、簡易VRデバイスによる盗撮防止のジャミング機能が有効にされているからだ。ティナ本人が許可しない限り、ちゃんとした画像で写ることはない。それは護衛も同様である。

 何処の国へ赴いても似た様なリアクションを取られるが、ティナは気にも留めていない。その中に殺気を感じれば即座に対応出来るのも理由の一つではあるが。


「雷門、ですか。うーん、なんで提灯なのでしょうか。って底の部分の木彫りが見事ですね。」


 雷門を象徴する提灯は、江戸時代に雷門の屋根職人が奉納したのが元とされる。なぜ人の背丈よりも遥かに大きい提灯を奉納することになったのかは判らないが、江戸っ子の洒落っ気なのかもしれない。ちなみに現在では10年位の間隔で新調されており、底部の木彫りは初代の提灯から引き継がれている。


「…これは凄いですね。人出も密と言いますか。ここは商店街と聞いていましたが土産物屋の集合と言った方が正しい気がします。」


 ティナが抱いた仲見世商店街の感想である。ザルツブルクの実家近辺も観光地として有名どころではあるが、商店街の雰囲気などが全く違うことに目を回している。クリスマスや新年のイベントくらいにならなければ、これ程の人出を目にすることはないのだ。しかも真夏の暑い時期に良くもまあ、と言ったところである。


 仲見世商店街の入り口付近で実演販売していた吉備団子が目に止まり、流れる様に注文するティナ。江戸時代の仲見世で販売していたきびだんごを再現した品である。


「お兄さん、出来立てきびだんごを5本と冷やし抹茶を3杯いただけますか?」


 キップの良い店員から品々を受け取るのはクラーラとジョゼ。プラ製のカップにストローを差した飲み物と、内側が油紙となった紙の袋に5本のきびだんごが入っている。どう見ても歩き食いが出来る様に考慮されている包装だ。


「姫、まずは手前どもから正味いたします。」


 そう言いながらジョゼはモッチャモッチャと、きびだんごを味見する。よく噛みしだいてから飲み込む。そして冷やし抹茶を一口二口と飲む。

 その様子を見てから、今度はクラーラが冷やし抹茶を飲み、きびだんごを食す。ジョゼの手順と逆にしているのだ。


 外部で食品を購入する場合、護衛が毒見役をする。全滅を防ぐため、護衛の半分は同じものを食さない決め事がある。だからティナも冷やし抹茶を3杯と注文したのだ。今回はクラーラとジョゼが毒見役となる。次はソフィヤと穂乃果が担当となる。もちろん彼女達は事前に毒素に対する抗体を摂取しているため、仮に致死毒を体内に取り入れても即死などは免れるのである。

 海外でカレンベルク一族の影響がない場所では、その場で仕上げる実演販売の食品だとしても、一族の中でもトップクラスの要人であるティナが口にするものは護衛達が先に毒見をする決まりだ。彼女達の簡易VRデバイスは軍事レベルの特注品であり、スキャンニングによる成分分析、および複数の成分を摂取した場合の化学変化により毒物を生成する工程が含まれていないことを調べてから口に含み、問題がないことを確認する。たかが出店の食べものにそこまでする必要があるのかと言いたくなるのだが、実際に毒物を混入された過去があるため慎重且つ厳重になっているのだ。


 ようやく冷やし抹茶ときびだんごを口にするティナであるが、そのまま歩き喰いすると言う、令嬢にあるまじき行為をしながらの練り歩きである。庶民派お嬢様を謳っているので問題なかろうとあっちへフラフラこっちへフラフラと物見遊山の様相。


 ちなみに吉備団子と黍団子は別物である。桃太郎が労働の対価に見合わない支払いを動物たちに現物支給したのが黍団子であり、吉備団子は江戸時代に考案された菓子の一つ。岡山の吉備津彦命が桃太郎である説は、昭和に入ってからの話であり、名菓としての吉備団子と桃太郎、つまり吉備津彦命を結び付けたのは菓子製造販売店のイメージ戦略が元である。そして吉備津彦命は皇族の皇子であり、山陰地方で盛んであった製鉄の技術を朝廷支配下に置くために遠征などしている。


 小物、民芸品、名菓などの店舗がひしめき合い、時たまカバン屋があると言う販売する品目がある意味偏っているのは土産物屋の集まりだからだろう。外国人向けに珍しいものが取り揃えられているが、ベクトルが同じ方向であるのは海外の日本に対するイメージを元に売れ易いものを仕入れているからだと思われる。

 そんな外国人でもあるティナが目を引かれたのは、雪駄、草履などの履物、かんざしや髪飾り、扇子と言った和装小物、西陣織の帯や小袋、日本人形にコケシと言った民芸品、それと江戸木箸と言った日用品などである。珍しいところで浮世絵や仏具店の黄金色に輝く仏像などにも興味を引かれるが、他宗教の神仏を鑑賞目的で購入するのはいささか傲慢ではないか、と敬虔けいけんな信徒である彼女の分水嶺を越えることはなかった。

 他の外国人が物珍しげに見ていた模造刀などはチラ見しただけで通り過ぎたのだが、騎士シュヴァリエとして日常で目にする武器であるため興味は引かなかったのだろう。なにせ刀などは京姫みやこ小乃花このか、ベルが振るっているのを間近で散々見ている。

 後は食品関連。煎餅せんべい、団子、人形焼き、雷おこし、アラレなどの焼き菓子を中心に帰りがけに購入するものリストに追加していく姫騎士さん。もちろん、脳内リストだ。


 仲見世商店街を抜けると、朱塗りの宝蔵門が見えてくるが、そのまま右折。直ぐに二尊仏、観音菩薩、勢至菩薩の仏像が露座野天に座するにいらっしゃる。濡れ仏の名でも知られているが、露座野ざらしなので当然のことだろう。だが、近辺に点在する石仏もあるのだが皆、濡れ仏なので。

 この二尊は阿弥陀如来の両脇に座する仏で、前世がインドの王であった阿弥陀如来の長男と次男にあたる家族仏である。蓮台も含めて4m半の高さがあり、宝蔵門とは別の意味で目立つ存在だ。

 そして、センターを張る筈の阿弥陀如来像が石仏造りでお隣に佇んでおられるのはご子息に主役を譲った様にも見える。


「思った以上に精巧なお造りなんですね。緑青ろくしょう色からすると銅製ですか。」

「こちらは金銅座仏像ですから本来は金メッキされていたんですよ、姫。」

「穂乃花さん、そうなんですか? 金の見る影が全くないですが…。」

「さすがに雨ざらしの環境ではメッキは長期間持ちませんので。」


 穂乃花は美術品の輸送などの護衛が多いために知識が豊富である。母親が日本人だから詳しいと言う訳ではない。

 日本の仏像作成方法は6つ程あるが、その内で唯一金属製である金銅座像仏の工法を用いて二尊仏は造られている。蜜蝋で造った仏像に複数の地層で採れる泥を幾層に分けて塗り、乾いた土を焼くことで蝋を溶かして鋳型を作る。鋳型に銅を流し込んで出来た鋳造仏を磨き上げて形を整え、たがねで表面を彫る。大きい仏像などは部品を別工程で鋳造するため、ここで接合し、再び磨き上げる。この後、鍍金めっきするのだが、古来からの方法としてネパールが発祥の渡来した技術、アマルガム法が取られていた。金1に対し水銀2、3の割合で水銀に金を溶かす。磨き上げた仏像へ水銀の混合物を塗り込んだ後、炭火を用いて約350度の温度で表面を焼く。すると水銀が蒸発して金が蒸着されるので、擦った程度では剥がれることが無い金色の仏像が出来上がる。だが、鍍金めっきは水分などに弱く、外気に触れれば劣化する。そのためなのか長い年月を経ても金色の輝きを保っている金銅座像仏は、日頃、厳重に保管され特別な時にしか公開されていなかったものが多い。

 余談だが、アマルガム法のことを滅金と呼んでいたことから鍍金、「メッキ」と呼ばれる様になったと言う。


 ふむふむ、と納得する姫騎士さん。意外と歴史的建築物や美術品、史跡などに関心が高い。海外の旅先などで時間があれば護衛を携えて史跡巡りをするのだ。

 元来た道を戻り、宝蔵門の前に出る。


 宝蔵門は入母屋造、和様三手先五間三扉重層門の二階建てで、二階部分は仏法の経典である元版一切経が収蔵されている。門の左右に金剛力士像、阿形と吽形が安置され、丁度裏側には魔除けの大草鞋わらじが吊り下げられている。門の中央には大提灯とその両脇に一回り小さい吊灯籠が下げられている。現在ではコンクリートで造り直されており、建物の朱塗りは合成樹脂である。そして、瓦はチタン製。


「おー、これだけ大きい木製の像なんて始めて見ました。表情のデフォルメが面白いですね。」

「ポンと門だけ存在するのも不思議です。防衛機構としての門ではなく、宗教的な境界を示す門とでも言いましょうか。」


 ほー、とか、へーとか言いながらキョロキョロ見回し宝蔵門を通り過ぎたところでティナは左に進路を取る。


「さて、気になっていた塔を見に行きましょうか。」


 塔。鮮やかな朱で彩られた五重塔は、昭和に再建された鉄筋コンクリート造りであり、5層の屋根を持つが5階に分かれている訳ではない。土瓦風チタン瓦が葺かれている。層塔と呼ばれる楼閣形式の仏塔であり、各層は仏教の宇宙観を示すものである。基本的に内部は建物を支えるための構造物であることが多く、一般の参拝者が上階へ登れると言った造りは殆どない。仏塔は仏舎利ぶっしゃりを祀るための塔である。仏舎利ぶっしゃりとは釈迦の遺骨であり、聖遺物である。この塔にはスリランカのイスルムニア寺院より正式に請来しょうらいされた聖仏舎利ぶっしゃりが塔最上層の第五層に奉安されている。


「へー、拝観日が決められた日程のみですか。まぁ、元から塔には登らないですけどね。」


 ティナは海外では塔などの設備には登らない。襲撃を受けた場合、退路を塞がれ孤立した空間を簡単に作ることが可能となる場所であるからだ。そう言った場所で襲撃を受ければ、かなりの確率で無関係の者を巻き込むため足を運ばないに越したことはない。

 この五重塔、1層を拝殿が取り囲む形で建築されており拝殿の西側入り口には狛犬が鎮座しているのだが、良く神社で見る狛犬ではなくシーサーを想起する。


 そして、浅草寺本堂、へ向かう前に手前にある手水舎に立ち寄る。参拝の前に心身の清めを行う姫騎士さん。作法は神前の方法を取っている。この手水舎、水を湛える水盆が八角形の甕であり、最大の特徴は中央に沙竭羅さから竜王像が立ち、天井には金色の龍が描かれている。そして、その龍と沙竭羅さから竜王像の首に巻きついている小龍が天井の龍と睨み合っているのだ。

 さり気ないところに何かの意味合いを持たせるところは宗教施設などで良くあるのだが、その小さな愉しみを見つけられてクスリと笑みが零れるティナ。


 ようやく浅草寺本堂へ。和様三手先入母屋造り、鉄筋コンクリート製。そして72000枚の瓦、18個の鬼瓦はチタン製。本堂敷地の下には般若心経 100巻、観音経 160巻、阿弥陀経 20巻の写経を埋められている。

 本堂は、畳敷き60畳の内陣、参拝を行う板敷きの外陣に分かれており、内陣には唐様式三方軒唐破風千鳥破風付の間口4.5m、高さ6m、総金箔押の御宮殿が設けられ、内部は上下段二間の畳敷に厨子ずしがあり、その上段に秘仏本尊聖観世音菩薩が祀られている。5.4cmの黄金像であると言われているが、645年に秘仏とされてからは見たものは誰もいないとされている。年に1度、本尊の開帳をしているが、その時に姿を現すのは857年に慈覚大師が秘仏の代わりに作った68cmの御前立本尊。本尊から見て下段の厨子ずしに祀られている。御宮殿前、導師や住職の座する天井には木製総金箔押、1辺3mの大人天蓋にんてんがいが吊られており荘厳さを醸し出している。

 御宮殿の左に愛染明王の座像と梵天の立像、右に不動明王の座像と帝釈天の立像が脇侍として固めている。


「はあ~、同じ黄金を使っても造りが違うと全く印象がことなりますね。緻密さはさすが日本の職人といったところですか。」


 本堂外陣に入って直ぐ、目に付いた黄金に染まる内陣に、思わず声を出すティナ。

 外陣の天井を見れば、中央に龍之図、その両脇に天女を顕わす天人之図。ヨーロッパのフレスコ画と違い、パステル調とも言える建物に溶け込む様な独特の雰囲気を持つ天井画に文化の違いを感じる。


「そ~れ!」


 賽銭箱に景気よく賽銭を放り込むティナ。チャリン、チャリン、チャリンと小銭が舞い踊る。どうやら複数枚を投げ銭した様だ。


「殿下…。その掛け声は如何かと思いますが…。」

「そうですか? お賽銭は無言で、と言うルールは特に無い様ですから。」

「姫…。賽銭は静かに入れるのが基本ですよ?」


 ジョゼとソフィヤからツッコミが入る。さすが日本滞在組。こう言った仕来りなども自然と覚えている様である。

 神社仏閣などで賽銭を入れる時は丁寧にと言われるが、年始参りなどの賽銭は人出が多過ぎて遠くから投げ入れる様子を咎められず、投げ入れることを前提に賽銭を受けるエリアとして木枠と白布で増設していることを考えれば、目くじらを立てる程ではないのではと思われる。只、その行為を見た者がどの様な感情を抱くのかは別であるが、周りが同様なことをしている時と、個人レベルで同様なことをする時で同意と否定を切り替えるのは止めて欲しいところ。


 賽銭投入の後、ティナは手を合わせて静かに合掌する。この時、一般的には祈願をするのだが、元より寺院は仏と一体になるための修験の場でもあるため、僧侶は無心に経を上げるのである。


「(オーン アヴァローキテーシュヴァラーヤ スヴァーハー)」


 ティナは観世音菩薩の真言マントラを唱える。日本では、「南無観世音菩薩」「オン アロリキャ ソワカ」と唱えるのだが、ティナが用いたのは中央アジアなどで伝わる古い法華経に記されたサンスクリット語だ。

 取り敢えず真言マントラを唱えるが他宗教の信徒なので、気を入れていない形だけのものであるが、それが失礼にあたるかどうかこそ神のみぞ知る、と言ったところか。


 真言マントラを唱え、ほんの一時瞑想してから深く一礼をするティナ。


「さあ、次行ってみよう!」


 ほんのり古いネタをチョコチョコ挟む姫騎士さん。神社仏閣の参拝なので「だめだこりゃ」を最初に付けなかったのは、さすがに遠慮してのことだろうか。


 浅草寺の正にお隣にある浅草神社。主祭神は土師真中知、檜前浜成、檜前武成の三人を御霊として祀っており三社権現、三社様などと呼ばれている東京最古の神社である。元々は神社仏閣が合祀されていた7世紀に寺として生まれた。

 ティナは、神社としてお参りするのが主目的ではなく、神輿庫を見に来たのである。

 神輿庫には、三社祭で担がれる宮神輿「一之宮」「二之宮」「三之宮」が納められている。黒漆と金箔押しで仕上げられた神輿は煌びやかに佇む。「一之宮」のみ屋根の頂上に鳳凰が飾られており、「二ノ宮」「三ノ宮」は擬宝珠ぎぼしである。


「うーん、神さまを担いで練り歩くと言う文化が今一つ判りません。不思議なものですね。」

「姫、神社から神様が氏子の住む町にお出かけする時に、お神輿に乗られるんですよ。」

「あら、そうすると神社には必ず神さまがいらっしゃると言うことですか?」


 ソフィヤから説明されたが、彼女はロシア人である。

 そして、西洋の教会などは神とアクセスする場であることに対し、日本の神社では社ごとに神が祀られている。分社なども神から分霊わけみたまされた謂わば分身が祀られるのである。八百万やおよろずの神が住まう国と言うのも伊達ではない。

 なるほど、と頷きながらティナは神の乗り物と言う不思議な神具を堪能するのだった。



 帰りが大変である。

 仲見世商店街でチェックしたお土産品を一気に購入する。西陣織の小物入れやかんざしに扇子と言った和装小物類。コケシや達磨、張り子の招き猫。黒檀の八角箸や雪駄に草履と言った日用品。アラレやおこし、煎餅せんべいなどの焼き菓子類。

 それをそれぞれ10や20の単位で購入していく。地下搬送道路にある駐車場に停車しているバス型装甲車へ購入した土産ものを置きに何往復かするのであった。


 そして、浅草寺のご近所にある松屋デパート。


「あ、やっぱりこれカワイイです。ハルが喜びそうですね。」


 事前に東京土産として色々と検索していたのだが、見た目が可愛らしい名菓ひよ子に目を付けていた。赴いた浅草のご近所で販売店があるのを知ったので訪れた姫騎士さん。ひよ子の賞味期限が製造から14日と記載がされているのを見て、うーんと唸る。まだ10日は滞在するのだ。購入時は今ではないであろう。滞在中の神田小川町から一番近い販売店で帰国の前に買って帰ることにする。

 ふと、ひよ子サブレーが視界の脇に入る。説明を読めば本家博多にてエスターライヒから菓子職人マイスターを招いて開発したとある。ふーん、と思い16枚入りの箱を10程購入する。取り敢えずオヤツとして丁度良さげである。


 滞在先のフロアに住まう黒服の護衛達も言わば身内なのだ。

 だから土産や差し入れを彼等彼女等にも振舞うのは当然のことだろう。

 雇い主の一族はずっと昔からそう教え込まれているのだ。


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